瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

美術史

竹中労の前半生(08)

・竹中英太郎の住所① 昨日取り上げた昭和七年版『現代日本名士録』に、竹中英太郎の住所が「中野町西町一五」とあった。竹中英太郎が中野に住んでいたことは、従来知られていなかった(と思う)、 そこで、この頃の竹中英太郎の住所を、年鑑類で確認して見よ…

竹中労の前半生(07)

竹中労の生年、また前半生を辿るには父親の竹中英太郎の伝記を明らかにする必要がある。幸い、国立国会図書館デジタルコレクションが刷新されたことで、従来気付かれていなかった資料に容易に逢着し得るようになった。 ・昭和七年版『現代日本名士録』昭和七…

竹中労の前半生(06)

・ 備仲臣道『美は乱調にあり、生は無頼にあり』(2) 昨日引用した、鈴木義昭『夢を吐く絵師 竹中英太郎』の、鈴木氏と竹中英太郎の次女で湯村の杜・竹中英太郎記念館の竹中(金子)紫館長の対談で、鈴木氏には竹中労の描いた「フィクション」の竹中英太郎…

竹中労の前半生(05)

昨日取り上げた備仲臣道『美は乱調にあり、生は無頼にあり』については、194~196頁「参考文献」と各章末の「注」、そして197~208頁、備仲臣道編「竹中英太郎年譜」にまだ触れておりませんが、これは他の2冊の竹中英太郎の伝記と比較しながら取り上げること…

竹中労の前半生(04)

2006年は竹中英太郎生誕100年になるので、伝記が2点刊行されている。順序として、先に刊行されたものから見て置こう。美は乱調にあり、生は無頼にあり―幻の画家・竹中英太郎の生涯作者:備仲 臣道批評社Amazon・ 備仲臣道『美は乱調にあり、生は無頼にあり 幻…

竹中労の前半生(02)

さて、ある人物の経歴、特に生年(月日)に関わる前半生を考証するためには、その家族の検討も不可欠となります。 竹中氏の場合、その父親が竹中英太郎(1906.12.18~1988.4.8)と云う、昭和初期の探偵小説の「幻の挿絵画家」として知られる(?)人物なので…

赤いマント(357)

水島爾保布(1884.12.8~1958.12.30)のことは、次の文庫本で知っているだけだった。人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11)作者:谷崎 潤一郎中央公論新社Amazon だから随筆家であったことも知らなかったのだが、昭和6年(1931)2月15日創刊、昭和20年(194…

赤いマント(339)

昨日まで先崎昭雄『昭和初期情念史』を取り上げたのは、例えば Amazon 詳細ページに引かれる、データベースの内容紹介が検索で引っ掛かったからであった。 内容(「BOOK」データベースより) 女性史と児童史を探る。お葉さん阿部定さん黒ヒョウ赤マント千人…

先崎昭雄『昭和初期情念史』(3)

家族に関する記述は、特に後半は流し読みになってしまったので漏れがあるかも知れない。住所も同様で、精読した訳ではないから漏れがあろう。ただ、今後本書の内容を活用する際の指標として、拵えて置きたいのである。 ・河本(先崎)家の住所 52頁15行め「 …

道了堂(105)

・ふるさと板木編集委員会『ふるさと板木』(1)石版画① 明治26年(1893)の道了堂を細かく描写した石版画「武藏國南多摩郡由木村鑓水/大塚山道了堂境内之圖」については、3月21日付(015)以来度々言及して来た。色々な本に掲載されているが、目の粗い版…

道了堂(96)

・「八王子の絹の道点描」(3) それでは絵葉書の裏面、絵を眺めて行こう。鉛筆のスケッチで、彩色されていない。絵と同じく黒もしくは濃い灰色で楷書体のキャプションを図中に配する。赤の白文方印「輝」のみ色刷。用紙はクリーム色。 番号は打たれていな…

全国歴史散歩シリーズ13『東京都の歴史散歩』(5)

②新書判(3) 昨日の続きで頁付のない附録に当たる部分及び奥付等について見て置こう。1版1刷の上中下3冊揃と、『上』1版10刷『中』1版8刷『下』1版7刷の比較。 附録部分は4頁(頁付なし)、1~3頁めは日本史の教科書の附録みたいな参考図で1版1刷…

成瀬昌示 編『風の盆おわら案内記』(5)

題に(1)まで遡って「 編」を補った。 ・新版と定本の比較③ 本書は新潮社の「とんぼの本」や、河出書房新社の「ふくろうの本」や「らんぷの本」と同じ作りのビジュアル概説書である。 前回引いた版元HPの紹介文にあったようにオールカラーではない。カラー…

白馬岳の雪女(094)

・石沢清『北アルプス白馬ものがたり』(4) 昨日の続き。もっと簡単に見て行くつもりだったのだが遭難記事について少々細かくなってしまった。 3 白馬を愛した人々 【1】お花畑への埋骨の遺書 大阪の染色工芸家「悟道さん」と、蕨平部落の山案内人・松沢…

白馬岳の雪女(091)

・石沢清『北アルプス白馬ものがたり』昭和47年12月25日 初版発行・昭和48年4月1日 3版・¥580・信濃路・285+6頁・B6判並製本北アルプス白馬ものがたり (1974年)作者:石沢 清信濃路 東京 農山漁村文化協会Amazon 発行所が社団法人信濃路(長野市)で、発…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(177)

・杉村顯『信州百物語』の剽窃本(3) 昨日の続きで、野田悠『信濃奇談夜話』の細目について、「←」で典拠である杉村顯『信州百物語』の話を、仮に附した番号と叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』に収録される本文(281~380頁)の位置を添えて…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(176)

・杉村顯『信州百物語』の剽窃本(2) 昨日の続き。 ・野田悠『信濃奇談夜話』昭和六十二年八月六日発行・定価一、二〇〇円・郷土出版社・135頁・四六判並製本 カバー表紙には、上部に八角形の子持枠(3.3×10.8cm)があって、太線(外郭)の内側は白、細線(…

中島悦次『傳説の誕生』(2)

昨日の補足。 中島氏の祖父と父だが、オークションサイトの説明に以下のようにあった。 森廣陵 もり・こうりょう。(明治七・1874~大正十・1921)は名廉、本姓中島、前橋の南宗画家、霞巌の子。寺崎廣業の門人。 出典を示していないが美術関係の人名事典か…

中島悦次『傳説の誕生』(1)

遠田氏の意見には承服し兼ねる点が多々あるものの、信越にハーン張りの「雪女」が定着し、多摩には定着しなかったのは事実である。当時の気候からして多摩でも「雪女」に語られていた状況があり得た、とする主張も間々目にするが、雪の殆ど積もらない地域に…

日本の民話1『信濃の民話』(10)

ここで「信濃の民話」編集委員会について改めて見て置こう。 瀬川拓男・松谷みよ子夫婦は編者で、再話を担当している。 瀬川氏は【1】及び【9】【17】【24】【25】【27】【33】【46】の8話を担当、そうすると松谷氏は「わらべうた」を除く50話のうち42話を担…

日本の民話1『信濃の民話』(4)

昨日の続きで、2019年12月20日付(1)に挙げた諸本のうち①上製本(初版)第一刷にて、内容を見て置こう。排列であるが「はしがき」の昨日引用した箇所に続いて、2頁16~18行め、 次に地域のわけ方については、長野県は、もともと、人文地理的にも自然地理的…

白馬岳の雪女(15)

・辺見じゅん「十六人谷」(7) 白馬岳の雪女に関連する話題として、しばらく白馬岳の雪女そっちのけで「十六人谷」を取り上げて来た。 ここで一応の纏めをして置くと、辺見じゅん「十六人谷」は、白馬岳――黒薙川の柳又谷の源流部――の「雪女」を抱き合わせ…

上田満男『わたしの北海道』(2)

昨日の続き。 続いて「第二部 開拓の歴史」の細目を見て行くつもりだったが、それは秋以降、余裕があるときに果たすこととしたい。 さて、本書に関しては、ネット上には古書店の在庫状況くらいしか情報がない。元の連載についても、何せ北海道版の、40年以上…

駒村吉重『君は隅田川に消えたのか』(21)

・吉田正三について(6) 昨日引用した東京新聞社社会部 編『名人 〈町の伝統に生きる人たち〉』106頁に「好事家」からの「注文」のことが見えていましたが、まさにそうした需要を満たす吉田氏の画集『千住の吉田政造筆/東京の絵馬』があります。2月上旬に…

駒村吉重『君は隅田川に消えたのか』(20)

・吉田正三について(5) 一昨日からの続きで、東京新聞社社会部 編『名人 〈町の伝統に生きる人たち〉』105頁16行め~106頁15行めを見て置きましょう。 ‥‥。むか/しは、父親の描いた絵馬を、千住から/池袋あたりまで持っていった。【105】 「雑司ケ谷の…

駒村吉重『君は隅田川に消えたのか』(19)

・吉田正三について(4) 昨日の続きで、東京新聞社社会部 編『名人 〈町の伝統に生きる人たち〉』104頁1行め~105頁15行めを見て置きましょう。 絵馬は、信心の厚い人が豊作や商売繁昌、病気の全快を祈って神仏に奉納する。たとえば、農業の/神である稲荷…

駒村吉重『君は隅田川に消えたのか』(18)

・吉田正三について(3) 本書は Amazon 等のレビューや、最近でも Twitter の投稿にて、かなり高い評価を得ているようですが、私の評価は否定的なものとなっております。――当ブログではこれまで、駒村氏が当時の都市交通網を考慮に入れていないことを指摘…

杉村恒『明治を伝えた手』(2)

当初、4月12日付(1)に続けて「昨日の続き」として投稿するつもりで準備していたのだが、5月13日付「東京新聞社社会部編『名人〈町の伝統に生きる人たち〉』(1)」に述べたように本書の6年前に類書が刊行されていたことを知って、そちらを確認してからに…

東京新聞社社会部編『名人〈町の伝統に生きる人たち〉』(2)

昨日の続き。 経年劣化もあってかクリーム色っぽく見えるやや厚手の見返し(遊紙)があって、1頁(頁付なし)扉には角の丸い太線の枠(14.4×7.5cm)に横組みで、上部に明朝体で大きく標題「名 人」上にやや小さく「〈町の伝統に生きる人たち〉」下に「東京新…

伊藤正一『黒部の山賊』(3)

昨日の続きで①初版、②新版、③定本、④文庫版の関係について。 ・カバー表紙の版画 ①初版は未見だが、前回述べたように本文の図版を元の写真によって新しいものに差し替えた他は②新版と同じであると云う前提で進めて行く。 カバー表紙、①②④は同じ版画を装画に…