瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

上田満男『わたしの北海道』(3)

 本書については、7月17日付(1)に上田賢「序にかえて」にて初出と内容について確認し、第一部「アイヌのゆくえ」の細目を見て置いた。次いで7月18日付(2)に連載時期と北海道立図書館に切抜きが5冊に整理されて所蔵されていること、未刊分の記事を紹介したブログ、上田氏の「わたしの北海道」以外の事績について、乏しいながらも見て置いた。
 今、本書は私の手許にないのだけれども、マリモの話が出た序でに取り上げて置くべきと思って、返却前に取って置いた「第一部」の10人め、119~129頁「更科 源蔵」の複写を掘り出した。
 119頁(頁付なし)が扉で上部左にやや大きく「更科 源蔵」、下部に小さく以下の紹介文。

さらしな・げんぞう 釧路支庁弟/子屈町生まれ。東京麻布獣医畜産/学校中退。小学校教員、出版社員、/印刷、酪農業のかたわら高村光太/郎、尾崎喜八氏に師事、詩作、郷/土史を研究、文筆活動を続ける。/前北海道日ソ親善協会長。現在、/北海学園大教授、北海道労働文化/協会長。73歳。


 この左に、笑顔で話をする様子の、更科源蔵(1904.1.27~1985.9.25)の顔写真(4.2×3.1cm)がある。
 このインタビューが「朝日新聞」北海道版に掲載された時期であるが、北海道立図書館OPACで検索するに、5冊ある「わたしの北海道」切抜きのうち、昭和51年(1976)3月(途中)から7月までの分を纏めた2冊めがヒットする。それ以上細かいことはネットでは分からない。
 体裁は7月17日付(1)にも述べたけれども、120頁の1行め、2行取り3字下げで見出し「囚人開拓■」が1節め、生地や、生地に父親が来住した事情、標茶が栄え、寂れた理由と囚人による北海道開拓などについて、6段落にわたって述べている。
 このインタビューの特徴は、末尾の<>が、本編で話題に出た土地や団体の関係者へのインタビューになっていることで、知友から見た当時の当人のことなど、内容を補う証言となっている。従って(注)は言葉ではなく段落末に附されていることが多い。(注1)は3段落め末(120頁16行め)、(注2)は5段落め末(121頁18行め)にあって、末尾を見るに127頁14行め、1行分空けて5字下げで、まづ「<注1> 高橋幸次・元標茶町長の話」が128頁1行めまで、標茶町が栄えた理由と更科氏の叔父鉄太郎について語っている。2~6行めが「<注2> 小池喜孝・北見工業高校教諭の話」で当時の囚人が北海道開拓の功労者であったこと。
 なお、121頁上に「更科さんが教べんをとった屈斜路小学校    昭和6年ごろ」との小さいキャプションを下に添えてた写真が掲載されている、これは次の2節め、122頁8行め~124頁4行め「コタン生物記■」に関わるものである。7段落にわたって、小学校の代用教員時代に学校の裏手に住んでいたアイヌの老夫婦の聞書が『コタン生物記』となったことや、代用教員を解雇された事情について述べている。(注3)(注3)は2段落め末(123頁3行め)、128頁7~13行め「<注3> 錦織俊介・元弟子屈町教育長の話」は小学校代用教員時代及び解雇後の更科氏について。(注4)は6段落め末(123頁18行め)、128頁14~19行め「<注4> 稲義人・法政大学出版局編集部長の話」は改訂版『コタン生物記』の版元の宣伝(?)。
 3節め、124頁5行め~125頁16行め「地名解■」は6段落、ウタマロという木材師に由来する地名や「ポロ」が付くアイヌの地名について。(注5)は5段落めの途中(125頁9行め)、128頁20行め~129頁5行め「<注5> 鈴木藤吉・元厚田村古潭小学校長の話」はポロナイ川について。(注6)は6段落め末(125頁16行め)、129頁6~10行め「<注6> 弟子豊治さんの話」は小学校の教え子の証言、2節めに附すべき内容のようである。弟子豊治は沖縄の戦没者慰霊碑「南北之塔」建立に関わった人として知られている。
 4節め、126頁1行め~127頁13行め「消えた記録■」は7段落、ユーカラ義経伝説、そしてマリモ伝説、最後に町村史編纂や、そういった公式の歴史に出て来ない人物について。(注7)は4段落めの途中(126頁15行め)の、ある人名に附されている。ここは本文ともども明日取り上げる予定なので今は省略する。(注8)は7段落め末(127頁13行め)、129頁16~20行め「<注8> 更科さんの主な著作」は証言ではなく▽詩集、▽小説、▽童話集、▽随筆、▽アイヌ関係、▽町村史を列挙している。
 私としては、これら(注)が新聞連載時からあったのか、それとも書籍化に当たって追加されたのかを知りたいのだけれども、なかなか確認の機会を得られそうにない。(以下続稿)