瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(176)

・杉村顯『信州百物語』の剽窃本(2)
 昨日の続き。
・野田悠『信濃奇談夜話』昭和六十二年八月六日発行・定価一、二〇〇円・郷土出版社・135頁・四六判並製本
 カバー表紙には、上部に八角形の子持枠(3.3×10.8cm)があって、太線(外郭)の内側は白、細線(内郭)の内側は灰色地で、横書きの標題の下に明朝体で「文・野田 悠 絵・岩淵 陽」とある。カバー背表紙には上部に明朝体太字で標題、下部に「野田 悠」と著者名の下に細いゴシック体横並びでごく小さく「 郷 土/出版社」、カバー裏表紙には右端の上寄りに白地の枠(6.5×0.7cm)に細いゴシック体「郷土出版社 定価一、二〇〇円」。カバー表紙折返しの左端、中央やや下に「カバー絵 岩淵 陽」とある.折返しにも絵が続いており、カバー裏表紙折返しの右下、白文方印「陽」があって下に「女夫石/  の話より/   」と墨書。
 見返し(遊神)は露草色の用紙で、扉はアート紙で上部中央に明朝体太字で「信濃 奇 談 夜 話」、下部中央「野 田  悠」。裏には下部中央に「■カバー・挿絵  岩 淵  陽」。
 1~2頁「信濃奇談夜話◆目次」。
 3頁(頁付なし)上部中央に明朝体太字で扉よりやや小さく「信濃 奇 談 夜 話」。
 4~135頁本文、話の題は5行取り2字下げでやや大きい。1頁12行、1行38字。挿絵は白黒の墨絵、但し原画はカラーかも知れないが、右下にカバー裏表紙折返しと同じ白文方印「陽」が捺されている。挿絵の頁には文字は小口側上部の頁付のみ。
 細目は次回、挿絵及び典拠とともに見て行くこととしよう。
 奥付の上部に横組みで「*著 者 略 歴」と「*カバー・挿絵」の紹介がある。前者「野田 悠(のだ・ゆう)」には次のようにある。

出版社勤務のかたわら、著述・装幀を行なう。『ふるさと伊那谷/童画の世界』ほか、郷土出版社の装幀を数点担当。
趣味として長野県内の怪談・奇談を採集。松本市在住。


 しかしながら、長野県立図書館HPの「信州ブックサーチ(長野県内図書館横断検索)」や「蔵書検索(WebOPAC)」で野田氏を検索しても、本書しかヒットしない。「悠」は筆名で、著述・装幀は本名もしくは別の筆名で行っているのかも知れない。『ふるさと伊那谷童画の世界』は副題「北島新平作品集」、昭和58年(1983)11月に郷土出版社(松本)から刊行された限定版の大型画集で、都内の公立図書館には所蔵されていない。
 後者「岩淵 陽(いわぶち・よう)」には、

画家。日本現代美術家連盟常任理事、IAC美術会会長。
松本・安曇野で、岩淵絵画教室を経営。
住所 松本市本庄1-8-21 ☎0263(36)2221

とあって、なかなかの大物である。但し「岩淵陽」で検索しても殆どヒットしない。日本現代美術家連盟も現在、存在しないらしい。しかし、似た名前の岩淵陽人(1938.3.21~2010.2.27)と云う画家がいて、この人は昭和51年(1976)にIAC美術会を創設、会長に就任している。すなわち岩淵陽人が「野田」に合わせて「岩淵」と名乗ったのではないか、との見当が付けられる。同じ松本市在住だから知友であった可能性が高い。なお、この住所を Google ストリートビューで見るに「松本美術学院」があるが、2018年8月の写真では2階の窓が割れている。いや、2012年5月・2014年8月・2015年5月撮影の写真を見ても、既に空き家らしいのである。
 本書の書影は画像検索にて閲覧出来るが、確かに「現代美術」らしいサイケデリックな色彩である。(以下続稿)