瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

ビートたけし『たけしくん、ハイ!』(30)

銀河テレビ小説たけしくんハイ!」シナリオとの異同(23)
 昨日の続き。――長くなったので改めてここで、この記事の方法を確認して置く。
 TVドラマは録画し損ねたので、NHKプラスの見逃し配信を視聴しながら『シナリオ』に貼付して行った附箋メモを元にしている。従って引用は原則として『シナリオ』に拠っており、TVドラマとは必ずしも一致しない。いや、小異はメモし切れないくらいあるので、一々註記出来なかった。すなわち、TVドラマに関する記述は簡単なメモに拠っているので、正確に思い出せていない場合もある。しかし、大きな異同を確認出来れば差当りの目的は達せられると考えているのである。
・第8回(4)父親参観②
 父親参観当日の朝、『シナリオ』107頁上段6行め~下段「●西野家・中(朝)」は、TVドラマでも、ほぼそのままである。ただ、冒頭、上段7~8行め、

  日めくりカレンダーが、赤い字の日曜日にな/  っている。

とあるが、見逃し配信で視聴した際にチェックしていなかった。読めそうだと思った文字は再生を止めて確認したはずなので、――日付が分かってしまう「日めくりカレンダー」は、出さないことにしたのではないか。
 それから、父親参観は「午後一時」からなのに、たけし(小磯勝弥)が登校した直後に、竹次郎(林隆三)は真利子(木の実ナナ)に袢纏や雪駄を用意させ、ワニ革のベルトを出させるのだが、『シナリオ』には107頁下段2~3行め、

真利子「何をあわててるのかねえ。(踏み台に乗って/ 天袋から新聞紙にくるんだベルトを出す。)」

とあるのだが、TVドラマではそんな手間を掛けず、簞笥の一番上の段から取り出していた。
 さて、昨日の最後に触れたように、竹次郎は落ち着かなくて家を出たものの、学校にはまだ入れないので信濃屋に行く。『シナリオ』108頁上段~下段5行め「信濃屋の中」では、主人の大山(北見治一)は特に何をしていたか、指定していないが、TVドラマでは照明も付けない薄暗い店内で、一人棋譜を見ながら将棋を指していた。もちろん開店前である。常連の竹次郎に酒を出すように言われて、うっかりその通りにしかけるが、事情を聞いて先達ての会話を思い出し、今日は止めるように言う。すると竹次郎は「酒屋はここだけじゃねえや」などと悪態をつきながら出て行ってしまうのである。その竹次郎の後ろ姿を見送りながら、108頁下段5行め「大 山「西野さん……。」」と言うのだが、TVドラマでは「大山:「親方ァ」」となっていた*1
 そして、私がリアルタイム(もしくは直後の再放送)で視聴して覚えていた、2つの場面の1つ、108頁下段6行め~110頁上段14行め「●小学校・五年一組」になる。前半は、吉村正敏(藤原暁彦)が山上大介(仙田信也)に「どうしてお父さんもお母さんも来ないんだよ」とちょっかいを出して喧嘩になり、そこで山口先生(石井めぐみ)が大介を前に呼び出して、山上家では一昨年父親を亡くし、母一人で3人の子供を育てていること、大介は朝御飯を自分で作っていることなどを説明し、褒める。
 ところでこのとき、正敏の母(四宮明美)が来ていて、109頁上段4行めに一言、息子を叱る台詞もあるのだが、――すなわち、吉村家も父親が来ていない。弱い者が更に弱い者に当たる、と云う構図なのだろうか。
 山口先生が山上家の事情を説明する長台詞で、『シナリオ』109頁上段13行めでは「山上君や妹さん、弟さん」と言っていたのが、TVドラマでは「妹さんたち」になっていた。実際に第9回に登場したのも女の子2人である。これは子役の都合からであろうか。
 大介は自分の辛い状況を説明され、頑張っていることを褒められたことで泣き出してしまう。これに対して『シナリオ』109頁下段5行め「  ポカンと口を開けて見ているたけし。」とあったが、TVドラマでは堅く口を閉じて大介を見詰めていた。
 良い場面だが、私は覚えていなかった。私が覚えているのは後半で、かつ、大まかな展開を覚えているだけであった。これについては次回取り上げることとしよう。
 それはともかく、今回、注意して置きたいのは、『シナリオ』でたけしのクラスが「五年一組」となっていることである。既に1月8日付(11)に触れた第2回の宮森圭子(岡崎由喜枝)の台詞「二組の西野君」と齟齬するのが気になるが、ここで初めて学年が明示されたことになる。尤も、TVドラマのこの回、五年一組と明示したものは写らなかったと思う。だから正確に言うとTVドラマでは何年生か分からないし、クラスも宮森圭子の言う通り「二組」なのであろう。しかし、脚本の布勢博一がたけしが五年生のつもりで書いていることは確かで、さればこそ翌年の、「昭和三十年五月」に始まる『続たけしくんハイ!』は小学六年生のたけしの初恋と云うことになっているのである。――宮森圭子の立場はどうなるんだ、と突っ込んで置きたい。
 それはともかく、そうすると1月15日付(18)に見た、古田(綾田俊樹)にたけしを紹介する菊(千石規子)の台詞に「この子はね、終戦の翌年に生まれた子なんです」とあったことが問題になって来る。昭和21年(1946)生であれば昭和30年(1955)1月には満8歳、小学二年生のはずである。
 『シナリオ』については、前々回及び前回、第7回の「あさって」を問題にしたけれども、どうも、こういう細かいところがきちんとしていないようである。もちろん、現場で修正してか、TVドラマには「あさって」と言う場面はないのだけれども、このたけしの学年と年齢の矛盾は現場でも気付かなかったらしい。しかし、第12回にて後述するように、これは単純に、昭和18年(1943)生にすれば解決すると云うものではない。いや、この場面はそれで済むのだけれども、第12回は戦後生れを前提として話を組み立ててしまっているのである。(以下続稿)

*1:父親参観の帰りに立ち寄った場面でも『シナリオ』112頁上段3行めと6行めの「西野さん」が、TVドラマでは「親方」になっていた。