瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小説の設定

「足要りますか?」(6)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(6) 台風が来るとて、帰りの電車がいつもより若干混んでいた。近所のスーパーの棚からパンが、食パンも菓子パンも消えていた。魚や肉も殆どなくなっていた。明日は休業とのこと。家人は先週満104歳になった祖母を見…

「足要りますか?」(5)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(5) 一昨日からの続きで小説の筋をやや詳しく見ている。所謂ネタバレと云う奴だが当ブログは面白そうな小説を紹介することを目的としていない。書いてある内容の確認と、どう読解すべきかに興味があるので、わざと…

「足要りますか?」(4)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(4) 昨日の続きで10日め(96頁下段5行め~97頁上段5行め)、冒頭部を抜いて置こう。96頁下段6~10行め、 十枚のカード。配達人No.7が三日前呟いたように文面/が変わっている。( )内の文字が “大腿部モ含メルモ…

「足要りますか?」(3)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(3) 一昨日からの続き。 例によって前置きが長くなったが、話の生まれた環境を重視したい私としては、当時永山氏が勤務していた沓喰分校について、やや詳しく確認して置きたいところなのだけれども、それはやはり後…

赤いマント(193)

・田辺聖子『私の大阪八景』(12) 前回引用した数え歌だが、何か元歌があってその節で歌ったのだろうか。「三ぴん」は漢字だと「三一」。 それでは、赤マント小説の一件の最後*1。『全集』第一巻33頁4~12行め(長篇全集219頁上段11行め~下段2行め・岩波現…

赤いマント(192)

・田辺聖子『私の大阪八景』(11) 昨日、主人公トキコが授業中に小説を書いていることをタヌキ先生に見つかって、教壇で級友たちに見せるように言われて笑われるところを見たが、今日はその続きで読み上げさせられるところを抜いて置こう*1。『全集』第一巻…

赤いマント(191)

・田辺聖子『私の大阪八景』(10) タヌキ先生の確認で長くなったが、6月30日付(188)の続き、少し飛ばして、『全集』第一巻31頁5~19行め(長篇全集218頁上段3行め~下段1行め・岩波現代文庫34頁4行め~35頁5行め・角川文庫(改版)37頁8行め~38頁7行め)…

赤いマント(188)

・田辺聖子『私の大阪八景』(7)タヌキ先生② それでは、赤マントに関する箇所の初めの方を引いて置こう*1。『全集』第一巻30頁18~20行め(長篇全集217頁下段15~19行め・岩波現代文庫33頁11~14行め・角川文庫(改版)36頁15行め~37頁1行め)、傍点「ヽ…

赤いマント(187)

・田辺聖子『私の大阪八景』(6) 時期~タヌキ先生① それでは、ようやっと小説の本文を検討することにするが、今年刊行したいと思っていた拙著『昭和十四年の「赤マント」』*1には、小沢信男「わたしの赤マント」と合わせて「わたしたちの赤マント」と題す…

赤いマント(184)

・田辺聖子『私の大阪八景』(3) 昨日に続いて、主人公「トキコ」の設定と、作者の田辺氏の経歴とを比較して、と云うことを一応考えていたのだが、これを始めるとまた相当長くなってしまう上に、既に田辺氏を研究している人によって済まされているであろう…

川端康成『朝雲』(5)

・「文學ト云フ事」(1) 25年前の深夜に見たときの記憶はさすがにない。10年前に某巨大動画サイトで予告編部分のみを見た頃までは、少々覚えていたように思うのだが、今となってはもう、動画サイトに上がっているものと、yen-rakuウェブサイト「interzone…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(34)

・白銀冴太郎「深夜の客」(10) 8月8日付(27)の最後に引用した、東雅夫のtweetは、灰月弥彦と云う人のtweetに応じてのものであった。 灰月弥彦の2018年1月24日21:19のtweetは、まさに「『日本現代怪異事典』の「おんぶ幽霊」の件」に触発されて呟かれたも…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(33)

・白銀冴太郎「深夜の客」(9) ここ数日、8月8日付(27)に引いた、東雅夫がtwitterで示した①白銀冴太郎②杉村顕道同一人説、及び8月11日付(30)に引いた、岡本綺堂「木曾の旅人」との関係についての東雅夫の示唆に導かれて、①「深夜の客」及び②「蓮華温泉…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(32)

・白銀冴太郎「深夜の客」(8) 昨日の続きで、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の比較の最後。構成については8月7日付(26)に対照させてある。 【L】男の述懐 ①一九八頁1〜7行め 痴情ゆえに女を殺した彼は糸魚川警察署でおびえなが…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(31)

・白銀冴太郎「深夜の客」(7) 8月10日付(29)の続きで、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の比較。構成については8月7日付(26)に対照させてある。 【J】巡査による男の捕縛と説明 ここも全文を抜いて対照して置こう。①一九六頁4…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(29)

・白銀冴太郎「深夜の客」(5) 昨日からの、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の比較の続き。構成については8月7日付(26)に対照させてある。 【E】泣き、怯える子供 【F】吠える二匹の犬 【G】主人の疑いと行動〜狐・鉄砲 【H】…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(28)

・白銀冴太郎「深夜の客」(4) 前回の最後に触れた灰月氏のtweetから朝里樹『日本現代怪異事典』に及んでも良いのだが、その前に8月7日付(26)の続きで、①白銀冴太郎「深夜の客」と②杉村顕道「蓮華温泉の怪話」を、頭からざっと比較して見よう。 【A】導…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(26)

・白銀冴太郎「深夜の客」(2) 昨日の続きで、『山怪実話大全』の東雅夫「編者解説」が「奇妙な相似形を成す」とする白銀冴太郎「深夜の客」と杉村顕道「蓮華温泉の怪話」について、確認して見よう。本文は『山怪実話大全』により、一九〇〜一九八頁「深夜…

夏目漱石『こゝろ』の文庫本(18)

・集英社文庫『こころ』(4) 2013年1月13日付(07)に触れた、カバー裏表紙右上の紹介文を比較して見よう。 第30刷までは次のようであった*1。 「私」は、鎌倉の海で出会った/「先生」の不思議な人柄に強く/惹かれ、関心を持つ。 「先生」が、恋人を得るため親…

松本清張『砂の器』(3)

・関川夏央『昭和三十年代 演習』 5月24日付「松本清張『ゼロの焦点』(4)」に触れたように、関川氏の本作に触れた箇所も、何だかおかしいのです。 5月27日付「松本清張『ゼロの焦点』(5)」にその冒頭、『ゼロの焦点』についての記述(52頁15行め〜53頁…

阿知波五郎「墓」(9)

10月6日付(3)に引いた、鮎川哲也が書いていることと同じく、私も当初、特に違和感を感じませんでした。それ以上に主人公の情念に気圧されると云うか、鮎川氏も結局、連載時には別の作品を載せたのを『こんな探偵小説が読みたい』では本作に差し替えたよう…

阿知波五郎「墓」(8)

昨日の続き。 まづ、事故を擬装する点ですが「七月十九日」条の最後、420頁16行め〜421頁8行め、閉じ込められた直後に、書庫の電灯のスウィッチを点じて、 しまは、渋谷の掛け慣れた回転椅子に身を投げかけ、卓子に打俯して思う存分泣いた。そうして居/るう…

阿知波五郎「墓」(7)

前回から随分経ってしまったが、それまで借りていた本を返却して別の図書館で借り直し、その間にやはり懸案であった別の調べを足したりしているうちに手が離せなく(?)なって、借り直した本の返却期限が来てしまった。 * * * * * * * * * * 10月…

阿知波五郎「墓」(6)

主人公「しま」は「死にたい」と「決心」して、自ら書庫に閉じ込められます。 七月十九日の朝、出勤してきた渋谷が、417頁5行め「夏の閉館前で忙しい」と言うのを6行め、しばらく「手伝い」、そして418頁1行め、渋谷に「しまさん、もういいよ。‥‥」と言われ…

阿知波五郎「墓」(5)

「墓」が応募した懸賞の募集期間や発表について、広島桜2(通行探偵)氏が今朝方昨日の記事に投じたコメントにて、教えてもらいました。広島氏は2時間ほど掛けて、少しずつ、ご自身が調べ得た結果をその都度、4度に分けて投稿しています。私は10月4日付(1…

阿知波五郎「墓」(4)

それでは、阿知波五郎「墓」の内容について、鮎川哲也『こんな探偵小説を読みたい』所収本文(414〜440頁)をもとに確認して置きましょう。 415頁5行め。主人公の「しまは青葉保育園の保母である」。 414頁7行め、舞台は「M大学附属、文化研究所の書庫」で…

阿知波五郎「墓」(3)

昨日の続きで、鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』に見える、阿知波五郎「墓」をアンソロジーに収録するのを断念した一件について、見て置きましょう。404頁5〜8行め、 この「墓」(楢木重太郎名義)という短編を(氏の創作はすべてが短編なのだが)、わた…

阿知波五郎「墓」(2)

昨日の続き。 さて、鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』の、カバー表紙折返しの上部にある、明朝体横組みの紹介文には、次のようにあります。 夏季休暇を翌日に控えた大学図書館で、ひ/とりの女性が書庫に閉じ込められた! 鉄と/コンクリートで固められ…

阿知波五郎「墓」(1)

これも主題は9月23日付「「ヒカルさん」の絵(02)」から一貫して同じです。いえ、以前からこの小説には注意していて、10月1日付「閉じ込められた女子学生(1)」に引いた日本文学芸術学部写真学科の話に気付いたことで記事に出来そうだと思い、そして、掲…

山本禾太郎「東太郎の日記」(35)

昨日の続き。 日記の10日め、作者をモデルとする主人公「山木東太郎」が女主人公「おふくさん」と再会したのが大正7年(1918)秋か冬頃のこととして、10月30日付(22)で見た日記の11日めは「おふくさんと伏見の停留所で別れてからすでに二年になる。」との…