・銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」シナリオとの異同(7)
昨日の続き。
・第5回 グローブ②
1月9日付(12)にも触れた冒頭、63頁上段2行め~下段13行め「●西野家・表(昼)」は、たけし(小磯勝弥)が祖母の菊(千石規子)にグローブ代をもらって飛び出して行く場面だが、『シナリオ』にある、真利子(木の実ナナ)と棟梁の松原源治(金田龍之介)の会話(63頁下段4行め~)がTVドラマでは省かれている。撮影したもののカットしたのかも知れない。
真利子「押しつまりましたね。」
源 治「全くだ。今日は、西野さん、仕事に行ってん/ の?」
真利子「ええ、何とか行きました。行って貰わなくち/ ゃ、年を越せないんですから。」
源 治「あとで、義太夫のおさらいに行くからって、/ おばあちゃんに言っといて下さいよ。」
真利子「はいはい(と、苦笑して)見て下さいよ。家/ は〆飾りもまだなんですから。」
ペンキだらけの門。
続いて古道具屋で中古グローブを買うシーンになる。『シナリオ』では64頁上段21行め~下段1段、
たけし、小銭を一枚ずつ八枚、ゆっくりとポケ/ ットから出して並べると、グローブを手にして、
と100円玉で払っているが、TVドラマではお札(100円札)で払っている。
たけしは浮かせた180円の一部を早速駄菓子屋で使い、それから空地で野球の練習をしている級友たちのところへ行く。この場面で気になるのは『シナリオ』65頁上段10~13行め、
薬局の三上(義太夫の弟子)がノックをしてい/ る。
三 上「よーし、じゃ、行くぞ! 」
ノック。
とあるのだが、ノックをしているのは三上(牧伸二)ではなくもっと若い男である*1。ちなみに三上は薬局なのだけれどもTVドラマを見る限り、この設定が活かされることはなく、いやTVドラマでは薬局の主人であることは分からなかったように思う。
この回にはもう1箇所、大きな省略がある。『シナリオ』65頁下段「●西野家・中」の途中から続く「●同・表」の最後まで、65頁下段11行め66頁上段、
さっきから、ドスン、ドスンと壁に何かがぶつ/ かる音がする。
菊 「ちょっと、何だろう。」
真利子「たけしよ、きっと。(と、立って。)」●同・表
真利子が出て来る。
壁に向かってボールをぶつけているたけし。
真利子「たけし! やめな!」
たけし「どうして?」【65】
真利子「どうしてじゃないだろ、ドッスンバッタン/ ドッスンバッタンぶつけて、家がつぶれたらどう/ するの。」
たけし「つぶれないよ。」
真利子「つぶれなくても駄目! そんな事するんな/ ら、グローブ、おばあちゃんに返しな!(と、取/ り上げようとする。)」
たけし、逆らう。と――。
真利子「コラ、これ何? たけし!」
たけしのポケットからいろいろな駄菓子が出て/ 来る。
真利子「どうしたの、これ?!」
たけし「それは……。」
真利子、パチンとひっぱたく。
真利子「どこからお金持ってったの?」
たけし「違うよ! グローブ負けて貰って余ったん/ じゃないかよッ!」
真利子「ほんとかい?」
たけし「古道具屋で聞いてみな!(思いきり真利子/ の尻をひっぱたき返して逃げる。)」
手の中の駄菓子を見る真利子。
或いはこの「家がつぶれたら」云々の会話は、第9回の伏線だったのかも知れない。
私も小学校低学年の頃、2017年8月24日付「水島新司『ドカベン』(1)」に述べたように、野球にそこそこ入れ上げたことがあって、しかし周囲に練習相手になるような人がおらず*2全く上達しなかったのだけれども、黄緑や黄色、桃色のカラーボールをブロック塀に投げて遊んでいた。そのときにたまに塀を越えて、2016年5月24日付「昭和50年代前半の記憶(1)」以下しばらく回想したボロ家の壁に当たって、叱られたことがある。(以下続稿)
*1:松原組の見習い、安夫か政吉のどちらか、か。
*2:3学年上の兄や、2016年5月25日付「昭和50年代前半の記憶(2)」に触れた同学年の隣家の男子は運動がからきし駄目で、近所では誰も相手をしてくれなかった。