瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

飯盒池(2)

 昨日の続き。
・丸山政也・一銀海生『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』(2)
 私がこの話を知った(と云うか、意識した)のは本書147~148頁「三十八 ハンゴウ池 下高井郡」を読んでからだけれども、2019年9月26日付「青木純二『山の傳説』(02)」で本書に載る話を一通り検討したとき、この話をうっかり「「怪談実話」に分類されるであろう体験談の類」に分類してしまったのでした。
 現役(?)の心霊スポットのように扱ってしまったのだが、――幽霊が出没する廃病院の噂を聞いて、馬鹿な若者たちが夜中に出掛けて幽霊を目撃し、さらに酷い目に遭う、と云った心霊スポットにありがちな「怪談実話」のパターンの主要部分、体験談のパートが存在しません。そもそも、前回引用した前置きに「‥‥小さな池があるという。」と書いているように、丸山氏本人も現地に行った(もしくは写真や地図で確認した)ことがないらしいのです。
 しかし、この池が実在して、このような話が語り継がれているのであれば、それは体験者がいなくても(と云うか、私は体験談の類を余り信じていないので)、丸山氏が人づてに聞いた「体験談の類」に一応分類して置いて良いか、と思ったのです。
 ところが先月来、2月22日付田口道子『東京青山1940』(20)」の冒頭に述べたような理由で、松谷みよ子『現代民話考』を眺めているうちに、この話も2019年9月27日付「青木純二『山の傳説』(03)」に列挙した「文献に拠った「民話」に相当すると思われるもの」の方に含めるべきであることが分かったのです。いえ、両者の区分は厳密に付けられるものではありませんし、どうしても区分しないといけない訳でもないのですが。
 それと云うのも、原話と思しき話が『現代民話考』の1冊に載っていたからです。
松谷みよ子『現代民話考II 軍隊〈徴兵検査・新兵のころ・/歩哨と幽霊・戦争の残酷〉1985年10月6日 第1刷発行・1987年2月20日 第5刷発行・定価1,800円・立風書房・418頁

ちくま文庫『現代民話考[2] 軍隊・徴兵検査・新兵のころ二〇〇三年五月七日 第一刷発行・定価1300円・筑摩書房・472頁 しかしながら、2019年9月22日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(125)」及び2019年9月23日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(126)」に一部を挙げた、本書巻末の「参考文献・出典・初出・引用」に『現代民話考』は挙がっていません。
 すなわち、丸山氏は何か別の文献に拠っていると思われるのですが、或いは9点めに挙がる、平野威馬雄『日本怪奇物語』でしょうか。 これは昭和61年(1986)10月刊行ですから、この見当で当たっているとすれば、丁度1年前に刊行された『現代民話考Ⅱ 軍隊』から採ったことになりましょう*1。(以下続稿)

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 花見に行ったり、聖火を見に行ったり、格闘技を見に行ったり、どれも以前から私には縁のない、もとから行こうとも思わないことだったけれども、世間は呑気である。しかし、恐らく開催出来ないオリンピック関連行事に、これから不測の莫大な費用が掛かる見込みなのにこれ以上無駄金を注ぎ込むべきではないだろう。格闘技の方は「自粛要請」だから従わない選択肢もあり得るわけだけれども、開催しないと倒産しかねないから決行したらしい。政府の「要請」に従って中止するのなら、損失を補償すべきで、そこがないのに中止には出来ないだろう、と云う意見がある。しかし、既に多くのイベントが自粛で中止しており、来月以降のイベントで中止が決定しているものも少なくない。格闘技だけ特別扱いする訳に行かないから、それら全てを補償することになったら大変なことになる。しかし、今回もまた公明党が通そうとしているバラマキを決行するくらいなら、少しは窮している経営者の救済に当てるべきだと思う。全額補償などやっていられないから、徳政令ではないが返済の猶予と併せて、倒れない程度に。そしてこれ以上、オリンピック関連イベントに無駄金を費やすのは即刻停止するべきだ。‥‥大宅壮一が「赤マント社会学」に指摘したような状況に、コロナ禍の日本は陥りつつある*2。そのうち、赤マントが出没するかも知れないな(笑)。
 2月29日付「図書館派の生活(2)」及び3月8日付「図書館派の生活(3)」に述べた非常勤講師の無給・雇い止め問題だけれども、4月以降も授業が出来なくなれば雇用形態によっては無給の人が発生しそうである。しかし相当数の退学者が出ない限り、解雇はされないはずである。教員や生徒に感染者が出た場合、インフルエンザなら学級閉鎖だが、コロナウィルスだと学校閉鎖になるのだろうか。3月2日(月)からであれば、直に年度末になってしまうから(実際には一斉休校になって、そういう事態は殆ど起こらなかったが)影響が少なかったろうが、4月以降は影響甚大である。度々学校閉鎖が起こったら授業数もこなせなくなる。授業料の減免も検討されるだろう。そうなったとき、月給は減らされなくても賞与はなくなりそうだ。最悪、新学期から再開出来なくなったら、――そのときはどうなるか、分からない。直ちに解雇はされないだろうけれども。

*1:2024年4月9日追記】本書は昭和56年(1981)10月にも同じ日本文芸社から新書判、同じ副題で刊行されている。そうすると『現代民話考Ⅱ 軍隊』に先行することになる。続稿にて明らかにしたように松谷みよ子が原話の提供者であることは動かないと思われるので、もし昭和56年版にもこの話が載っているのであれば、平野氏は別に松谷氏の話を記録した文献に拠っていることになる。しかし『日本怪奇物語』は昭和56年版・昭和61年版とも公立図書館には全くと云って良いくらい所蔵していないので、古書店かオークションサイト(昭和59年版、平成元年初版なども出品あり)から購求するしかないようだ。まぁ買っても良いのだけれども。

*2:3月23日朝追記】今朝のNHKニュース「おはよう日本」を見ていたら、6時台と7時台の2度、「きのう」として、晴れて暖かいのに数えるほどしか人が歩いていない上野公園のさくら通り(公園前交番から東京国立博物館正門に通じるメインの通り)を撮して、日本人はしっかり対策している、と云う印象を与えていたが、昨日、恐らく忖度など考えない外国人の tweet で然らざる写真を複数見ていたので、念のため民放に変えて見ると、同じ通りを、映っているだけで数百人単位で歩いており、道の脇には殆ど間隔を取らずに飲み食いしている人々が屯していた。そして地べたの上にも、ぎっしりではないがそこここにシートを敷いて飲み食いしているグループがおり、それがやはり「きのう」として映し出されたのである。――やはり外国人が驚きとともにアップしていた写真の光景で間違いなかった。‥‥ここ数年、某女性解説委員が顕著だが、NHKの印象操作が酷い。まさに大本営発表、不偏不党の報道ではなく、ただの広報機関ではないか。