瑣事加減

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2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

村松定孝「私と山梨の近代作家」

ここで村松氏と中村星湖一家との関連を見ていくつもりで、村松氏の『言葉の影像 鏡花五十年』の「卓話」の章(187〜245頁)に収められた「山梨ゆかりの作家――樋口一葉、中村星湖、深沢七郎」(213〜222頁)を参照して、ふと巻末の「収録随筆初出一覧」に 山…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(09)

中村星湖の年譜で、図書館等で参照しやすいのは『明治文學全集』72(一九六九年五月二十五日初版第一刷發行・一九八九年二月二十日初版第五刷發行・筑摩書房・429頁)所収の榎本隆司編の年譜(409〜416頁上)でしょう。それから、紅野敏郎編『精選中村星湖集…

高木敏雄『日本傳説集』(02)

初版の扉は「高木敏雄著/日本傳説集/分類總目次解説索引附」だったが、武藏野書院の三版(恐らく再版も)は違っている。そして武藏野書院版には初版にない著者の遺影を掲げた口絵が扉の次にある(保護用の硫酸紙もあり)が、その裏に「高木敏雄氏小傳」が…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(08)

・月光にうかぶ海軍少尉の霊(64〜82頁) これは「死に直面したむすこさんが、ご両親や兄弟をしたって、霊となってあらわれた話」(64頁)で、第1話の「生き霊の怪」と同じパターンです。 この一家は、 山梨県の河口湖の近くに、いまでも元気におくらしにな…

高木敏雄『日本傳説集』(01)

高木敏雄『日本伝説集』が最近ちくま学芸文庫に収録された。 そこで、ぼちぼちと調べている。報告者の中にはその後、名前を見かける人もいるし、発表過程なども、あまり問題にされていないのではないか。詳細は追々報告するつもりなのだが、本になる前に順次…

「改版」について

「改版」というカテゴリで記事を書いている。今後、こういう類の記事が多くなるはずである。その理由について、少々説明しておきたい。最近は同じ版をそのまま*1増刷しなくなったというニュースを見たことがある。確かに、図書館の新刊の棚に並んだ中には、…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(09)

「鳩よ!」の対談(1月22日付(07))で、加門七海は「蓮華温泉の怪話」を「平成にまで生き延びる怪談」と呼んでいた。しかし、話は明治30年(1897)9月(推定)の事件で、そのときに解決しているはずだから「出るんだよね」ではなく「出た」ことがある、の…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(07)

・本を読みにくる亡霊(51〜63頁) この話については、笹川吉晴のブログ「笹川吉晴の徒然怪奇帖」2010年6月15日付「美妙な怪談」に、話の内容とその疑問点とが整理され、笹川氏は山田美妙(1868〜1910)の孫で、幽霊となって現れたという美妙の長男旭彦の子…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(08)

話例・3のB 殺された人からの呼びかけ 白馬岳の山の中に一軒だけ旅館があった。ある吹雪の夜中にドンドン、ドンドンと戸を叩く人がいるので、奥さんが出てみると「道に迷ったから泊めて下さい」と一人の男の人が立っている。「いいですよ」と言おうとした…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(07)

「影②」を先にするべきなのだが、肝心の「影」初出誌の複写が出て来ない。文章はあるのだが『新編綺堂怪奇名作選』刊行前に書いたものなので、照合しての改訂が必要である。そこで、「影」については後回しにすることにして、口承の問題の方を先に片付けてお…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(06)

白川喜代次というのは実在の人物でした。1月18日付・19日付・20日付の3回に分けて『白川喜代次遺作集』を紹介してみましたが、村松氏はその編纂委員の末席に連なっています。『遺作集』には自殺のことは見えませんが、却って何の記述もないことが、その疑い…

『白川喜代次遺作集』(3)

「IIII 隨筆」は目次には「秋 思…………………(二四〇)/ 他三篇」とあり本文239頁(頁付なし)は中扉で「4 隨 筆」とあります。目次に挙がっている「秋思」240〜242頁3と次の「希望」242頁4〜244頁は「略歴」には記載がありません*1。 245〜247頁7「学生劇斷想…

『白川喜代次遺作集』(2)

目次には「白川喜代次遺作集目次」とあって、以下、I 戯曲・II 小説・III 詩・IIII 隨筆と整理されています(原本ではローマ数字はそれぞれ1文字)。以下、順に、巻末の「白川喜代次略歴」(以下「略歴」)を参照しつつ見ていきましょう。 I 戯曲 挿 話………………

『白川喜代次遺作集』(1)

この本のことはこれまで殆ど注意されていないらしい。在籍していた早稲田にも所蔵されていないし、CiNiiでもNACSISでもヒットしない。私は国会図書館の近代デジタルライブラリー(館内限定公開)で通覧して、その概要をあらあら筆写した。しかしながら、当時…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(05)

1月7日付(02)で、自伝小説『あぢさゐ供養頌』と随筆集『言葉の影像(かげ)』を資料として、と書いたが、これについてもう少し述べておくべきであろう。『言葉の影像』は随筆集なので、記憶違いはあるかも知れないが、意図して虚構を書くようなことはなか…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(06) 影①

1月4日付(3)に引いた『岡本綺堂読物選集』④異妖編 上巻の岡本経一「あとがき」に、「晩年の昭和十一年三月、これを「影」として戯曲化したが、戦後の二十二年十月、六代目菊五郎と花柳章太郎の顔合せに初めて上演された。」とあった。 この「木曾の旅人」…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(04)

・生き霊の怪――先生をしたう少女の生き霊(16〜39頁) さて、1話目です。 まず「生き霊は悲運のしるし」との節があって、『雨月物語』の「菊花のちぎり」と、泉鏡花の「白鷺」を、守れそうにない会う約束を守るために自殺して「生き霊」となって現れた例とし…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(03)導入

次に、装丁について触れたいのですが、どうもカバーが複数種あるらしく、確認のため後回しにしようと思っています。 ・いまでもゆうれいはいる!(6〜15頁) 口絵に続いて扉(1頁)目次(2〜5頁、ここまで頁付なし)があります。これに続いて、「いまでもゆ…

図書館派の生活

当ブログを始めて半月を経て、今のところ種が尽きる気配はない。いくらでも書くべきことは(読むべきかどうかはともかく)ある。いずれ怪談が占める割合が高くなる時期が来るだろうとは思ったが、初めからそうするつもりはなかったのが、早速こんな風になっ…

画博堂の怪談会(1)

田中河内介の怪談が語られ(なかっ)た画博堂の怪談会については、東雅夫編『文藝怪談実話(ちくま文庫・文豪怪談傑作選・特別篇)』(二〇〇八年七月十日第一刷発行・定価900円・筑摩書房・394頁*1)に「史上最恐の怪談実話!?――田中河内介異聞」131〜201頁…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(05)

ウォルター・ウェストンWalter Weston(1861〜1940)は、1896年(明治29年)に刊行した『日本アルプスの登山と探検(Mountaineering and Exploration in the Japanese Alps)』によって「日本アルプス」を有名にしたが、その第11章を「日本アルプス北部の最…

岡本綺堂『飛騨の怪談』(2)

1頁13行で1行31字で組まれています。頁ごとに上部中央に横書きで「談怪の騨飛」と書名が下線の上に入り、そして奇数頁の左下、偶数頁の右下に、算用数字で頁付が、アッパーライン付で入っています。 章節の番号は(一)のようにゴチック体で示されていますが…

岡本綺堂『飛騨の怪談』(1)

岡本綺堂『飛騨の怪談』については、1月4日付で言及した『岡本綺堂読物選集』④異妖編 上巻(昭和44年5月20日発行・定価八五〇円・456頁)の岡本経一「あとがき」を読んで以来気になっていましたが、国会図書館はもちろん、日本近代文学館・神奈川近代文学館…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(04)

ここで、加門七海の指摘を確認しておこう。 『異妖の怪談集(岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二)』(1999年7月2日第1刷・定価1600円・原書房・249頁)の「解説」である。目次、本文(7〜242頁。「木曽の旅人」65〜83頁)加門七海「解説」(243〜249頁)そして「初…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(02)著者

Googleで「わたしは幽霊を見た」を検索すると、関連動画として、本書に触れたネットラジオ放送がyoutubeに上がっていた。 まさに、小学生時代に『わたしは幽霊を見た』の衝撃を受けた世代の証言である。ただ、原本を手許に置かずに話しているので中岡俊哉の…

村松定孝『わたしは幽霊を見た』考証(01)口絵

まだ「木曾の旅人」の話を続ける必要があるのですが、先へ進めるためにはもう少々調べてからにするべきのようです。そこで、また旧稿を引っ張り出して、しばらくお茶を濁しておきます。文体が敬体になっているのは、書いたときの気分の反映です。 * * * …

森鴎外『雁』の文庫本(1)

1月1日付「森鴎外『雁』の年齢など」で、「新潮文庫や岩波文庫の注には何故か指摘がない」と書いた。ところが、新潮文庫は3年前の改版で、「大学医学部が下谷にある時」に「東大医学部の前身である医学校は下谷和泉橋通りにあった。明治九(一八七六)年十一…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(03)

私が初めて「木曾の旅人」を読んだのは、その後浪人時代に予備校の近くの図書館で『岡本綺堂読物選集』全8巻の「④異妖編 上巻」(昭和44年5月20日発行・定価八五〇円・456頁)を手にして、であった。版元は青蛙房、岡本綺堂の養嗣子岡本経一の経営である。 …

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(02)

さて、「蓮華温泉の怪話」と「木曾の旅人」の関係について、話を進めるべきなのだが、ここで「木曾の旅人」を知ったそもそものきっかけについて、述べて置こうと思う。 * * * * * * * * * * 中学高校の頃、私は父の書棚を漁るようになっていた。本…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(01)

昨日投稿した程度のものであれば、掃いて捨てる程の材料があるつもりだったが、早速行き詰まっている。材料はあってもそのままでは躰を成さない訳で、実はどれもこれも詰め切れずに放置したものばかりなのであった。 そこで、本当に役に立ちそうもないものを…