瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

演劇

祖母の蔵書(165)岡本綺堂①

祖母は岡本綺堂を愛読していて『岡本綺堂読物選集』を購入するくらいだった。 尤も、いきなり『選集』を買うはずもないから、それ以前の読書歴があるはずなのだが、全く聞かずに終った。 旺文社文庫で出た『半七捕物帳』を揃えていた。 ・旺文社文庫 『半七…

祖母の蔵書(129)戸板康二②

先に招んだ若手の古本屋は戸板氏の本に見向きもしなかったが、後で招んだベテランの方は戸板康二の上製本の単行本を全て取ってくれた。並製本は取らなかった。文庫本は手に取りもしなかった。 ・押=寝間の押入れ ・寝=寝間の本棚 ・7=居間の隅の9段の簞…

祖母の蔵書(128)戸板康二①

戸板康二の本は以前論文を書くのに使ったこともあり、残して置いても良いかと思って新しい本から持ち帰っていたのだが、祖母はエッセイ・小説ともに愛読していてかなりの数があった。図書館で用が足りることも確かである。そこで思い切って処分することにし…

祖母の蔵書(107)大佛次郎③

朝日新聞社から出ていた、同じ体裁(四六判上製本、ビニールカバー。函入、函にパラフィン紙と帯)の大佛次郎の「全集」と「選集」を纏めて置こう。 これも寝間の本棚と仏間の硝子棚とに分散して収まっていた。 ・『大佛次郎自選集 現代小説』 『第三巻 真夏…

祖母の蔵書(103)忠臣蔵①

祖母は忠臣蔵・赤穂事件には関心を持っていたらしい。芝居の大星由良之助ではなく史実通りの大石内蔵助が活躍するものに親しんでいたようだ。 しかし、私は史実の方も芝居の方も一通り知っていると云うまでで、人と丁々発止語り合えるほどの知識も興味もなか…

祖母の蔵書(099)歌舞伎

私が初めて会った頃の祖母は、杖を突きながらだけれどもスタスタ歩いていて、まぁ矍鑠としたものだったが、しかし段差は苦手にしていて、年末に長男宅に行って、年明けもしばらくゆっくり過ごして帰って来るのだが、往きには私もお供をして、当時各地の駅で…

祖母の蔵書(51)モンゴメリ①

家人は朝の連続テレビ小説を見ていて、人物の関係を『赤毛のアン』や『若草物語』に当て嵌めて理解しようとすることがあるのだが、これは10代の頃に祖母に薦められて読んだからで、祖母の小説の趣味は、晩年は時代小説、その前は推理小説と時代小説であった…

白馬岳の雪女(100)

2021年7月21日付(002)以来何度か、牧野陽子が仮に当ブログでは旧稿とした「ラフカディオ・ハーン『雪女』について」と、同じく牧野氏の新稿と呼ぶことにした「「雪女」の〝伝承〟をめぐって―口碑と文学―」にて、今野圓輔 編著『日本怪談集―妖怪篇―』の雪女…

日本の民話1『信濃の民話』(14)

10月22日付(10)の最後に書名だけメモして置いた、次の本を見た。 ・松谷みよ子・曽根喜一・水谷章三・久保進 編『戦後人形劇史の証言――太郎座の記録――』一九八二年四月一九日発行・一声社・334頁・四六判上製本 表紙は丸背の赤い布装、背表紙に黒の明朝体…

長沖一『上方笑芸見聞録』(13)

昨日の続きで、劇場や文学作品、演目、映画その他を列挙して行く。 こちらの方は未定稿で大体の分類はしてあるが、敢えて50音順にしなかった。 【劇場・演芸場】 ナンバ・グランド 25 南の花月 9~11・75~76・87・100・103・118・139・147・154・181 ナンバ…

長沖一『上方笑芸見聞録』(12)

それでは6月1日付(01)に予告した、2000年12月21日までに私が作成した本書の「索引」に、6月2日付(02)に断ったような若干の修訂を加えて、示して置こう。 もとの「索引」では、まづ長沖氏の著作が1字下げで並べてある。 「はだか道中記」横山エンタツの巻…

長沖一『上方笑芸見聞録』(11)

・花菱アチャコの藝名(5) 昨日の続き。 さて、本書には、相方の活動弁士の真似に合わせて、アチャコが髪を振り乱して踊る(?)という藝について、三人三様の証言が記録されている。これを登場順に番号を附し、掲載される章・節、~相方の名と真似た無声…

長沖一『上方笑芸見聞録』(7)

・花菱アチャコの藝名(1) 昨日まで、エンタツアチャコの横山エンタツの出生地について、本書の説を見て来た。まづ「放送朝日」昭和48年(1973)4月号掲載の第【4】回「横山エンタツ」の「二」節めで取り上げられ、ついで8月号掲載の第【8】回、相方であっ…

杉村恒『明治を伝えた手』(5)

昨日の続きで、解説「職人の世界」の2章め、グラビア頁には取り上げられていなかった団体について紹介しているところを見て置こう。 169頁13行め、3行取り1字下げ「伝統の復活と維持」と題して、14~16行めに前置き、 戦後、この日本の伝統ともいうべき手仕…

駒村吉重『君は隅田川に消えたのか』(18)

・吉田正三について(3) 本書は Amazon 等のレビューや、最近でも Twitter の投稿にて、かなり高い評価を得ているようですが、私の評価は否定的なものとなっております。――当ブログではこれまで、駒村氏が当時の都市交通網を考慮に入れていないことを指摘…

杉村恒『明治を伝えた手』(2)

当初、4月12日付(1)に続けて「昨日の続き」として投稿するつもりで準備していたのだが、5月13日付「東京新聞社社会部編『名人〈町の伝統に生きる人たち〉』(1)」に述べたように本書の6年前に類書が刊行されていたことを知って、そちらを確認してからに…

赤いマント(233)

・岩崎京子の赤マント(8) 前回見た『昔話を語る女性たち』の奥付の裏に「遠野昔話ゼミナール2008 絵本と昔話」の告知が出ています。平成20年(2008)11月29日(土)と11月30日(日)の2日間で、1日めの 13:30~14:30 に石井正己の基調講演、次に「14:30~…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(131)

・杉村顕道の家系(4) 杉村顕道の父・正謙の回想が『懐旧録』もしくは『杉村正謙懐旧録』の題で、昭和48年(1973)1月に杉村顕道によって刊行されている。国立国会図書館に所蔵されているので見に行こうと思っているが、なかなか国立国会図書館に行く暇が…

『三田村鳶魚日記』(13)

神戸陳書会については、既に古書マニアによる言及が幾つかあるらしいので、それらの人々が注目しないであろう河本氏について触れるに止める。 ・ちくま文庫『古本でお散歩』(二〇〇一年七月十日第一刷発行・定価780円・筑摩書房・366頁)古本でお散歩 (ちく…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(64)

・岡本綺堂「影」(8) さて、戯曲では、小説と違って地の文が使えません。「木曾の旅人」は台詞の間に適切に差し挟まれた地の文が、緊張感を高める効果を上げていたのですが、戯曲では台詞か、舞台の様子や登場人物の動きを説明するト書きだけになります。…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(63)

・岡本綺堂「影」(7) 昨日の続きで、本作が宜しくない理由をもう少し突っ込んで述べて見ましょう。 「木曾の旅人」では、杣の重兵衛の子供・太吉が怯えて泣き、遅れて杣小屋を訪れた猟師の弥七が連れて来た黒犬が吠え続けるのですが、重兵衛と弥七は何も…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(62)

・岡本綺堂「影」(6) 9月18日付(59)に述べたように、本作を初出誌で読んだとき私はかなりがっかりしました。そして9月17日付(58)にも言及した安藤鶴夫の「凡作」との評に納得したものでしたが、一旦本作についての記事を切り上げるに当たり、本作のど…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(61)

・岡本綺堂「影」(5) 昨日の続きで、幽Classics『飛驒の怪談』の「編者解説」から、戯曲「影」について述べた箇所の後半を見て置きましょう。314頁11行め〜315頁2行め、 芸妓おつやが、旅人の妖変に気づくあたりの暗示的な演出はまことに巧みで、舞台上に…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(60)

・岡本綺堂「影」(4) 昨日の続き。 幽Classics『飛驒の怪談』の「編者解説」から、戯曲「影」について述べた箇所を抜いて置きましょう。学研M文庫 伝奇ノ匣2『岡本綺堂 妖術伝奇集』には触れるところがありません。 表題作に据えた「飛驒の怪談」の解説…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(59)

・岡本綺堂「影」(3) 昨日触れたように、本作を読むには10年前に幽Classics『飛驒の怪談』に収録されるまで、初出誌に当たるしかありませんでした。――私は2014年3月24日付「楠勝平『おせん』(1)」に述べた、浪人時代に入り浸っていた某区立図書館で『…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(58)

・岡本綺堂「影」(2) 岡本氏晩年の戯曲「影」については、初出誌から取った複写がどこかに紛れ込んでしまい、そのうち本文も2011年1月9日付「岡本綺堂『飛騨の怪談』(1)」に書影を貼付した、東雅夫編の幽Classics『飛驒の怪談 新編 綺堂怪奇名作選』に…

Wilhelm Meyer-Förster “Alt-Heidelberg”(3)

3月15日付(2)の続き。 私の参照した岩波文庫旧版(番匠谷英一譯)旺文社文庫(植田敏郎訳)岩波文庫新版(丸山匠訳)は、それぞれ1頁(頁付なし)が扉、扉の裏(頁付なし)には岩波文庫(新版)のみ上部に「ALT-HEIDELBERG/1901/Wilhelm Meyer-Förster…

Wilhelm Meyer-Förster “Alt-Heidelberg”(2)

3月12日付(1)の続き。なお、この戯曲の概要については、岩手大学工学部の宮本裕教授のHPの「ドイツの窓・ドイツを知ろう ドイツに関するページ」に紹介されている、「基礎ドイツ語」5月号・第26巻第1号(昭和50年5月・三修社)掲載の 渕田一雄「…

Wilhelm Meyer-Förster “Alt-Heidelberg”(1)

・岩波文庫(1)*1 ・マイアーフェルスター作/番匠谷英一譯 ・岩波文庫1127『アルト ハイデルベルク』昭和十年三月二十五日印刷・昭和十年三月三十日發行・★ 定価二十錢・152頁 現物は未見だが国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧出来る。 ・岩波…

『白川喜代次遺作集』(3)

「IIII 隨筆」は目次には「秋 思…………………(二四〇)/ 他三篇」とあり本文239頁(頁付なし)は中扉で「4 隨 筆」とあります。目次に挙がっている「秋思」240〜242頁3と次の「希望」242頁4〜244頁は「略歴」には記載がありません*1。 245〜247頁7「学生劇斷想…