前回の続きで、以下の3つを比較して見る。
①『滝平二郎の世界』(1975.12)157~161頁「滝平二郎の出版作品リスト」
②『滝平二郎望郷篇』(1979.10)126~129頁「出版作品一覧」
③『滝平二郎作品集15』(1985.3)90~93頁「出版作品一覧」
掲載されているもの全部を列挙して行っては大変なので、年ごとに何作品挙がっているかを表に示し、異同について煩瑣にならぬ範囲で、最低限何がないかが分かる程度に指摘して行くこととする。
西暦 | 和暦 | ① | ② | ③ | 註 |
---|---|---|---|---|---|
1953 | 昭和28 | - | - | 1 | *1 |
1956 | 昭和31 | - | - | 2 | *2 |
1958 | 昭和33 | 6 | 6 | 15 | *3 |
1960 | 昭和35 | 2 | 2 | 2 | |
1962 | 昭和37 | 2 | 2 | 5 | *4 |
1963 | 昭和38 | 4 | 4 | 14 | |
1964 | 昭和39 | 5 | 5 | 8 | |
1965 | 昭和40 | 8 | 8 | 9 | *5 |
1966 | 昭和41 | 5 | 5 | 5 | |
1967 | 昭和42 | 13 | 13 | 14 | *6 |
1968 | 昭和43 | 10 | 10 | 14 | *7 |
1969 | 昭和44 | 10 | 10 | 11 | *8 |
1970 | 昭和45 | 8 | 8 | 9 | *9 |
1971 | 昭和46 | 2 | 2 | 3 | *10 |
1972 | 昭和47 | 7 | 7 | 8 | *11 |
1973 | 昭和48 | 2 | 2 | 3 | *12 |
1974 | 昭和49 | 3 | 3 | 4 | *13 |
1975 | 昭和50 | 2 | 3 | 3 | *14 |
1976 | 昭和51 | 4 | 8 | *15 | |
1977 | 昭和52 | 8 | 10 | *16 | |
1978 | 昭和53 | 2 | 4 | *17 | |
1979 | 昭和54 | 3 | 6 | *18 | |
1980 | 昭和55 | 5 | |||
1981 | 昭和56 | 5 | |||
1982 | 昭和57 | 4 | |||
1983 | 昭和58 | 2 | |||
1984 | 昭和59 | 2 | |||
その他 | 初期 | 5 | 5 | - | *19 |
①は全てではないが刊年月日まで示しているが、②は月までである。しかし点数は一致しており②は①をそのまま使っていることが分かる。
③はその遺漏を補っている。尤も、現在では国立国会図書館デジタルコレクションの全文検索によって更なる追加が出来るようになっているのではないか、と思うのだけれども、まぁそんなことは滝平氏の研究者が既に着手していることだろうから、私の心配することではなかろう。
それはともかく、①②にあって③に漏れているものが3点ある。それは①②の末尾に「その他初期の版画集に次の作品がある。」として同じ5点を同じ順番で挙げていた、その4点めと5点めが、③では90頁2行め「一九五三年 (昭和28) ●皇帝的〝新衣〟(絵本=木版/「裸の王さま」北京版)中国・人民美術出版社(9月刊)」そして3行め「一九五六年 (昭和31) ●花岡惨案(合作版画集=木版)中国・人民美術出版社(7月刊)」として冒頭に置かれているが、その前の3点を載せていないのである。しかし不審なのは『裸の王さま』北京版、としながら、存在するであろう元版のデータを削除したことである。『花岡惨案』の元版『花岡ものがたり』に至っては標題も示さない。
①②ではまづ『花岡ものがたり』そして「●裸の王さま (私家版=’51年刊)」ともう1点「●豆版画集みやげばなし銀の鮒 (私家版=’52・4・1刊)」の3点を挙げていた*20。「私家版」を「出版」物とは区別したのかも知れないが、適切な処置だったかどうか。とにかくここで③が『花岡ものがたり』を削り、その刊年月(日)が示されなくなったことで、②折口遼及び③村田哲朗の「年譜」の、1月に秋田で『花岡ものがたり』を合作刊行したかのような記述は、訂正の手懸りを失い、ついに展覧会の図録に誤記を生ぜしめる結果を招来したものと思われるのである。
なお③の「一九五六年」条のもう1点、90頁4行めは「●日本木刻选集(表紙=木版)中国・人民美術出版社(9月刊)」で、①②には拾われていなかった。(以下続稿)
*1:①②は「その他」に挙げる。詳しくは後述。
*2:①②はうち1点を「その他」に挙げる。もう1点は追加。詳しくは後述。
*3:③は「装丁・函」担当の9作品を追加。
*4:③はヤマハ音楽教室の『たのしいワークブック』3点追加。1963年にも『たのしいワークブック』1点と『小学生のワークブック』2点、1964年に『小学生のワークブック』1点を追加。
*5:③は『新入組合員の手引』を追加。
*6:③は『生活の探求』(第一部・第二部)を追加。
*7:③は『生活の探求』(第三部)と青木書店1点・日本標準テスト研究会の2点を追加。
*8:③は崙書房1点を追加。
*15:③は文芸春秋デラックス1点と斎藤隆介の文庫版3点を追加。
*16:③は斎藤隆介の文庫版1点と斎藤隆介の絵本の限定特装本1点を追加。なお『天の赤馬』を②は11月刊とするが③は12月刊とする。
*19:③は、うち1点を1953年、1点を1956年に示し、残り3点は掲出しない。詳しくは後述する。
*20:引用は①161頁4~5行めに拠る。②では括弧の前を詰め「’52年4月刊」と日を省略している。