瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

『「超」怖い話』(17)

 9月28日付(15)に取り上げたシリーズ2作めに続いて、3作めを見て置こう。
勁文社文庫21 Q-019『新「超」怖い話』1993年8月1日 第1刷・1995年7月20日 第5刷・定価544円・220頁

 本書からケイブンシャブックス版では刊行されず、勁文社文庫21版のみとなっている。
 カバー表紙とカバー背表紙については9月24日付(11)にシリーズの他の3冊と比較しつつ記述した。以下、9月24日付(11)及び9月25日付(12)に記述済みの箇所も、同様に割愛することとする。
 カバー裏表紙、1作め・2作めとの異同はバーコードの1つめが「9784766918328」になっていることとISBNコードが「ISBN4-7669-1832-0」となっていることである。「編著者のことば」が樋口明雄であるのは2作めに同じ。

ついにシリーズも第三巻。これはヤバイ本である。怪談収集に/おいて右に出る者のない奴らが、出版に映像業界、パソ通ネッ/トに常駐する若者達、果ては飲み屋や道端で無理矢理声をかけ/て、集めた話が五十三編。ちゃんとお祓いをしてもらったにも/関わらず、スタッフの身辺に事故、病気、怪事件が続発! さて/さて読者の皆様方もどうなることやら……。


 カバー表紙折返し、白地の右側やや上寄りにゴシック体縦組みで、章ごとに題を3つもしくは2行(2行めは4字下げだが詰めた)に5話挙げている。「/」が使われているので改行位置は「|」で示した。

空の章/踏切に佇む、キューピッド様、伸びる犬歯、流|れてきたお札、飼っていた犬の話……
風の章/生け垣の女、こんばんわ、覗かれる……
火の章/人間ピンボール、白いシャツ、五衛門屋敷……
水の章/まっすぐな道、神と呼ばれた老婆、パースがず|れる、二階のないマンション、文通……
地の章/朝霧のジョギング男、神隠し、狐三千匹……


 カバー裏表紙折返し、2作めとは下部の奥付の標題「続「超」怖い話」と発行日「1993年8月1日 第1刷/1995年7月20日 第5刷」が異なる*1。私が借りることが出来た、ケイブンシャブックス版を含む他の4冊は全て「第1刷」だったので、本書によって2年で4回増刷と云うペースを窺うことが出来る。巷間にはまだまだ本シリーズが相当数死蔵されているであろう。――国立国会図書館には揃っているが、都内・都下の公立図書館で揃いで所蔵しているところはなく、いや、殆どの図書館に全く所蔵がなく、僅かに数館、除籍を免れたらしい1冊か2冊を所蔵するばかりである。今からでもそこに欠巻を寄贈して、揃いに出来ないものだろうか。受入れてくれるか分からんけど。
 1頁(頁付なし)扉、2作めとの違いは標題「新「超」怖い話」。
 3~5頁、樋口明雄「まえがき」は取材の実態や執筆者にも及んでいて参考になる。1頁15行、1行37字。冒頭、3行取り1字下げの明朝体太字で「まえがき」とあって、2行め~4頁1行め、

 正直言って、今回だけは自信がなかった。
 前二巻において、拾えるネタは拾い尽くしたと思ったからだ。
 しかし取材を始めて驚いた事に、恐怖体験や心霊体験は実に無尽蔵と言えるほど/巷間に埋もれていたのである。しかも、よくある「友達の友達の話なんだけど…/…」的な信憑性に欠けるものではなく、多くが本人の直接の体験であったりする。
 若者達はオカルトや心霊に興味を持っている事が多いが、さすがに世間ズレした/大人はそうはいかない。お化けやユーレイだのと言ったものは、つのだじろう氏の/漫画やスティーヴン・キングの小説の中だけに存在するものと決めつけられて、ど/こかタブー視されている風潮がある。
 心霊体験の取材をしているのだと言うと、相手はまず訝しげな表情を浮かべる。/ところが、しばらく話しているうちに、ふと眉根を寄せる。
「そういえば、前に一度、こんな事があったな……」【3】
 怪異現象の体験者は、案外と多いのである。


 取材に訝しげな表情を浮かべるのは、取材するだけの価値があるのか訝しいからであろう。しかし、全く興味がなくて聞いても覚えていない人もいるだろうが、全くこういったことに接したことのない人はいないのではないか。私は昭和59年(1984)に父の郷里で祖父などから、昭和61年(1986)には横浜市の中学校の同級生や部活の後輩、以前の同級生の祖母、小学校の教員をしていた父方の従兄に、昭和62年(1987)には兵庫県の高校の同級生たちから「怖い話」を聞かせてもらったのだが、祖父や叔父、母など身近な親族の体験を数多く語ってくれた。掘り起こせば人の数だけ話はあるのである。
 続く考察部分も時代を反映し、かつ編著者の考えを窺う興味深い内容ではあるのだけれども割愛する。
 1行分空けて5頁3行め以降の謝辞等を見て置こう。

 今回の取材で、再びパソコン通信のいくつかのネット関係者の方々にたいへんお/世話になった。快く掲載を承諾して下さったCAT―NET、遊演街、帝都BBS/の常連メンバー諸氏に深く感謝の意を表する。
 くわえて、シリーズのレギュラーメンバーである加藤一氏、今回新しく参与して/下さったデルモンテ平山氏、氷原公魚氏の多大なるに発汗によって、この本は上梓/する事ができた。あとは読者の皆様に大いに怖がっていただき、またいっときの楽/しみとなれば、これは愚生の大いなる幸せである。
 
 
 一九九三年五月十四日               執筆者代表 樋口明雄


 6~10頁(頁付なし)「目 次」の末尾、10頁11~12行めにやや小さく次の断り書きがある。

*本書に登場する人物名は様々な事情を考慮してすべて仮名にしてあります。また各話末尾に記されている名前は、その話の直接の取材執筆者の名前です。


 すなわち、本書は各話の本文末、行を改めて下詰めで「(樋口)」の如く執筆者を示してある。
 11頁(頁付なし)1章の扉、黒を基調にした墨流しのような地色に明朝体太字の斜体白抜きで中央に1行、章の題、梵字(種子)、内容の説明が入る。
 頁付があるのは220頁までで、1頁白紙があってその裏、横組みで小さく「執筆者」の、1人5~6行ずつの紹介。

樋口 明雄*2
1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業後、/某テレビ雑誌の記者、ゲームブック・ライター/などの職業を経て、小説執筆に手を出す。と/りあえず現在は作家。血液型はA型。水瓶座。/最新作はアスキー出版刊「赤い夕陽の快男児」。
 
加藤 一*3
1967年静岡県生まれ。本業はフリーの雑誌編/集・企画だが、守備範囲はコンピュータから/宗教まで無節操なまでに広範囲に渡る。最近/では某雑誌の副編集長と、電脳小説ネット・/Network―GLのコンセプチュアル・ディレ/クターを勤めている。
 
デルモンテ平山*4
1961年神奈川県生まれ。映画・ビデオの批評/から製作、CFの企画、インタビュー、ルポ、/自動販売機の営業と「何でも屋」のように見/えるが、実は「怪奇文筆家」として全国の心/霊体験を取材し倒したいという野望に燃える/蠍座でB型の陽気な青年筆業家。
 
氷原 公魚*5
1970年北海道生まれ。建築系企業の営業から、/一念発起して文筆の道に身を投じた。自分自/身も周囲の人間も奇妙な体験が多く、これま/でに幾たびか「超怖い話」のネタ提供者となっ/ている。奇しくも「新・超怖い話」が彼のメ/ジャー・デビュー作となった。


 氷原氏の提供したネタだが、仮名が「氷原」でないので俄に分からない。北海道出身者の話は幾つかあるが、年齢や職業が氷原氏とは一致しないようである。
 次いで奥付がある。これも他の3冊と同じレイアウトである、差し当たり2作めとの異同だけ挙げて置くと、上部左寄りの標題「新「超」怖い話」、レーベル名の下の整理番号「Q-019」、最下部、横線(8.8cm)の下、中央右寄りに小さく入るISBNコード(カバー裏表紙に同じ)が、異なる。
 なお「製本」の下に「◉」で上下を仕切って「編集協力   加藤 一」とあるが、2作めは「松本耕三」だったのを見落としていた。『新「超」怖い話5』は上の「◉」のみあって「編集協力」とその下の「◉」のあった場所が空白になっている。1作めは見落としていたので機会を改めて確認することとしたい。
 最後に「勁文社文庫 21 好評発売中!!」の目録が1頁あって、2点めが2作めである。ゴシック体で上寄せで大きく「続「超」怖い話」、次いでゴシック体で著者「樋口明雄/編著」そして一番下に4行、

何気ない日々の隙間からも/れ出す闇の恐怖。実体験で/つづる現代の怪談集 !!   
      定価五六〇円

とある。(以下続稿)

*1:何故か「「超」怖い話公式ホームページ」の「「超」怖い話 資料集」も第5刷に拠っている。

*2:ルビ「 ひ ぐち  あき お 」。

*3:ルビ「 か とう はじめ」。

*4:ルビ「ひらやま」。

*5:ルビ「 ひ はら  わかさぎ」。