瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

人力車の後押しをする幽霊(6)

11月6日付(5)に引いた、田辺貞之助(1905.1.30〜1984.9.7)の体験談を読んだとき、22年前になるが同氏の最晩年に刊行された『江東昔ばなし』を読んでいた私は、――これは『江東昔ばなし』に、もっと整った形で出ているに違いない、と(内容は殆ど忘れてい…

田辺貞之助『江東昔ばなし』(5)

並製本の内容は上製本に同じである。上製本が刊行されたのが田辺氏の最晩年、昭和59年(1984)9月7日に死去する2ヶ月余り前の6月15日であってみれば、その後、著者の遺志に基づく追加は考えられないのだけれども、刊行者など関係者による再刊の経緯を説明す…

田辺貞之助『江東昔ばなし』(4)

一昨日からの続きで、3章めの細目を見て置く。 上製本101頁・並製本115頁は「江東の人と暮し」の扉(頁付なし)。 「1 江東の夫婦」上製本102〜132頁・並製本116〜149頁 「銭湯の新内」上製本102頁2行め〜・並製本116頁2行め〜119頁14行め 「無籍の親子」上…

田辺貞之助『江東昔ばなし』(3)

昨日の補足。 田辺氏が「アート・スミス」を見に行ったことは、確かだろうと思うのだが、これが何月何日に東京近辺の何処で開催された曲藝飛行だったのか、特定する作業は、横川裕一のサイト「航空史の片隅 ART SMITH 鳥人の軌跡」をざっと眺めた程度では見…

田辺貞之助『江東昔ばなし』(2)

昨日の続きで本体について。 上製本の見返しは、表紙・裏表紙ともに、江東区周辺の白地図を茶色で印刷している。左に隅田川が流れ蔵前橋から首都高速9号深川線までで永代橋は東詰で切れている。右上に旧中川、右下に荒川(放水路)、折れ目の少し左に四ツ目…

田辺貞之助『江東昔ばなし』(1)

『江東昔ばなし』菁柿堂・四六判 浪人時代に入り浸っていた図書館で上製本を愛読していた。最近になって、並製本が刊行されていることに気付いた。 ・上製本(昭和五十九年六月十五日第一刷発行・定価一二〇〇円・190頁) ・並製本(二〇一六年四月五日 第一…

赤い半纏(13)

11月20日付「鉄道人身事故の怪異(11)」に稲川氏の怪談集を取り上げたので思い出して、8月16日に書いて、そのままになっていた草稿を上げて見ることにした。 12頁の引用まではそのまま、以下ランキングについてはメモ程度だったので加筆した。恐らく、返却…

鉄道人身事故の怪異(14)

・ミステリーゾーン 体験実話シリーズ「水をくれ」(2) 昨日の続き。 さて、マサオの家でナカムラが語る話は、ナカムラのオジサンの体験と云うことで、実話と云うことになっているのだが、この種の話については2014年4月21日付(2)に触れたように、現在…

鉄道人身事故の怪異(13)

・ミステリーゾーン 体験実話シリーズ「水をくれ」(1) 鉄道事故で身体を轢断された人が追い掛けてくると云う話は、TBSラジオの「ミステリーゾーン」という番組でも取り上げられていた。私は1人でラジオを聞く習慣がなかった*1のでこの番組のことも知らな…

鉄道人身事故の怪異(12)

昨日の続き。 この話は鉄道人身事故ではないのだけれども、話の型は2014年4月21日付「鉄道人身事故の怪異(2)」に紹介した、松山ひろし『呪いの都市伝説 カシマさんを追う』に云う「踏切事故伝説」と全く同じなので便宜上、一括して済ませて置く。 竹書房…

鉄道人身事故の怪異(11)

昨日の続き。 前回問題にした小池氏の、複数の人に取材したかのような、断片を小出しにするような、もしこのような内容を知っているとすれば余程当事者に近い人物から聞き取ったとしか思えないのに取材源を明らかにしない、書き振りは、ただ単にライターとし…

鉄道人身事故の怪異(10)

2014年5月10日付(09)から随分間が空いてしまった。すぐにも続稿を上げるつもりだったのだが、小池壮彦『日本の幽霊事件』が取り上げる、昭和35年(1960)7月の常磐線中川鉄橋での男性工員(18)の自殺について、「朝日新聞」や「読売新聞」のデータベース…

鈴木三重吉『千鳥』の文庫本(1)

・岩波文庫31-045-4『千鳥 他四篇』(1) ・1935年11月15日 第1刷発行(170頁) ・1993年9月22日 第19刷発行 定価398円千鳥 他四篇 (岩波文庫)作者: 鈴木三重吉出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1935/11/01メディア: 文庫この商品を含むブログを見る・20…

松本清張『死の枝』(4)

・新潮文庫2226(4) 2012年10月9日付(1)に、①五刷を2015年2月24日に追加して置きながら、何のメモもしていなかったが、②四十八刷と比較しつつ記述して見た。 カバー表紙、上部に黒地の四角(4.2×6.6cm)に、明朝体横組みで上に大きく白抜き「死 の 枝」…

今野圓輔『幽霊のはなし』(07)

昨日の続きで、第一章の4節めを見て置こう。 72頁、章題と同じ大きさの明朝体、3行取り1字下げで「タクシーに乗る幽霊族*1」とあり、さらに1行空けて、3行取り2字下げで一回り大きなゴシック体の項目名。要領はこれまでに同じ。 釜トンネルの怪*2(72頁2行め…

今野圓輔『幽霊のはなし』(06)

一昨日からの続きで、第一章の3節めを見て置こう。 43頁、章題と同じ大きさの明朝体、3行取り1字下げで「戦 争 と 幽 霊*1」とあり、さらに1行空けて、3行取り2字下げで一回り大きなゴシック体の項目名。この節からは写真が挿入されており、ゴシック体横組み…

今野圓輔『幽霊のはなし』(05)

昨日の続きで、第一章の2節めを見て置こう。 43頁、章題と同じ大きさの明朝体、3行取り1字下げで「死 の 知 ら せ」とあり、さらに1行空けて、3行取り2字下げで一回り大きなゴシック体の項目名。要領は前回と同じで、参考までに「も く じ」での改行位置を「…

今野圓輔『幽霊のはなし』(4)

11月10日付(3)の続きで、内容について細かく見て置こう。 昨日の冒頭にも断ったように、一昨日に投稿するつもりだったのだが、投稿直前に固まってしまい、止むなく消去して書き直す余裕は残されていなかったので、書きかけの草稿の中から使えそうなものを…

男の甲斐性

昨日は11月10日付「今野圓輔『幽霊のはなし』(3)」の続きを投稿するつもりだったのだが途中でフリーズして止むなく消去した。そこで以前書きかけていた草稿の整っていないところを削除して投稿して置いた。――別に関係者ではありません。近頃私はトランプ…

『週刊光源氏総集編』(1)

刊行当時のことは知らない。――私の高校時代には大和和紀『あさきゆめみし』が連載中で、私の高校の図書館にも、漫画単行本を入れるのは当時としては異例だったが備えてあったと思うのだが、実は覚えていない。瀬戸内寂聴が苦情を言っていたような授業で『源…

今野圓輔『幽霊のはなし』(3)

この夏、久し振りに本書を借りたのは、後述するように久しく前からだらだらと取り上げている、作家の幽霊体験記に触れていることに気付いたからだったが、結局記事にしなかった。先日改めて本書を手にして、今まさに記事にしつつある話題が取り上げられてい…

今野圓輔『幽霊のはなし』(2)

昨日の続き。 第8刷の奥付について。下部に縦組みで「■ポプラ・ブックス 25■」この2行がゴシック体で、以下は明朝体。1行弱空けてやや大きく「幽霊のはなし」1行強空けて下寄せで小さく「(著者との話し合いにより検印廃止)」以下シリーズ名・標題と同じ高…

今野圓輔『幽霊のはなし』(1)

以下は2011年2月17日に準備したものである。本書には、2011年1月25日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(09)」の注に言及したことがある。現在、第9刷を所蔵している図書館は利用資格がなくなってしまい改めて現物に当たることが困難なので*1、ま…

亡魂船(2)

10月17日付(1)に、明治20年頃の亡魂船の話を浅沼良次『流人の島』から引用したが、同じ著者の『八丈島の民話』にも「亡魂船」と題する話が載っている。 『八丈島の民話』の諸本は、2011年10月24日付「浅沼良次編『八丈島の民話』(1)」、2011年10月25日…

人力車の後押しをする幽霊(5)

私がこの怪異談に注目したのは10月26日付(4)に引いた話を、9月22日付「林家彦六『正蔵世相談義』(1)」に取り上げた『正蔵世相談義』で読んだからで、もう2ヶ月は前のことになる。 まづ、類話の有無を確認するために松谷みよ子『現代民話考』を調べ、そ…

草津線高山踏切オート三輪衝突事故(2)

・「朝日新聞縮刷版」昭和二十六年五月號 No.359・昭和二十六年六月十五日発行(通卷第三五九号)*1 発生したのが何月か分からないが、三学期ではあるまいと考えて新年度の頭から眺めて行くと、昭和26年(1951)の5月号に出ていることが分かった。 すなわち…

草津線高山踏切オート三輪衝突事故(1)

・松谷みよ子『現代民話考|Ⅳ| 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』1986年1月20日第1刷発行・1987年2月20日第3刷発行・定価1800円・立風書房・373頁・四六判上製本 ・ちくま文庫『現代民話考[4] 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』二〇〇三年七月九日第一刷…

三遊亭圓生『明治の寄席芸人』(1)

本書は10月24日付「人力車の後押しをする幽霊(2)」に取り上げたが、初版と新装改訂版の異同を詳しく見て置こう。 ・青蛙選書38(昭和四六年一二月二五日発行・定価千五百円・青蛙房・353頁・A5判上製本) ・新装改訂版(平成13年6月30日初版・定価3500円…

阿知波五郎「墓」(9)

10月6日付(3)に引いた、鮎川哲也が書いていることと同じく、私も当初、特に違和感を感じませんでした。それ以上に主人公の情念に気圧されると云うか、鮎川氏も結局、連載時には別の作品を載せたのを『こんな探偵小説が読みたい』では本作に差し替えたよう…

阿知波五郎「墓」(8)

昨日の続き。 まづ、事故を擬装する点ですが「七月十九日」条の最後、420頁16行め〜421頁8行め、閉じ込められた直後に、書庫の電灯のスウィッチを点じて、 しまは、渋谷の掛け慣れた回転椅子に身を投げかけ、卓子に打俯して思う存分泣いた。そうして居/るう…