瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

安岡章太郞 編『ウィタ・フンニョアリス』(2)

 「滑稽糞尿譚」は文庫版に新たに附された標題で、単行本では「ウィタ・フンニョアリス」のみである。しかし分かりにくいので「あとがき」の、前回引用しなかった部分で話題にしていた火野葦平「糞尿譚」に因んだものに変えたのであろう。
 装幀についても述べて置きたいが、先に収録作品を見て置こう。
 各作品の冒頭の体裁は単行本・文庫版ともに同じで、まづ3行取り1字下げで大きく題、1行分空けて3行取り下寄せ(下に3字分空白)でやや大きく筆者名。そして本文末に続けてさらに1行、下寄せで著者名の読みと生(歿)年、肩書が半角の〔 〕で括って、単行本はやや小さく下に1字分空白、文庫版は本文と同じ大きさで下に詰めて入っている。
 以下、著者名「題」をゴシック体にして示し、それぞれの版の開始頁、算用数字で【収録順】、そして末尾の著者情報とその位置を添えた。文庫版で1字分空白の代わりに歿年等追加されて文字を、灰色太字で記入して置いた。また、文庫版で削除されている文字を赤の太字で示した。
吉行淳之介「追いかけるUNKO」単行本【1】7頁・文庫版【1】9頁
〔よしゆき・じゅんのすけ(一九二四―一九九四)作家〕
 単行本9頁7行め・文庫版11頁9行め
北杜夫「神聖な糞虫」10頁・文庫版【2】12頁
〔きた・もりお(一九二七― )作家〕
 単行本18頁7行め・文庫版21頁13行め
入江相政「小便がつまる」単行本【3】19頁・文庫版【3】22頁
〔いりえ・すけまさ(一九〇五―一九八五元・侍従長
 単行本24頁11行め・文庫版28頁8行め
志賀直哉「朝昼晩」単行本【4】25頁・文庫版なし
〔しが・なおや(一八八三―一九七一)作家〕
 単行本37頁行11め
谷崎潤一郎「厠のいろいろ」単行本【5】38頁・文庫版【4】29頁
〔たにざき・じゅんいちろう(一八八六―一九六五)作家〕
 単行本46頁9行め・文庫版38頁12行め
渡辺一夫「糞尿薬の話」単行本【6】47頁・文庫版【5】39頁
〔わたなべ・かずお(一九〇一―一九七五)仏文学者〕
 単行本53頁15行め・文庫版46頁14行め
芥川龍之介「好色」*1単行本【7】54頁・文庫版【6】47頁
〔あくたがわ・りゅうのすけ(一八九二―一九二七)作家〕
 単行本72頁13行め・文庫版68頁4行め
遠藤周作「寝小便に泣く男」単行本【8】73頁・文庫版【7】69頁
〔えんどう・しゅうさく(一九二三― )作家〕
 単行本85頁5行め・文庫版82頁12行め
安岡章太郎「わが糞尿譚」単行本【9】86頁・文庫版【8】83頁
〔やすおか・しょうたろう(一九二〇― )作家〕
 単行本97頁3行め・文庫版95頁10行め
阿川弘之「黒い煎餅」単行本【10】98頁・文庫版【9】96頁
〔あがわ・ひろゆき(一九二〇― )作家〕
 単行本111頁14行め・文庫版111頁9行め
田辺聖子「おべんじょ」単行本【11】112頁・文庫版【10】112頁
〔たなべ・せいこ(一九二八― )作家〕
 単行本116頁6行め・文庫版116頁15行め
平野雅章「酒・飯・雪隠」*2単行本【12】117頁・文庫版【11】117頁
〔ひらの・まさあき(一九三一― )食物史家〕
 単行本119頁3行め・文庫版119頁7行め
円地文子「押入れの中」単行本【13】120頁・文庫版【12】120頁
〔えんち・ふみこ(一九〇五―一九八六)作家〕
 単行本129頁5行め・文庫版130頁8行め
畑正憲「モースの便所」単行本【14】130頁・文庫版【13】131頁
〔はた・まさのり(一九三五― )動物文学者〕
 単行本135頁9行め・文庫版137頁2行め
李家正文「トイレット天国」単行本【15】136頁・文庫版【14】138頁
〔りのいえ・まさふみ(一九〇九― )随筆家、厠研究家〕
 単行本146頁6行め・文庫版149頁15行め
白井浩司「バリュームさわぎ」単行本【16】147頁・文庫版【15】150頁
〔しらい・こうじ(一九一七― )仏文学者、慶大名誉教授〕
 単行本150頁6行め・文庫版153頁11行め
星新一「食事と排泄」単行本【17】151頁・文庫版【16】154頁
〔ほし・しんいち(一九二六― )作家〕
 単行本152頁12行め・文庫版155頁16行め
中村浩「ゾウの大グソ」単行本【18】153頁・文庫版【17】156頁
〔なかむら・ひろし(一九一〇―一九八〇元・日本藻類研究所長〕
 単行本157頁3行め・文庫版160頁13行め
金子光晴「糞尿の話」単行本【19】158頁・文庫版【18】161頁
〔かねこ・みつはる(一八九五―一九七五)詩人〕
 単行本163頁11行め・文庫版167頁9行め
駒田信二「中国水火譚」単行本【20】164頁・文庫版【19】168頁
〔こまだ・しんじ(一九一四―一九九四)作家、中国文学者〕
 単行本176頁3行め・文庫版181頁12行め
安岡章太郎「「放屁抄」蛇足」単行本【21】177頁・文庫版【20】182頁
〔やすおか・しょうたろう(一九二〇― )作家〕
 単行本183頁18行め・文庫版189頁16行め
山田稔「スウィフト考」単行本【22】184頁・文庫版【21】190頁
〔やまだ・みのる(一九三〇― )作家・仏文学者〕
 単行本194頁3行め・文庫版201頁10行め
 以下の翻訳作品の場合、単行本では作者と訳者を読点「、」で分けて1つの〔 〕の中に収めていたが、文庫版は作者と訳者をそれぞれ1行ずつ〔 〕に示している。ここでは文庫版によって示す。さらに底本も最後に〔 〕に収めて添えている。この底本情報は、出来れば日本人の作品についても、初出年とともに示して欲しかった。
チョーサー西脇順三郎訳「粉屋の話」単行本【23】195頁・文庫版【22】202頁
〔チョーサー(一三四〇―一四〇〇)詩人〕
〔訳者 にしわき・じゅんざぶろう(一八九四―一九八二)詩人、英文学者〕
筑摩書房世界文学大系25」所収〕
 単行本217頁17~18行め・文庫版228頁6~8行め
ラブレー渡辺一夫訳「尻を拭く妙法を考え出したガルガンチュワの優れた頭の働きをグラングゥジエが認めたこと」単行本【24】218頁・文庫版【23】229頁
※ 奇数頁左上の柱(横組み)には「「ガルガンチュワ物語」」。
ラブレー(一四九四―一五五三)作家〕
〔訳者 わたなべ・かずお(一九〇一―一九七五)仏文学者〕
 単行本225頁2行め・文庫版236頁10~11行め
作者不詳藤代幸一訳「オイレンシュピーゲルがマイン河のほとりのフランクフルトで、ユダヤ人をたぶらかして千グルデンだまし取った物語。つまり、自分のうんこを「予言者の実」といつわって、彼らに売りつけた次第」*3単行本【25】226頁・文庫版【24】237頁
※ 文庫版は作者を「ヘルマン・ボーテ」としている。奇数頁左上の柱(横組み)には「「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」」。
〔訳者 ふじしろ・こういち(一九三二― )独文学者・都立大教授〕
法政大学出版局ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(一五一五年版|底本)所収〕
 単行本228頁16~17行め・文庫版240頁4~6行め
バルザック小西茂也訳「路易十一世飄逸記」単行本【26】229頁・文庫版【25】241頁
バルザック(一七九九―一八五〇)作家〕
〔訳者 こにし・しげや(一九〇九―一九五五)仏文学者〕
東京創元社『風流滑稽譚』(「バルザック全集第二十五巻」所収)〕
 単行本253頁13~14行め・文庫版268頁17行め~269頁2行め
風来山人いいだもも訳「放屁論」*4単行本【27】254頁・文庫版【26】270頁
〔ふうらい・さんじん(一七二六―一七七九)平賀源内のこと*5
〔訳者 いいだ もも(一九二六― )作家、評論家〕
 単行本262頁13~14行め・文庫版280頁14~15行め

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 前回引用した文庫版カバー裏表紙の紹介文には「現在活躍中の諸氏」とあって、単行本から文庫版刊行まで14年余の間の物故者は6名であったが、文庫版刊行から25年を経て、今や存命しているのは最年少の畑正憲だけになってしまった。(以下続稿)

*1:ルビ「こうしよく」。

*2:ルビ「さけ めし せつちん」。

*3:「うんこ」に傍点「ヽ」、ルビ「み」。

*4:ルビ「ほうひろん」。

*5:単行本はここに句点「。」で括弧を閉じずに改行。