瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

山本禾太郎「第四の椅子」(13)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(13) それでは選評を見て行きたいのですが、見出しに続いて掲載される、長命であった白井氏の選評は全文を抜く訳に行きませんので、冒頭の総評に当たる部分は、ざっと紹介するに止めます。 白井氏は「殆ど…

山本禾太郎「第四の椅子」(12)

昨日は一昨日の続稿を上げるつもりで準備していたのだが、途中で全て消えてしまった。材料は揃えてあっても入力と校正を何日分か済ませて置くような余裕はないので、日課だから何とか続けているのである。――そんなに余裕がないのなら連続テレビ小説の批判な…

筒井康隆『時をかける少女』(4)

・大林宣彦監督映画(3)近世の俳句 11月14日付(3)に、1回めの「四月十六日(土)」の学校での場面(00:06:53〜00:20:54)の場面の内訳を示したが、私が注目したいのは4時間めの福島先生の総合国語(古文)の授業(08:41〜09:26)である。 この教室は7列で…

山本禾太郎「第四の椅子」(11)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(11) それでは11月25日付(09)に紹介した昭和3年(1928)12月11日付の発表記事にあった「別掲文藝欄における採點成績及び批評」を眺めて置きましょう。 (四)「文藝」面、まず右上に3段抜きで「文 藝」と…

山本禾太郎「第四の椅子」(10)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(10) 11月22日付(6)に紹介した昭和3年(1928)10月20日の社告では長篇小説も大衆文藝も12月10日に当選発表されるはずでした。ところが、12月11日に発表されたのは大衆文藝のみで、長篇小説の発表は翌年…

山本禾太郎「第四の椅子」(09)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(9) 昭和3年(1928)10月20日の社告では12月10日と予告されていましたが11日に入選作の発表がありました。 昭和三年十二月十一日(土曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千六百二號(市内版)*1の(二)面、12段…

山本禾太郎「第四の椅子」(08)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(8) 一昨日からの続きで、昭和3年(1928)10月20日の「記念懸賞募集作品の/第一次豫選を終る」の最後、6段めの残りの、1字下げで振仮名なしで行間が詰まっている箇所、[概評]を見て置きましょう。 最初の…

山本禾太郎「第四の椅子」(7)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(7) 昨日の続きで、昭和三年十月二十日(土曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千五百五十號の(四)「文藝」面の「記念懸賞募集作品の/第一次豫選を終る」の続き、5段めから抜いて置きましょう。まず「[大衆文…

山本禾太郎「第四の椅子」(6)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(6) 前回見た昭和3年(1928)9月23日の社告に予告された通り、10月20日に入選作の発表がありました。 昭和三年十月二十日(土曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千五百五十號*1の(四)「文藝」面、3〜6段めの…

山本禾太郎「第四の椅子」(5)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(5) さて、前回紹介した締切直後の記事には「七八の両月」を「社内予選」に当て「九月上旬」に「予選合格」作品を「発表」、そして「九、十の両月間」に「予選パッス者」が送付済みの20回分に加えて梗概だ…

山本禾太郎「第四の椅子」(4)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(4) 昨日の続きで、締切の後に出た記事を眺めて置きましょう。 昭和三年七月四日(水曜日)付「讀賣新聞」第一万八千四百四十二號(市内版)*1の(七)面*2、12段組で記事は10段めまで、11〜12段めは「油…

山本禾太郎「第四の椅子」(3)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(3) この懸賞ですが、昭和三年一月三十日(月曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千二百八十六號(市内版)*1の(二)面*2、12段組の7〜10段め中央から左に4段抜きの囲みで、上部に「念記年周五十五第立創社本」…

山本禾太郎「第四の椅子」(2)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(2) この件については、戦後の回想もあります。 論創ミステリ叢書15『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』361〜366頁「探偵小説思い出話」です。 ここでも「讀賣新聞」の懸賞は「窓」の選考と絡めて記述されています…

山本禾太郎「第四の椅子」(1)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(1) 10月6日付「山本禾太郎「東太郎の日記」(1)」に予告した「『読売新聞』の長編懸賞」について確認して行きましょう。 既に触れたように論創ミステリ叢書15『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』所収「あの頃」…

山本禾太郎『消ゆる女』(3)

それでは、昨日引用した「小林文庫の新ゲストブック/過去ログ 2000年01月01日〜2000年06月30日」で石井氏が言及していた九鬼紫郎『探偵小説百科』を見て置きましょう。 『探偵小説百科』の「山本禾太郎」項については10月13日付「山本禾太郎「東太郎の日記…

山本禾太郎『消ゆる女』(2)

10月5日付(1)の続き。 山下氏の云う昭和22年(1947)刊『消ゆる女』と、横井氏の挙げる昭和23年(1948)刊『消える女』は、引用されている「あとがき」が一致しますから、同じ作品と思われます。 全国古書籍商組合連合会のサイト「日本の古本屋」にて検索…

筒井康隆『時をかける少女』(3)

・大林宣彦監督映画(2)時間割*1 原田氏と高柳氏の演技について、学芸会レベルという酷評もネット上には散見される。 演技が下手だというのは、2年後、昭和60年(1985)9月14日公開の『早春物語』のロケ現場で原田氏を見ての正直な印象なのだけれども、『…

筒井康隆『時をかける少女』(2)

・大林宣彦監督映画(1) 原田知世主演*1、昭和58年(1983)7月16日公開。時をかける少女 [DVD]出版社/メーカー: PI,ASM/角川書店発売日: 2000/12/22メディア: DVD購入: 2人 クリック: 95回この商品を含むブログ (188件) を見る時をかける少女 [レンタル落…

吉田秋生『櫻の園』(4)

8月11日付(3)の続き。 この『万葉集』の和歌の引用で、私が痛恨の思いを抱くのは、もう1点、8月21日付「吉田秋生『吉祥天女』(6)」に既に触れたことだけれども、和歌の意味についての説明・現代語訳や解釈が全く示されていないことだ。正確に訳せたか…

山本禾太郎『小笛事件』(7)

山本禾太郎に関しては、8月31日付(1)にも述べたように山下武「『小笛事件』の謎」から入ったのだけれども、肝腎の『小笛事件』を読む余裕がないのです。それというのも細川涼一「小笛事件と山本禾太郎」を読んだ上では『小笛事件』だけではなく、10月18日…

山本禾太郎「東太郎の日記」(33)山本桃村⑦

山本氏はこの時期のことを、本作以前に随筆に書いたことはありました。 その1つが、論創ミステリ叢書14『山本禾太郎探偵小説選Ⅰ』の「評論・随筆篇」339〜343頁に収録される随筆「ざんげの塔」です。横井司「解題」387頁1〜2行めには、 「ざんげの塔」は、『探…

山本禾太郎「東太郎の日記」(32)山本桃村⑥

未だ梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』を精読する余裕がないのですが、この後で山本桃村の名が出て来るのは11月4日付(27)に引いた、大正8年(1919)の「満洲の日記」の、書体についての記述のみのようです。すなわち昨日までに引いた、大正6年(1917)1月頃に京山…

山本禾太郎「東太郎の日記」(31)山本桃村⑤

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(5) 11月6日付(29)で見た、大正6年(1917)2月3日に岡山県の津山で旗揚げした一座がどうなったか見て置きましょう。96頁上段4〜17行め、 当時の津山駅は現在の津山口で、町まではかなりの距離が/ある。町中へ入って、あちこ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(30)山本桃村④

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(4) 前回、支配人と副支配人(手代)について本作と照合して、そこまでになってしまいましたが、いよいよ「秘書として小円師に書道を教えていた山本桃村」について検討して行きましょう。 まずは『浪曲旅芸人』で、京山小圓を…

山本禾太郎「東太郎の日記」(29)山本桃村③

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(3) それでは、大正6年(1917)に梅中軒鶯童と一座していた「事務の山本桃村君」が、本作の山木東太郎、すなわち本名山本種太郎の探偵小説作家山本禾太郎である根拠を示しましょう。 前回の引用の続き、95頁下段5〜16行めを抜…

山本禾太郎「東太郎の日記」(28)山本桃村②

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(2) 「山本桃村」が登場する章は、86頁上段12行めからの「(一〇) 放 浪」です。順を追って書かれているのですが、はっきり年月が書かれていないところもあるので、この章の頭から、2013年10月26日付「赤いマント(5)」と同じ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(27)山本桃村①

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(1) この自伝は恐るべき記憶力によって克明に綴られています。しかし全く書いたものがなかったのかというと、書いたものはあったのです。122頁上段6行め〜131頁下段4行め「(十二) 満鮮の初巡業」の章、126頁下段13行め〜127頁…

山本禾太郎「東太郎の日記」(26)

私は感情移入を強いられる藝能が苦手なので、落語はよく聞くけれども人情噺は好きではないのです。浄瑠璃や浪花節も必要があって聞く程度です。 そんな訳で、浪花節に関する本も読んだことがなかったのですが、先月からぼちぼち、参考になりそうな本を借りて…

山本禾太郎「東太郎の日記」(25)童貞

昨日の続き。 作中には時期を窺わせる記述は殆どありません。時事も全く扱われていません。 10月20日付(12)本文②、日記の1日めは、冒頭に登場する紳士風の男の台詞、「おかみ、僕はネ、白い絽の羽織に黒い紋をつけて、夏の式服にしていたんだが、昨夜高砂…

山本禾太郎「東太郎の日記」(24)結婚

昨日の続き。 さて、主人公山木東太郎に、山本禾太郎こと本名山本種太郎の体験した「事実」が色濃く投影されているとするならば、本作は不明瞭な山本氏の前半生を窺わせる資料として、もちろん「小説」ですから全てを全くの「事実」と単純に捉える訳には行き…