瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(072)

 昨日の続き。
・遠田勝『〈転生〉する物語』(31)「三」2~3節め
 「三 怪談作家ハーンの誕生」の72頁14行め~74頁8行め、2節め「『怪談の童話化」から、遠田氏は「戦後のハーンの児童向け出版物」の系譜を辿り始める。まづ「もっとも早く「怪談」を収めたもの」として昭和23年(1948)刊蓼科書房(岡谷)版スクール文庫8、田部隆次 編『小泉八雲読本』について収録作品を挙げて、74頁5~6行め「「雪女」と「耳なし芳一」というハーンの「怪談」/を代表する傑作が収められていない」と指摘、73頁14行め「戦前のハーンの見方と道徳観を踏襲したもの」と結論づける。この節の最後、74頁7~8行め「しか/し、その三年後には、もう、事態は劇的に変わっている。」として9行め~79頁13行め、次の3節め「幽霊・妖怪ルネッサンス」に繋ぐ。
 この節では昭和25年(1950)の「雪おんな」を収録する児童書2点とその細目を紹介する。そうすると、前の節で紹介された本は、73頁5行めにあるように「一九四八年」刊だから3年後ではなく2年後だろう。それはともかく、童話春秋社(東京)版「少年少女世界名作文庫」の武田雪夫(1902.9.24~1964.9.6)訳『雪おんな』は『怪談』から「むじな」「雪おんな」「安芸之助のゆめ」「耳なし芳一のはなし」4篇など全部で11篇、それから小峰書店(東京)版「日本童話小説文庫」第十一巻、山宮允(1890.4.19~1967.1.22)訳『耳なし芳一』は、75頁13~15行め「『怪談』を中心に、長谷川ちりんめん本の「日本お伽話」『骨董』『天の/河縁起そのほか』『霊の日本』『影』『日本雑録』から、霊、怪異、妖怪にまつわる物語を集めた、本/格的なハーンの怪談集」で『怪談』からの13篇を始め合計34篇を収めている。
 以後、78頁14行め~79頁5行め、

 そして、この四年後の一九五四年に、小峰書店の『雪おんな』は、内容はそのままで、書名のみ/を『怪談』と改め、再版される。もはや、子供向けに『怪談』という書名さえ忌避されなくなった/のである。同じ一九五四年には、もう一冊、『怪談』と題される子供向け作品集が北条誠訳で偕成/【78】社から出版されている。この『怪談』のシリーズ名は「世界名作文庫」であるが、後に「少年少女/世界の名作」と改められている。以後、旺文社、ポプラ社講談社といった大手出版社も同様の少/年少女向けの文学全集に、ハーンの怪談を収録していくので、一九六〇年代から七〇年代にかけて、/ほとんどの教育熱心な家庭の本棚には、『小公女』や『秘密の花園』などとともに、小泉八雲の/『怪談』が収められていたのである。

と私の知っているような状況が出来上がって行ったのである。さればこそ、前回見た江口寿史の「意味なし芳一」のようなパロディも成り立った訳である。
 それは良いとして「小峰書店の『雪おんな』」が分からない。昭和25年(1950)刊の『雪おんな』は童話春秋社版、小峰書店から出たのは『耳なし芳一』である。一体どちらが昭和29年(1954)に『怪談』と改題再刊されたのか、少々検索に手間取ったが、条件を変えて検索するうちに昭和29年「同和春秋社」版の武田雪夫 訳『怪談』に辿り着いた。『雪おんな』は174頁で向井福三 絵、『怪談』はシリーズ名は「世界少年少女名作選集」、194頁で川崎福三郎 絵だからそのまま「再版」されたのではないが、収録作品は同じである。ちなみに大きさも「19cm」で同じ。――ここも校正がしっかりチェックして欲しかった。
 武田氏の著作権は切れているはずなのだが国立国会図書館デジタルコレクションのインターネット公開になっていない。山宮氏の訳書の方は国立国会図書館デジタルコレクションのインターネット公開になっている。今後、ハーンの影響を考える際に参照することとしよう。(以下続稿)