瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2024-01-01から1年間の記事一覧

田辺聖子『女の目くじら』(3)

昨日の続きで、日本交通公社の雑誌「旅」昭和44年(1969)9月号に発表され、本書「Ⅰ」章に「忘れ得ぬ山陰」と改題されて収録されている文章から、同行者に関する記述を引用し、行き先についても確認して置くことにする。 ①単行本68頁2行め~69頁4行め②文庫版…

田辺聖子『女の目くじら』(2)

私が本書に注目したのは、7月10日付(1)に細目を見たうちの「Ⅰ」章、「旅の雑文」を集めた中に、少し注意している人の名があったからであった。 ①単行本22~30頁②文庫版16~23頁「人形芝居のある秘境」に、田辺氏を旅行に誘った人物と同行者が次のように記…

日本の民話『紀伊の民話』(19)

・松谷みよ子『現代民話考』第三期 松谷氏は『現代民話考』の「天狗考」の冒頭、紀州熊野で聞いた天狗の話をかなり詳しく紹介していました。 そこで『松谷みよ子の本』と同時期に刊行されていたので、『松谷みよ子の本』には前文が収録されなかった『現代民…

日本の民話『紀伊の民話』(18)

松谷氏の著書は恐ろしく多く、かつ再録もしくは改稿が多く、非常に扱いが難しいのですけれども、私には系統立てて追って行く余裕などとてもでないが、存しません。松谷みよ子民話研究室なき今、それこそ日本民話の会の企画としてでも『松谷みよ子の本』別巻…

日本の民話『紀伊の民話』(17)

・くまの文庫③『熊野中辺路伝説(下)』(3) 続いて、6月25日付(14)に見た和田寛「和歌山の民話・伝説」では「栗山某と要約されていた要約されていた、もう1話を見て置くこととしましょう。 (下)には㉘~㉝の6話、天狗の話が纏めてあるのですが、その中…

日本の民話『紀伊の民話』(16)

昨日の続き。 ・くまの文庫③『熊野中辺路伝説(下)』(2) さて、3~7頁「目 次」を見るに、章立てはしておりませんが樹木、鳥、蛇‥‥と云った風に何話か纏めて排列してあることに気づかされます。その最初8題が樹木に関する話で、その8番め、16~17頁「平家…

日本の民話『紀伊の民話』(15)

前回6月25日付(14)に取り上げた和田寛「和歌山の民話・伝説」に見える、松谷みよ子が昭和34年(1959)の紀州採訪で聞いたのと同じ話ですが、稿末「主要参考文献」に見える次の本に拠るであろうことは容易に察せられます。 ・くまの文庫②『熊野中辺路伝説(…

田辺聖子『女の目くじら』(1)

田辺聖子のエッセイには2020年11月20日付「田辺聖子『女の長風呂』(1)」に述べたような理由で少し触れてみました。価値観の古さには如何ともし難いものがありますが、私は実際そんな雰囲気の中で育って来たので、普通に懐かしく感じるばかりです。もちろ…

日本の民話『紀伊の民話』(14)

ここで「民話の手帖」からしばらく離れて、6月5日付(11)に取り上げた「新修日本絵巻物全集/月報」と同時に、先月末に借りていた次の本の返却期限が迫って来たので、取り急ぎメモを取って置くこととする。――本を買わずに、コピーも取らずにやっていると、…

現代民話考 第二期 Ⅲ『ラジオ・テレビ局の笑いと怪談』(02)

①「ラジオ・テレビ局にまつわる笑いと怪談」(2) 昨日の続き。 ②③の「あとがき」は続いて、②388頁9行め~390頁2行め③440頁11行め~442頁7行め、著書の利用を許可してくれた放送関係者や、取材に応じ、情報を提供してくれた人たちへの謝辞が連ねてあります…

現代民話考 第二期 Ⅲ『ラジオ・テレビ局の笑いと怪談』(01)

① 現代民話考 その八「ラジオ・テレビ局にまつわる笑いと怪談」(日本民話の会編集「民話の手帖」第8号(第四巻第二号)56~109頁、一九八一年十月十日発行・定価 八八〇円・発行 日本民話の会・発売元 蒼海出版・208頁・A5判並製本) ② 現代民話考 第二期 …

松谷みよ子民話研究室「現代民話考」(02)

松谷みよ子民話研究室及び『現代民話考』の成立事情については断片的な記述を拾って見るばかりでしたが、その後、これまでその(主として物理的な)重さから敬遠していた『松谷みよ子の本』を見てみますと、やはりかなり詳しく、その辺りの事情が書いてあっ…

松谷みよ子民話研究室「現代民話考」(01)

2020年3月29日付「飯盒池(9)」の後半に述べたように、私は松谷みよ子『現代民話考』には幾つかの欠陥があり、読者から送られて来たアンケートの原文に遡って確認する必要があると、前々から思っておりました。 いえ、実は、直接、運動したこともあったの…

日本の民話『紀伊の民話』(13)

・松谷みよ子全エッセイ1『わたしの暦』 さて、返却期限が迫って来たので6月4日付(10)に書影を示した『松谷みよ子全エッセイ』を見直しておりましたら、それと明記していないのですが紀州採訪のことと思われる記述のあることに気付きました。 111~117頁…

日本の民話『紀伊の民話』(12)

さて、こうして松谷氏が同じ主題について書いた文章には種々変遷があることが分かって来ると、立風書房(及びちくま文庫)版『現代民話考』の基になった雑誌「民話の手帖」に連載された「現代民話考」を、どうしても見たくなるところです。しかしながら、5月…

日本の民話『紀伊の民話』(11)

昨日の続き。 ・松谷みよ子全エッセイ2『わたしの風土記』 149~233頁「Ⅱ わたしの風土記」には各地の民話を取り上げた29篇が纏めてあるがその23番め、198~201頁「天狗さまざま」は、末尾(201頁5行め)に下詰めでやや小さく「(一九七八・三「新修日本絵…

日本の民話『紀伊の民話』(10)

松谷みよ子は執筆機会の多い著述家であったので、同じ主題で色々な媒体に何度も、同じ材料を繰り返し使って書くようなことになっております*1。 ただ、その繰り返しになるとき、紙幅の都合により繁簡精粗の違いが生じるだけなら良いのですが、5月22日付(07…

日本の民話『紀伊の民話』(09)

・『松谷みよ子の本 第2巻 太郎の物語・民話系創作文学・全1冊』一九九四年十二月二十五日・第一刷発行・講談社・669頁・上製本(20.0×14.8cm)松谷みよ子の本 (第2巻) 太郎の物語・民話系創作文学作者:松谷 みよ子講談社Amazon 649~655頁、松谷みよ子「あと…

日本の民話『紀伊の民話』(08)

庭の梅の実も粗方落ちてしまった。昨日は1日勤務で帰りに高円寺に行ったりして、帰ってから拾う余裕がなかった。パソコンを立ち上げる気力もなかった。――4年振りの高円寺駅界隈は、変わっていないような、しかし何処となく違和感を感じさせる、妙な気分であ…

日本の民話『紀伊の民話』(07)

8日前の続き。今年は人手不足で勤務時間を増やされてしまい、出勤日も多くなって呑気にブログを書いていられなくなった。――毎日投稿するのを止めたのは、たまたま投稿出来なくなって継続記録(?)が途絶えたので、ならば別に毎日でなくても良いか、と思った…

日本の民話『紀伊の民話』(06)

前回の続き。 さて、この「栗山の医者どの」の話の完全版を、松谷氏は『民話の世界』の11年後、紀州の山間部で聞いてからだと26年ほど後に、前回書影を示した『現代民話考Ⅰ 河童・天狗・神かくし』に載せております。187~346頁、第二章「天 狗」、242頁12行め…

日本の民話『紀伊の民話』(5)

一昨日の続き。 私にはどうも、未刊に終ったり、計画通り刊行されなかった本について、どのくらい進捗していたのか、内容を知る手懸りがないか、探って見たくなる癖があって、『紀伊の民話』のことは2年半前に『戦後人形劇史の証言/――太郎座の記録――』を読…

日本の民話『紀伊の民話』(4)

昨日の続き。――過去の記事を確認してから書き始めたら文体が敬体になってしまった。そういう気分なのでそのままにして置く。 さて、昭和36年(1961)11月15~17日の「竜の子太郎」初演(砂防会館)時のパンフレットの松谷みよ子「作者の言葉」では、この「旗…

日本の民話『紀伊の民話』(3)

一昨日の続き。『戦後人形劇史の証言/――太郎座の記録――』「3「たつの子太郎」「うぐいす姫」のころ 一九六〇年――一九六三年」の章の〔資料〕には1箇所だけ、この『紀伊の民話』の準備に関する、具体的な記述がある。 132~140頁「太 郎 座/竜の子太郎初演…

日本の民話『紀伊の民話』(2)

昨日、松沢雅彦・笠井純・小林昭子の3人について「よく分からない」と書いてしまった。 『戦後人形劇史の証言/――太郎座の記録――』の各章は、さらに松谷みよ子に拠る概説、当時の〔資料〕翻刻、団員関係者の長めの〔手記〕と短い〔アンケートより〕から成る…

日本の民話『紀伊の民話』(1)

未来社『日本の民話』シリーズでは、日本の民話56『紀州の民話』が昭和50年(1975)に徳山静子 編で出ているが、当初、昭和35年(1960)に『紀伊の民話』の題で刊行されるはずであった。しかしこれは実現しなかった。 ――瀬川拓男・松谷みよ子夫妻は未来社の…

祖母の蔵書(188)吉屋信子③

初め4月10日付(187)の「吉屋信子②」に「5月1日追加」と註記して加筆していたのだが、AJBCについて調べたりして長くなったので独立させることにした。 ・『ある女人像/―近代女流歌人伝―』昭和四十五年十月一日 AJBC版第一刷・頒価500円・新潮社(頒布…

飯盒池(11)

・日本の民話10『秋田の民話』一九五八年 七 月二〇日 第一刷発行・一九七八年一二月二〇日 第一七刷発行・定価一二〇〇円・未来社・308頁・A5判上製本秋田の民話 (1958年) (日本の民話〈第10〉)Amazon 本書には2020年3月13日付「日本の民話1『信濃の民話』…

道了堂(132)

Wikipedia 英語版に「Doryodo Ruins」が取り上げられていることを知った。「List of reportedly haunted locations in Japan」項にはまづ「Tokyo」の7箇所を挙げるが、その7つめが、 Doryodo Ruins Two bodies were allegedly found on the site, a body of …

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(194)

・朝里樹『山の怪異大事典』(2) 前回「出し過ぎ」と批判しましたが、本書も取り上げている怪異や妖怪などは出世作の『日本現代怪異事典』に出しているものと重なって来るだろうし、本書の「構成」が「地方ごとになって」いると云うのも、同時期に刊行が始…