瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

ビートたけし『たけしくん、ハイ!』(21)

銀河テレビ小説たけしくんハイ!」シナリオとの異同(14)
 昨日の続き。
・第7回(3)英一郎③
 1月12日付(15)に見た第6回の『シナリオ』にあった、西野家の長男・英一郎(趙方豪)が大学の教授と家庭教師のアルバイト先の鈴木家に年始廻りに行こうと話し、出掛ける場面はTVドラマでは省かれてしまった。
 第7回の『シナリオ』でも、古田の登場による波瀾の本筋に対する脇筋として英一郎の描写が続いていた。しかしながらこれも、TVドラマでは残念ながらほぼ省かれてしまっている。
 90頁下段11行め~91頁上段16行め、

●鈴木家・洋間

  英一郎が家庭教師をしている家である。
  小学校六年の女の子はるみの勉強を見てやって/  いる英一郎。
  はるみの母伸子が入ってくる。
伸 子「ごめんなさいね。先生、お正月早々教えて頂/ いて?」
英一郎「いえ。」
伸 子「どうぞ。(と、お茶とおやつを出す。)」
英一郎「すみません。」【90下】
伸 子「それから、あの。これ。主人から。(と、御祝/ 儀袋を出す。)」
英一郎「あ、とんでもない。ちゃんとお月謝を頂いて/ るんですから」
伸 子「いいえ、お正月ですもの。ご本でも買って下/ さいな。ほんとにどうぞ。」
英一郎「そうですか、すみません。じゃ。(と、祝儀袋/ を学生服のポケットに納う。)」
はるみ「出来ました。」
英一郎「どれ。」
伸 子「どう? 判るの? はるみ。」
はるみ「ウン。」
伸 子「どうなんですか、先生。はるみ、白ばら学園、/ 大丈夫なんでしょうね?」
英一郎「大丈夫ですよ。あと二カ月ありますから。」
伸 子「よかった。」


 この場面もTVドラマにはない。
 家の造りは2019年12月5日付「芥川龍之介旧居跡(16)からしばらく「・都内の旧居追懐」と題して回想した、私の住んだ和洋折衷の木造住宅と似たような按配であったろうか。2階の洋間が子供部屋であったのだろう。
 第6回の『シナリオ』では、英一郎は昭和30年(1955)1月1日に「昼前、教授の所にあいさつに行って、昼から鈴木さんちに行って来る」と言っていたのだが、第7回、1月2日のこの場面を読むと、1日は教授の家で長くなって鈴木家には廻らなかったようだ。それとも、1日の年始廻りで早速はるみの勉強を見て欲しいと云う話になり、2日から家庭教師に来たのであろうか。「白ばら学園」は九段の白百合学園中学校であろう。
 私は家庭教師を付けてもらったこともなければ、家庭教師のアルバイトをしたこともない。経験に基づく直感で判断するタイプなので、家庭教師のような根気の要る上に成果も求められる仕事は務まらなかったと思う。こっちが条理を尽くして十分説明したと思った事柄を、全く違えて理解する連中がどうしても出て来てしまうことに絶望的になったことなら院生時代も度々で、女子高講師をしているうちに、結局、勢いで分かったような気にさせれば良いのではないか、と云う結論に至ったのである。しかし、不器用な私にはそ土台そんな藝当は無理であった。だから超エリートでありながら小学生の学力を伸ばし、その両親からも絶大な信頼を置かれている英一郎には、ほとほと感心するばかりである。(以下続稿)