瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小説の設定

川端康成『朝雲』(5)

・「文學ト云フ事」(1) 25年前の深夜に見たときの記憶はさすがにない。10年前に某巨大動画サイトで予告編部分のみを見た頃までは、少々覚えていたように思うのだが、今となってはもう、動画サイトに上がっているものと、yen-rakuウェブサイト「interzone…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(34)

・白銀冴太郎「深夜の客」(10) 8月8日付(27)の最後に引用した、東雅夫のtweetは、灰月弥彦と云う人のtweetに応じてのものであった。 灰月弥彦の2018年1月24日21:19のtweetは、まさに「『日本現代怪異事典』の「おんぶ幽霊」の件」に触発されて呟かれたも…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(33)

・白銀冴太郎「深夜の客」(9) ここ数日、8月8日付(27)に引いた、東雅夫がtwitterで示した①白銀冴太郎②杉村顕道同一人説、及び8月11日付(30)に引いた、岡本綺堂「木曾の旅人」との関係についての東雅夫の示唆に導かれて、①「深夜の客」及び②「蓮華温泉…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(32)

・白銀冴太郎「深夜の客」(8) 昨日の続きで、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の比較の最後。構成については8月7日付(26)に対照させてある。 【L】男の述懐 ①一九八頁1〜7行め 痴情ゆえに女を殺した彼は糸魚川警察署でおびえなが…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(31)

・白銀冴太郎「深夜の客」(7) 8月10日付(29)の続きで、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の比較。構成については8月7日付(26)に対照させてある。 【J】巡査による男の捕縛と説明 ここも全文を抜いて対照して置こう。①一九六頁4…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(29)

・白銀冴太郎「深夜の客」(5) 昨日からの、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の比較の続き。構成については8月7日付(26)に対照させてある。 【E】泣き、怯える子供 【F】吠える二匹の犬 【G】主人の疑いと行動〜狐・鉄砲 【H】…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(28)

・白銀冴太郎「深夜の客」(4) 前回の最後に触れた灰月氏のtweetから朝里樹『日本現代怪異事典』に及んでも良いのだが、その前に8月7日付(26)の続きで、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」を、頭からざっと比較して見よう。 【A】導…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(26)

・白銀冴太郎「深夜の客」(2) 昨日の続きで、『山怪実話大全』の東雅夫「編者解説」が「奇妙な相似形を成す」とする白銀冴太郎「深夜の客」と杉村顕道「蓮華温泉の怪話」について、確認して見よう。本文は『山怪実話大全』により、一九〇〜一九八頁「深夜…

夏目漱石『こゝろ』の文庫本(18)

・集英社文庫『こころ』(4) 2013年1月13日付(07)に触れた、カバー裏表紙右上の紹介文を比較して見よう。 第30刷までは次のようであった*1。 「私」は、鎌倉の海で出会った/「先生」の不思議な人柄に強く/惹かれ、関心を持つ。 「先生」が、恋人を得るため親…

松本清張『砂の器』(3)

・関川夏央『昭和三十年代 演習』 5月24日付「松本清張『ゼロの焦点』(4)」に触れたように、関川氏の本作に触れた箇所も、何だかおかしいのです。 5月27日付「松本清張『ゼロの焦点』(5)」にその冒頭、『ゼロの焦点』についての記述(52頁15行め〜53頁…

阿知波五郎「墓」(9)

10月6日付(3)に引いた、鮎川哲也が書いていることと同じく、私も当初、特に違和感を感じませんでした。それ以上に主人公の情念に気圧されると云うか、鮎川氏も結局、連載時には別の作品を載せたのを『こんな探偵小説が読みたい』では本作に差し替えたよう…

阿知波五郎「墓」(8)

昨日の続き。 まづ、事故を擬装する点ですが「七月十九日」条の最後、420頁16行め〜421頁8行め、閉じ込められた直後に、書庫の電灯のスウィッチを点じて、 しまは、渋谷の掛け慣れた回転椅子に身を投げかけ、卓子に打俯して思う存分泣いた。そうして居/るう…

阿知波五郎「墓」(7)

前回から随分経ってしまったが、それまで借りていた本を返却して別の図書館で借り直し、その間にやはり懸案であった別の調べを足したりしているうちに手が離せなく(?)なって、借り直した本の返却期限が来てしまった。 * * * * * * * * * * 10月…

阿知波五郎「墓」(6)

主人公「しま」は「死にたい」と「決心」して、自ら書庫に閉じ込められます。 七月十九日の朝、出勤してきた渋谷が、417頁5行め「夏の閉館前で忙しい」と言うのを6行め、しばらく「手伝い」、そして418頁1行め、渋谷に「しまさん、もういいよ。‥‥」と言われ…

阿知波五郎「墓」(5)

「墓」が応募した懸賞の募集期間や発表について、広島桜2(通行探偵)氏が今朝方昨日の記事に投じたコメントにて、教えてもらいました。広島氏は2時間ほど掛けて、少しずつ、ご自身が調べ得た結果をその都度、4度に分けて投稿しています。私は10月4日付(1…

阿知波五郎「墓」(4)

それでは、阿知波五郎「墓」の内容について、鮎川哲也『こんな探偵小説を読みたい』所収本文(414〜440頁)をもとに確認して置きましょう。 415頁5行め。主人公の「しまは青葉保育園の保母である」。 414頁7行め、舞台は「M大学附属、文化研究所の書庫」で…

阿知波五郎「墓」(3)

昨日の続きで、鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』に見える、阿知波五郎「墓」をアンソロジーに収録するのを断念した一件について、見て置きましょう。404頁5〜8行め、 この「墓」(楢木重太郎名義)という短編を(氏の創作はすべてが短編なのだが)、わた…

阿知波五郎「墓」(2)

昨日の続き。 さて、鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』の、カバー表紙折返しの上部にある、明朝体横組みの紹介文には、次のようにあります。 夏季休暇を翌日に控えた大学図書館で、ひ/とりの女性が書庫に閉じ込められた! 鉄と/コンクリートで固められ…

阿知波五郎「墓」(1)

これも主題は9月23日付「「ヒカルさん」の絵(02)」から一貫して同じです。いえ、以前からこの小説には注意していて、10月1日付「閉じ込められた女子学生(1)」に引いた日本文学芸術学部写真学科の話に気付いたことで記事に出来そうだと思い、そして、掲…

山本禾太郎「東太郎の日記」(35)

昨日の続き。 日記の10日め、作者をモデルとする主人公「山木東太郎」が女主人公「おふくさん」と再会したのが大正7年(1918)秋か冬頃のこととして、10月30日付(22)で見た日記の11日めは「おふくさんと伏見の停留所で別れてからすでに二年になる。」との…

山本禾太郎「東太郎の日記」(34)

12月8日付「山本禾太郎「第四の椅子」(21)」に予告した関田一喜の経歴についての記事を準備しようと思っているのですが、なかなか調べに出られません。記事の難読箇所や振仮名の確認も出来ていないままです。 そこで久し振りに「東太郎の日記」に戻って、…

山本禾太郎「東太郎の日記」(25)童貞

昨日の続き。 作中には時期を窺わせる記述は殆どありません。時事も全く扱われていません。 10月20日付(12)本文②、日記の1日めは、冒頭に登場する紳士風の男の台詞、「おかみ、僕はネ、白い絽の羽織に黒い紋をつけて、夏の式服にしていたんだが、昨夜高砂…

山本禾太郎「東太郎の日記」(24)結婚

昨日の続き。 さて、主人公山木東太郎に、山本禾太郎こと本名山本種太郎の体験した「事実」が色濃く投影されているとするならば、本作は不明瞭な山本氏の前半生を窺わせる資料として、もちろん「小説」ですから全てを全くの「事実」と単純に捉える訳には行き…

山本禾太郎「東太郎の日記」(23)

昨日まで12回に分けて本文を紹介しました。 探偵小説ではありませんから、本作と若干の未収録作品のために新たに論創ミステリ叢書『山本禾太郎探偵小説選Ⅲ』が編まれるようなことは、恐らく望めないでしょう。10月13日付(06)に述べたように本文の売込み(…

山本禾太郎「東太郎の日記」(22)本文⑫完

日記の11日め。【 34 】頁上段18行めから下段7行めまで。 下段の余白、下部に四角いお盆の上に桃を3つ盛った六角形の陶器の鉢に陶器の水差しが載っているカットがあります。 今回新たに新字で代用した漢字は「娯」です。 ×月×日 おふくさんと伏見の停留所で…

山本禾太郎「東太郎の日記」(21)本文⑪

日記の10日め。【 29 】頁上段10行めから【 34 】頁上段17行めまで。 【 29 】頁下段は3行めまでで、残りは挿絵で、10月27日付(19)本文⑨、日記の8日めの前半、真っ暗な中で2人が並んで正座して、おふくさんが東太郎の右肩に左手を掛け、東太郎の左手がおふ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(20)本文⑩

日記の9日め。【 28 】頁下段5行めから【 29 】頁上段9行めまで。 今回新たに新字で代用した漢字は「並・述・寛・雪」です。 ×月×日 今日は四五日前から決まつてゐた圓八君夫婦の退座の日だ。これは主/として圓八君の希望によるもので、圓八君はおふくさん…

山本禾太郎「東太郎の日記」(19)本文⑨

日記の8日め。【 27 】頁下段11行めから【 28 】頁下段4行めまで。 28頁上段12行めまでの字数が少ないのは、この頁の右上に階段を描いた挿絵があるからで、床に届こうという暖簾により階段の先は隠れています。暖簾は「江ん」つまり「××さん江」の下部が描か…

山本禾太郎「東太郎の日記」(18)本文⑧

日記の7日め。【 27 】頁上段11行めから下段10行めまで。 今回新たに新字で代用した漢字は「望」です。 ×月×日 今日二時間ばかり自分の部屋にゐたおふくさんは、いろ/\と身の上/話をした。*1 若州の小濱近在の生れださうな、父母もなければ兄弟もない。浪…

山本禾太郎「東太郎の日記」(17)本文⑦

日記の6日め。【 25 】頁下段18行めから【 27 】頁上段10行めまで。 【 26 】頁の上下段とも6行と行数が少ないのは、左側に、おふくさんが旅館の薄暗い廊下を自室へ戻って行く場面が描かれているからです*1。右上に [哲] 印(1.0×0.6cm)があります。これは2…