瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

米光秀雄・滝沢博・浅井徳正『多摩』(8)

・郷土叢書1『多摩』(3)
 出来れば全編通して検討したいところなのだが、現地に出掛ける予定もないので、そもそも本書を手にする切っ掛けとなった4章め「峠」について、細かく見て置くこととしよう。
 浅井徳正「あとがき」にあった通り、「峠」と5章め「野の仏たち」は滝沢博の執筆である。
 106頁1行め、4行取り2次下げで105頁(頁付なし)扉の「峠」と同じ大きさで「犬  切  峠」とある。これが1節めで116頁14行めまで。冒頭を抜いて置こう。106頁2~4行め、

 二日前、一の瀬高橋の楠商店へ電話を入れて、たいした雪ではないことを確認した。
 昭和四十三年一月十一日。木曜日。
 春駒のおどりとどんど焼きを見るのが目的だった。*1


 本文は1頁16行、1行43字。写真が幾つか挿入されている。キャプションは下に横組み中央揃えで、まづゴシック体で題、その下に明朝体でごく小さく解説。107頁左上「冬の落合部落」縦長、108頁右上「犬  切  峠落合と一の瀬高橋を結ぶ峠である」横長、109頁左上「一の瀬高橋部落山梨県の三大秘境の一つといわれる部落である」横長、110頁右上「一の瀬の道祖神丸い石を桧の枝葉で飾りたてている」縦長、112頁右上「切 妻 造 り の 家甲州特有の造りである」横長、116頁右上「春駒のおどり部落の若者がまとい、部落中をねり歩くのである」縦長、説明の2行めは左詰め。――これらの写真はいづれも昭和43年(1968)1月11日撮影と云うことになる。普通紙に白黒印刷された山間部や夜の行事の小さな写真は、三刷と云うこともあってか余り鮮明ではない。
 117~125頁9行め、2節め「おおだわ峠」には、117頁3行め「昭和四十二年八月」に出掛けている。写真は118頁右上「丹 波 山 全 景」横長、120頁右上「一面六尊の地蔵尊甲州特有のものである」横長、121頁左上「おおだわ峠全景」縦長、123頁左上「越ダワより峠頂上を望む峯つづきに低くくぼんだところが峠である」横長、124頁右上「頂上の塚上にある   /     首なし地蔵尊」縦長。
 125頁10行め~136頁15行め、3節め「仙  元  峠」の冒頭、125頁11行め~126頁2行め、

 今日は早稲田大学直良信夫先生のお伴で埼玉県名栗村の奥にある名郷部落へ出かけた。二年/前に来たとき、狼の骨らしいものをみつけたので、それを鑑定してもらうのが目的であった。結/果はどうやら史家の背骨から腰にかけての骨であるらしい。地元では「竜の骨」だといい伝えて、/【125】潰れ屋敷の小祠に祀っている。竜骨の版木も納/めてあって印刷して配ったようである。/‥‥

とあるが、奥付上の〔著 者 略 歴〕の滝沢氏の項「昭和11年青梅市に生れる.早稲田大学文学部史学科に学ぶ.‥/‥」とあるから、直良信夫(1902.1.1~1985.11.2)とは学生時代からの縁であろうか。一応明石市出身の私としては明石原人の発見者として記憶しているくらいだけれども。
 その時期は127頁1行め、

 五月初旬だというのに夏のような蒸し暑い日のせいか、‥‥

とあるが何年か分からない。133頁8~9行め、

 今年の春、NHKテレビでここの鍾乳洞から古銭がぞく/ぞく出てくる話題をとりあげて放送していたが、‥‥

とあるのは昭和44年(1969)なのだろうけれども。奥多摩町日原鍾乳洞である。14~16行め「‥‥。アナウン/サーが部落の若者に古銭について感想を求めたところ、/「関係ないね」と軽くあしらわれていたのを思い出す。‥/【133】‥」とその様子を述べているのが面白い。なお、133頁6行めは1字下げであるべきだが上まで詰まっている。写真は126頁右上「竜骨を調べる直良信夫教授」縦長、127頁右上「雨乞祈願の版木」方形、これは126頁10~11行め「‥‥俗に雨乞寺と/いう竜泉寺*2」のもの。127頁左上「竜 骨 の 版 木」横長、128頁右上「仙元庚申の碑富士仙元信仰と庚申信仰が   習合されたもの」縦長、説明の2行めは右寄せ。130頁右上「日 原 へ 下 る 尾 根一石山に向かう道者道である」横長、131頁左上「頂 上 の 浅 間 祠ここより富士を遙拝したのである」横長、133頁左上「雪の日原部落」横長、134頁右上「鍾乳洞入口付近鍾乳洞の対岸に一石山大権現がある」縦長、136頁右上には左脇に「日原村山中の婦女」と墨書のある影印図版「荷 背 負 い 姿当時の無言交易はこのような風俗でおこなわれたことであろう    (武蔵名勝図会より)」縦長。
 思いの外長くなったので残り2節は次回に回そう。(以下続稿)

*1:ルビ「はるこま」。

*2:【7月16日追記】改行位置「/」を入れ忘れていたので補った。