瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(313)

 2014年2月20日付(120)に取り上げたPHP文庫『都市伝説王』の「赤マント」項の依拠資料について、当時は小沢信男 編『犯罪百話 昭和篇』との類似に気付きつつ、大きな誤解があることから「別の本に拠った可能性」を指摘するに止めていましたが、その後、2020年12月21日付(308)にて漸くそれが宮田登の著述であるとの見当が付き、先月末に『都市伝説王』を借りて、問題(?)はあっさり解決したのでした。
 『都市伝説王』の著者である世界博学倶楽部は、PHP研究所の雑著編集部門か何からしく、1999年1月から2018年5月まで、20冊余りの本を出しています。曲がりなりにも「博学」を称しているだけのことはあって、巻末の見開き「参考文献」は2段組、60冊が列挙されています。
 尤も、松谷みよ子『現代民話考』や白水社版『日本の現代伝説』シリーズ、松山ひろしの『真夜中の都市伝説』など、既に当ブログにて検討済みの本や、ブルンヴァンやブレードニヒなど日本を対象としていない本、魔女や聖書・埋蔵金などのテーマからして赤マントを扱っていないと判断出来る本も少なくないので、その全てを見る必要はないのですが、図書館では購入していても既に廃棄されているであろう雑誌の増刊号や、そもそも当初から購入リストに入りそうにない、少々怪しげな著者や出版社の刊行物など、私のような公立図書館に頼って調査をしている者には中々厄介な本が少なからず含まれているのです。
 いえ、そのような本も一応調査対象には含めるつもりで、若干は古書店で購入しております。しかし内容的に(赤マントに限った話ですが)見るべきものがなく、影響もさして及ぼしていないと思われるので、先週検討した平野威馬雄『お化けについてのマジメな話』くらい色々面白い材料を含んでいれば別ですけれども、なるべくなら一時的に手許に置くくらいで済ませて置きたいのです。
 宮田氏の著書は、以前に比べれば図書館の開架で目にすることが少なくなった気がしますが、上記の俗書(?)と違って廃棄されずに閉架に収まっております。どうも、妖怪やら民俗学やらが好きになれない私は、たまに手に取ることはあっても熟読していなかったために、宮田氏が赤マントについて、やや変わった見解を示していたことを見過ごしておりました。そのために、宮田氏の記述を踏襲している『都市伝説王』の妙な説明について、わざわざ詳しく取り上げたので、先に宮田氏の著書を検討しておったら、――『都市伝説王』133頁「赤マント」項は、前半の奇妙な記述は宮田氏の著書に由来するもので、それは「参考文献」の53点め、見開き2頁めの下段7~8行め(改行位置「|」)に「‥‥/『日本を語る〈9〉都市の民俗学宮田登(吉|川弘文館)/‥‥」とあることから、2020年12月20日付(307)に見た『宮田 登 日本を語る』に再録された、宮田氏が1989年の江戸東京フォーラム(公開研究フォーラム)で発表し、1991年刊『江戸・東京を読む』に寄稿した「都市の語り出す物語」で、『都市伝説王』の最後、214頁「池袋の女」も同様であろう*1として済ませられた訳です。
 とにかく『都市伝説王』は、異説を流布せしめているもの、と云うよりむしろ、宮田氏の誤読の影響として位置付けるべきものなので、正直、当ブログでは真面目に検討しましたが、これを将来『昭和十四年の赤マント』として書籍化する際*2には、詳細は一切省略して1行で片付けることになります。いえ、実はこの1行で片付く類いの本を、他にも幾つか見ているのですが、宮田説を知らずに読んだときの『都市伝説王』ほど目新しい説もなく、しかし何に依拠したかを確認するのはなかなか面倒で、手を着けずに私の頭の中に積み上がったままになっているのです。(以下続稿)

*1:細かく見ると他にも典拠として使用された記述があるかも知れない。

*2:出来れば2年前の今頃に80周年記念で刊行したかったのですが、まだまだ確認すべき資料が多々あり、かつ新聞記事も再点検と校正を要します。とてもでないが80年記念出版など不可能でした。体験者が生存しているうちに出したいと思っているのですけれども。