瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(27)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(07)「一」4節め②
 「一 白馬岳の雪女伝説」の4節め「『山の伝説』」について、昨日の続き。
 26頁1~9行め、

 なお、この青木純二の一九三〇年というのは、白馬岳の雪女伝説として最古のものであるだけで/はなく、白馬岳という地名をもたない、東北や関東にも流布する、ハーンと同一の話型をもつ雪女/の口碑伝説と比べてみても、最古のものである。したがって、この青木の取材源を突き止めること/が、白馬岳の伝承だけでなく、ハーン型の雪女伝説の来歴を知る上でもっとも重要なことといえる/だろう。
 こうした「非白馬岳系」の伝説と比較した場合、これら白馬岳の伝承群は、きわだった特徴を二/つもっている。まず、第一にストーリーの類似性が遙かに高いこと、第二に、八番目の『日本昔話/通観』の話をのぞき、登場人物が、すべて茂作、箕吉という名前をもち、漢字の表記にいたるまで/ぶれがないことである。


 次いで26頁10行め~27頁1行めに、青木純二『山の傳説 日本アルプスの内容を簡単に紹介している。その前半、柳田國男の序文に絡む26頁14行めまでは、既に2019年10月31日付「青木純二『山の傳説』(04)」に引用して検討を済ませてある。
 そして27頁2~3行め、

 この青木の本は、これまでハーン研究者の目に触れることがなかったようなので、とりあえずは、/雪女が箕吉を脅す場面を見ておこう。

と、『山の傳説 日本アルプスの「北アルプス篇」95頁11行め~99頁【36】「雪     女(白馬岳)」から、97頁3行め途中~9行めを引用し、続いて27頁14行め~28頁5行め、講談社学術文庫930「小泉八雲名作選集」の平川祐弘 編『怪談・奇談』所収の平川祐弘 訳「雪女」の当該箇所を引用して、この節の最後、6~10行め、

 これはもう、記憶をもとに語ったというレベルの類似ではなくて、明らかに、ハーンの原話を机/上において、一語一語、写したというレベルの類似である。
 青木の「雪女(白馬岳)」は、ハーンの「雪女」の翻案だったのである(9)
 それでは青木が参照したハーンの「雪女」は、英語の原文なのか、それとも一九三〇年にはすで/にいくつか出ていた和訳本なのか。

と、次の課題を提示している。
 なお238頁4行め~240頁7行め、注(9)は、青木氏に先行する、埋もれてしまった「雪女」翻案、大塚礫川「伝記物語 雪女」(「家庭雑誌」122~133頁・1918年2月・博文館)の詳しい紹介である。この作品は春陽文庫に収録されている。

 238頁6行め「志村有弘編『怪奇・伝奇時代小説選集四 怪異黒姫おろし 他一二編』(春陽堂、二〇〇〇年)」とするが、Amazon の書影を見るに「他十三編」である。但しレビューに列挙されている収録作品は全部で13篇である。どちらが正しいか気になるが、未見。11行め「舞台は、上野国利根郡武尊*1山の麓の針山村」で登場するのは「喜作と茂市という炭焼き」である。武尊山(2158m)はもちろん針山も、群馬県利根郡片品村に実在する。但し、240頁4~5行め、

 礫川の物語は、ハーン「雪女」の翻案としては、圧倒的に古く、しかも、出来は悪くないのに、これが/さらに再話されたり、口碑化した形跡は、わたしの調べたかぎりでは、存在しない。‥‥

とのことで、単行本に収録されなかったためか、影響は認められないようだ。(以下続稿)

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 先週、雨の中、都下の図書館に往復3時間余掛けて自転車で本の返却に出掛けた。気象予報サイトのメッシュ予報を見て出掛けたのだが、まづ予報通りに雨が止まず、そして途中で少し降られるかと思ったのが思いの他の本降りで、往路を半ば過ぎた辺りで進退谷まった。引き返そうかと思った。しかし、――余り当っていないが予報を信じるとすれば、止まないにしても弱まるだろうし、引き返したらまた出直さないといけない。メッシュ予報では夕方にまた降ることになっていたので、それで往路にも降られる予報であることが分かっていながら出掛けたのだ。しかしとにかく今日返しさえすれば、後は借りて帰らなければ良いのだから、そしたらもう濡らさなくて済ませたいのは財布だけである。後は全身濡れ鼠になっても、とにかく帰って来ればそれで良いのだ。
 そんな思案をしているうちに雨が弱まり、行先の空もちょっと明るくなって来たようなので雨宿りしていた高架下を出て、それから図書館に着くまではほぼ止んでいたので水も滴るような異様な按配で入館せずに済み、帰りは殆ど止んでいた。その後、暗くなるまで降らなかったので、夕方から出掛ければ濡れずに往復出来たのに、と思ったのだけれども、なかなかそんな見通しは立てられない。オリンピック強行で現状の感染拡大を招く見通しは、ちょっとでもまともな人なら立てられたと思うが。それはともかく、翌日、歯が欠けていることに気が付いた。もともと悪かったのが、これを切っ掛けにして欠けたのだろう。先月、歯医者から定期検診の案内葉書が来ていたが、こんな状況だから保留にしていた。しかしこれでは受診せざるを得ないので、予約を入れて、先日診てもらった。余り悪くなっていないようだが、軽微な虫歯が他にも幾つか見付かった。
 ワクチンの2回接種は終えたが、梅雨寒のようになったり、酷暑ではないが蒸し暑かったり、どうも体調は良くない。夏風邪なのか喉が痛い。咳も出ないし痰も絡まない。家人がパルスオキシメーターを買ったので測定すると、右の人差指だと94%で、左の人差指だと97%で、どうも私の右の人差指はかつて色々な物を書き写すのに酷使し過ぎて酸素が通りにくいらしい。体温は低い。(以下続行)

*1:ルビ「ほ た か」。