瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

成瀬巳喜男監督『女の中にいる他人』(1)

成瀬巳喜男監督『女の中にいる他人昭和41年(1966)1月25日公開

 以前、某区立図書館で借りて見て、記事にしようと思ったのだが、そのままになっていた。

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 この1週間は祝日が2日もあって生活のペースが乱れがちで、暑くて寝苦しいと思えば今日みたいに涼しかったり、どうも体調も優れない。先月歯が欠けたことで半年振りに通い始めた歯医者にもその後毎週通っている。痛いとか沁みるとか云うことはないのだが、色々とガタが来ている。休みが多いのは余り知識のないアイヌ(疑似)伝説に取り組むには丁度良かったが、しかし慣れないことをしたせいか、何だか草臥れてしまった。
 敬老の日は15日に戻して欲しい。ハッピーマンデーとやらはもうやらなくても良いのではないか。始めた頃は連休を官製で作ってやる必要があったかも知れないが、もうその必要はないだろう。休める人間は有給休暇を取って休み、子供も勝手に休めば良い。――かつて勤めていた女子高では、余りにも月曜の授業が潰れるので、ある年、別の曜日に月曜の授業をさせたことがあった。しかし専任は良いが、非常勤で他の学校や仕事と掛持ちしている人は、結局出勤出来なくて自習課題を作ったり、個人的に余っている人に譲ってもらって定期試験前の出勤日に穴埋めの授業をしたり、大変であった。しかしながら授業数が少なすぎると、精神状態の不安定な生徒で月曜を体調不良で休んでしまったりすると、下手をするとすぐに欠時数超過になりかねないので、非常勤のコマが自習になっても授業数を増やす必要があったのである。
 そう云えば、その9月20日(月)の敬老の日の昼過ぎ(13:05~14:34)に、NHK松本清張ドラマ「黒い画集〜証言〜」が放送された。昨年5月9日にBSで放送されたものの再放送(地上波初放送)である。松本清張のドラマは、現代に置き換えて作ると田村正和主演でやっていた「地方紙を買う女」のように無理があったり、当時の再現を目指してもビートたけし主演の「黒い福音」で、現場近くの農婦を演じた市原悦子が金縁眼鏡だったのが変だと(少数だが)言われたり、やはり無理が出て来るので、余り期待していなかったのだが、かなり驚かされた。
 実は私は「証言」をきちんと読んでいない。それは、これも何年か前に某区立図書館で借りて小林桂樹主演の堀川弘通監督映画『黒い画集 あるサラリーマンの証言』を見て、分かったような気になってしまったからである。そう云えば当ブログでも松本清張の作品を幾つか取り上げようと思って、「或る「小倉日記」伝」の初出や論文の複写を取ったり、『砂の器』の脚本と映画を比較したりしたのだが、そのままになっている。過去に書いた記事についても続きや修正を上げようと思いながら果たしていない。
 それはともかく、主人公の石野貞一郎は、映画では丸の内の会社の課長(小林桂樹)だったが、このドラマでは金沢の開業医(谷原章介)になっていた。映画では部下・梅谷千恵子(原知佐子)を愛人にしているのだが、このドラマでは大学院生の陶芸家・梅沢智久(浅香航大)で、同性愛なのである。しかも、ドラマの初めの方で、妻(西田尚美)には論文を読むために病院に泊まるとか嘘をついて、山代温泉(石川県加賀市)の愛人の工房兼住居を訪ねて密会する場面、敬老の日の昼下がりに男同士の濃厚な絡みがNHKで流れたのには、慌てた視聴者も多かったのではあるまいか。
 映画では近所の保険外交員杉山孝三(織田政雄)に愛人宅の近くですれ違い様、会釈してしまうのだが、このドラマの杉山孝三は、石野の患者の外車ディーラーで、夜中に買物に出て梅沢が店内にいる間、外で待っていた石野の側を、車で通り掛かることになっていた。しかし、杉山が深夜にそんなところを通った理由がよく分からなかった。映画の杉山は全く冴えない小父さんで、近所の住人と云う以上の関係はないのだが、このドラマでは石野の妻を外車の試乗に誘って、自分と遊ばないかと言い寄り、石野の妻に拒絶されると冗談ですよと言ってニヤニヤすると云う、ふざけたイケオジ(堀部圭亮)になっていた。映画には杉山の妻(菅井きん)が出て来たがこちらでは娘・杉山沙紀(高月彩良)が証言を迫る。
 他にも、愛人の母の梅沢初枝(宮崎美子)が登場するなど色々と変わっているのだが、これだけではNHKの番組紹介ページのリード文に「松本清張の名作短編「証言」が大胆な新解釈で、ラブサスペンスとして蘇る!」と謳うには足りない。もう1つ仕掛けがあって、それが主人公の職業が医者となっていることと、舞台が金沢に移されていることととも絡んで来るのである。(以下続稿)