瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(129)

・杉村顕道の家系(2) 杉村顕(1904.5.26~1999.6.11)と杉村惇(1907.9.7~2001.8.13)は生歿年月日も判明している。 いや、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』435~455頁、杉村顕道の次女・杉村翠の談話「父・顕道を語る」には、歿年月日は4…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(128)

・杉村顕道の家系(1) 一昨日、9月27日付「青木純二『山の傳説』(03)」に示した、丸山政也・一銀海生『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』の典拠を拾う作業として、昨日の記事の末尾に述べたように、田中貢太郎『日本怪談実話〈全〉』(河出書房新社…

田中貢太郎『新怪談集(実話篇)』(01)

・『日本怪談実話〈全〉』 日本怪談実話―全 (1971年)作者: 田中貢太郎出版社/メーカー: 桃源社発売日: 1971メディア: ?この商品を含むブログを見る日本怪談実話〈全〉作者: 田中貢太郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/10/25メディア: 単行本この…

青木純二『山の傳説』(03)

・丸山政也・一銀海生『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』(2) 昨日の続きで、文献に拠った「民話」に相当すると思われるものについて纏めて置こう。 巻末「参考文献・出典・初出・引用」に載る文献のうち、参照出来たものは以下の通り(初刊順)。青…

青木純二『山の傳説』(02)

本書は忘れられ掛けた書物なのだけれども、22年前には覆刻版が刊行され、さらに11年前には新字現代仮名遣いで復刊された。しかしながら、幾つかの話が、出処に疑念がある旨で(!)問題にされている他は、余り知られているとは言いがたい。しかも復刊の版元…

青木純二『山の傳説』(01)

本書の諸版については、8月11日付(098)に挙げて置いた。 今回、初版(丁未出版社)と覆刻版(大空社)を並べることが出来たのでメモして置く。 ともに上製本、但し私の見た初版は図書館で新しい表紙にて製本し直されている。覆刻版は『柳田國男の本棚』シ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(127)

・『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』(3) 昨日の続きで「二十二 招かれざる客 (北安曇郡)」の、丸山政也のコメントの残りを見て置こう。99頁10行め~100頁(5行め)、 もっともこの時代は、こういった怪談話は口伝え、いわば口承文芸的に広まった…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(126)

・『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』(2) 昨日の続き。 巻末の「参考文献・出典・初出・引用」10~15点め、 『信州の民話伝説集成 北信編』高橋忠治著 一草舎 『信州の民話伝説集成 中信編』はまみつを著 一草舎 『信州の民話伝説集成 東信編』和田…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(125)

この春、ブログでコツコツやっているだけでは、なかなか認知してもらえないらしいことを思い知ったので、4月から告知用に Twitter を始めたのだが、Twitter の仕組みや Tweet 閲覧者の行動が分かって来るに連れて、やはり殆ど効果がないことを実感している。…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(124)

・杉村顯『信州百物語』の評価(5) 繰り返しになるが、本書は編纂物であって、オリジナルな内容は殆ど含んでいない。 このような「伝説集」は、大正期にも多く編纂され、現代にもその流れは続いている。「伝説」には著者がいない(はずである)。だから自…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(123)

昨日の続き。 ・杉村顯『信州百物語』の評価(4) 但し『信州の口碑と伝説』や『信州百物語』の「小説仕立て」の話は、「近刊豫告」にあったように杉村氏の「流麗伸達の行筆」が生み出したものではなく、青木純二『山の傳説』や、藤澤衞彦編著、日本傳説叢…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(122)

・杉村顯『信州百物語』の評価(3) 9月15日付(118)の続き。 前回(昨日)も問題にしたが、② 著者が判明したことも、本書が復活を遂げる(?)に与って大いに力があったと思われる。 作者も成立事情も分からぬまま本書を読んだ場合、「怪奇」でないただの…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(121)

・堤邦彦「「幽霊」の古層」(6) 昨日の続きで、堤邦彦・橋本章彦 編『異界百夜語り』60~61頁、堤邦彦執筆の26話め「お二人さま?亡霊と旅する男」を見て置こう。冒頭、60頁2~6行め、 逃亡する殺人者の背にしがみ付く血だらけの女。そして他人の目に幻視…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(120)

・堤邦彦「「幽霊」の古層」(5) 昨日の続き。 さて、堤氏が「蓮華温泉の怪話」に注目したのは何時からなのか、或いは「「幽霊」の古層」以前の論及があったかも知れないと思せるのは、次のコラム集の存在である。 堤邦彦・橋本章彦 編『異界百夜語り』平…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(119)

・堤邦彦「「幽霊」の古層」(4) 江戸時代の仏教説話が専門で怪談に関する研究も多い堤邦彦(1953生)は、「蓮華温泉の怪話」が昭和9年(1934)の『怪奇伝説 信州百物語』に掲載されていることについて、2018年8月29日付(46)に引いたように「昭和初期の…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(118)

・杉村顯『信州百物語』の評価(2) 繰り返しになるが、――結論を言うと、本書は編集に時間を掛けていない、やや安易に編纂された伝説集であった。 それが最近、やや名が知られるようになったのには、次の4つの要因が考えられる。 ① 岡本綺堂「木曾の旅人」…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(117)

・杉村顯『信州百物語』の評価(1) 確認した典拠から容易に推測されるように、本書も8月24日付「杉村顯『信州の口碑と傳説』(3)」に述べたような編纂物である。前回述べたように、転居先の樺太廳豐原支廳豐原郡豐原町で、十分に資料を揃えられない状態…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(116)

・『信州百物語』の成立(4) 9月8日付(111)の続き。 9月6日付(109)に指摘したように、『信州の口碑と傳説』巻末「近刊豫告」の「内容紹介」と、本書の内容は相当な齟齬を見せる。 以下、推測になるが――『信州の口碑と傳説』刊行時には「内容紹介」にあ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(115)

・北原尚彦所蔵の『信州百物語』初版(4) そして2010年4月5日にアップされた(2010年4月5日付)北原尚彦「SF奇書天外REACT【第2回】科学教育者が戦後初期に書いた『二十一世紀の秘密 ニュートピアの巻』(1/2)[2010年4月]」は、本題に入る前に…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(114)

・北原尚彦所蔵の『信州百物語』初版(3)*1 一昨日からの続き。 ここまで、なかなか北原氏の初版に話が及ばなかったが、実は北原氏は初出「SF奇書天外REACT」の初稿段階では、初版を持っていなかったのである。 すなわち、単行本『SF奇書コレクシ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(113)

・北原尚彦所蔵の『信州百物語』初版(2)*1 昨日の続きで、杉村氏の著書紹介のところから見て置こう。単行本15頁1~3行め、初出は数字が算用数字全角でルビなし。 著書は他に『日本名醫傳*2』(擁光廬/一九五三年)など。杉村顕名義では『信州の口碑と伝説…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(112)

・北原尚彦所蔵の『信州百物語』初版(1)*1 さて、昨日引いた杉村氏の次女・杉村翠の談話の中に、北原尚彦が初版を持っていることが「今回の復刊でわかった」としているが、そもそもは無関係な動きであった。 すなわち、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 …

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(111)

・『信州百物語』の成立(3) 一昨日からの続きで、杉村氏の次女・杉村翠の談話から、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』の「編集過程」での「エピソード」の2つめを見て置こう。442頁上段11~20行め、 更に今回の復刊でわかったことがあります…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(110)

・『信州百物語』の成立(2) 昨日の続きで、杉村氏の次女・杉村翠の談話から、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』の「編集過程」での「エピソード」を見て置こう。441頁下段17行め~442頁上段10行め、 ‥‥。私/たち家族も、この本が今どのよう…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(109)

・『信州百物語』の成立(1) 9月2日付(107)の続き。当初「・『信州百物語』の典拠(3)」と題するつもりだったが、既に知られている本書の執筆出版過程に、今回私が明らかにした典拠の問題を絡めて説明した方が良さそうなので、標記の見出しに改めて説…

吉行淳之介『恐怖対談』(5)

・新潮文庫2676(1) 二刷と四刷と七刷を比較して見た。 カバー表紙は一致。 カバー裏表紙は二刷と四刷は一致。右上に明朝体横組み11行(1行16字)の紹介文があり、その上下に横線があるのは七刷も同じだが、2本めの横線の下、中央に二刷と四刷は葡萄マーク…

杉村顕道の著書(1)

・杉村顕道『増補 近代名医伝』昭和三十三年九月二十日印刷・昭和三十三年十月 一 日発行・定価 二八〇 円・槐書院・374頁・B6判並製本 「増補」は角書。 見返しの遊紙、扉、吉田富三「序」1頁(頁付なし)「昭和三十三年九月上浣」付で裏は白紙。武藤完雄「…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(108)

・杉村顯『信州百物語/信濃怪奇傳説集』の諸本(1) 当ブログでは諸本について記述することが多いのですが、好きでやっているのではなくて、どの本に拠ったかで違いが生じてしまうことがあるから念のため、仕方なくやっているのです。古書を蒐集する経済的…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(107)

・『信州百物語』の典拠(2)日本傳説叢書『信濃の卷』と『松代町史』下卷 昨日の続き。『信州百物語』の各話の題と頁・行は、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』に拠っている。国立国会図書館デジタルコレクションの初版もしくは新版に拠るべ…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(106)

・『信州百物語』の典拠(1)日本傳説叢書『信濃の卷』 昨日まで眺めて来たように、杉村顕『信州百物語』及びその姉妹篇『信州の口碑と傳説』には、青木純二『山の傳説 日本アルプス篇』から、特に日本アルプスに関連する地域について、相当数の話を採って…