瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

加賀乙彦『永遠の都』(1)

・新潮文庫5907『永遠の都1 夏の海辺』平成九年五月一日発行・定価552円・407頁永遠の都〈1〉夏の海辺 (新潮文庫)作者: 加賀乙彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/04/25メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (4件) を見る 6頁(頁付なし)…

川端康成『古都』(1)

私は名作は読まない主義(?)だったので、川端康成(1899.6.14〜1972.4.16)の小説も、現代文の教科書に載っていた、すなわち都合の悪い箇所が削除された「伊豆の踊子」(授業で取り上げて読まされた訳ではない)と新潮文庫213『花のワルツ』(昭和二十六年…

北杜夫『楡家の人びと』(09)

この叔母の役割であるが、さらに後の平成18年(2006)1月に「日本経済新聞」に連載された「私の履歴書」を中心に纏めた『どくとるマンボウ回想記』(日本経済新聞出版社)には、より明確に記述されている。 ・単行本(二〇〇七年一月二十四日第一刷・定価150…

北杜夫『楡家の人びと』(08)

7月13日付(07)の続きで、「北杜夫全集月報 6」に載る「創作余話(6)」の冒頭部を引いてみよう。1頁上段3〜8行め、 「楡家の人びと」は「幽霊」と共に、私の純文学長篇/の中で自分自身で許せる物と信じているものだ。 この作品の成立過程は、もとよりト…

中島京子『小さいおうち』(41)

・瑣事少々(1) 一番問題だと思うところを書くと言いつつ、しばらくそうでないところばかり書いて来た。 まだちょこちょこと気になるところがあるので、肝腎なところを済ませてしまうと、詰まらない、別にそこがどうかしたところで大勢に影響を及ぼさない…

Robert Louis Stevenson “The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde”(2)

・新潮文庫1759『ジーキル博士とハイド氏』(2) 7月24日付(1)の続き*1。 ①四十二刷と②四十六刷・四十七刷のカバー表紙・表紙折返し・裏表紙折返しは一致。背表紙は最下部、四十二刷「200」が四十六刷・四十七刷では太い下線が附加されている*2。裏表紙…

水村美苗『本格小説』(4)

新潮文庫の二刷(平成十七年十二月一日発行・平成二十二年十一月十五日二刷)を見た。定価と頁数は初刷に同じ。 カバー裏表紙折返しは上下ともこれまで見たものと違っていて、上部には右上隅に水色の新潮文庫のマーク(図書館蔵書では切除されていることが多…

Robert Louis Stevenson “The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde”(1)

・新潮文庫1759『ジーキル博士とハイド氏』(1) ①昭和四十二年二月二十八日発行(120頁) ・昭和六十三年二月二十日四十二刷 定価200円 ②平成元年六月十日四十五刷改版(130頁) ・平成元年七月二十五日四十六刷 定価194円 ・平成元年九月二十日四十七刷 …

塩嘗地蔵(051)

・歴史街道歩きの会『歴史探訪ガイド 首都圏 旧街道を歩く』2010年5月30日(第1版・第1刷発行)・定価1600円・メイツ出版・128頁・A5判並製本首都圏旧街道を歩く作者: 歴史街道歩きの会出版社/メーカー: メイツ出版発売日: 2010/05/30メディア: 単行本この商品…

中島京子『小さいおうち』(40)

・引用の用字・仮名遣い(2) 最終章はタキの妹の孫・健史の視点から書かれているが、登場人物の健史が書いたのではないことは、7月2日付(29)までくどくどと説明を試みた通りである。 しかし引用の用字はタキのノートに準じているらしく、最終章4の冒頭…

中島京子『小さいおうち』(39)

前回7月15日付(38)に疑いとして示して置いた、著者が同時期を実際に生きた人間が書いた『楡家の人びと』のような同じ時期を扱った作品を全く読んでいないのかどうか、それから「都新聞」を調べなかったのか、については、そう感ぜられるというばかりで、――…

織田作之助「續夫婦善哉」(6)

昨日の続き。 それでは『完全版』に収録されている白黒写真で、「続夫婦善哉」の直筆原稿を眺めて見よう。「61」枚め(一六一頁)6行め〜「64」枚め(一六四頁)6行め、抹消してある箇所は■で示した。その他、後から書き入れた箇所等には注を附して置いた。…

織田作之助「續夫婦善哉」(5)

それでは、本文について私が問題にしたい箇所の、まず完全版の翻刻を示して置こう。八二頁2行め〜八三頁3行め、 ‥‥、いよいよ家を借り/るという段取の最中、大阪の金八から意外な手紙が来た。 金八と蝶子は北新地時代に同じ抱主*1のもとでひとつ釜の飯を食…

織田作之助「續夫婦善哉」(4)

戦前に書かれた作品の本文についてはいろいろと思うところがあるのだけれども、ここでつい数年前に発見された「續夫婦善哉」の本文作成について、『完全版』と岩波文庫版がどのような方針を採っているか、見て置こう。 『完全版』は奥付の前に、 一、「夫婦善…

織田作之助「續夫婦善哉」(3)

昨日の続き。 ・完全版(雄松堂出版/主婦の友社)四六判並製本夫婦善哉 完全版作者: 織田作之助出版社/メーカー: 主婦の友社発売日: 2013/07/03メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) を見る【初版】2013年8月10初版発行©・定価1200…

織田作之助「續夫婦善哉」(2)

5月20日付(1)の続き。 ・完全版(雄松堂出版)四六判上製本夫婦善哉 完全版作者: 織田作之助出版社/メーカー: 雄松堂出版発売日: 2007/10/01メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (19件) を見る『夫婦善哉 完全版』 【初版】二〇〇七年一…

中島京子『小さいおうち』(38)

著者の中島氏は2013年12月21日付「赤いマント(61)」に紹介した「楽天ブックス 著者インタビュー」の2010年8月5日「中島京子さん」に、「どんな資料を主に探されたのでしょう?」と問われて、 中島さん 構想を練り始めてから執筆にかかるまでに約2年ありま…

赤いマント(140)

さて、7月13日付「北杜夫『楡家の人びと』(07)」に引いた「創作余話」等にあるように、北氏は執筆に際して東京大学史料編纂所と国会図書館で、新聞を大正7年(1918)から「敗戦の年」まで調べたというのですが、それが「朝日新聞」と「都新聞」であった訳…

北杜夫『楡家の人びと』(07)

昨日の続きで『北杜夫全集』の月報に連載された「創作余話」を見て置こう。 ・北杜夫全集4『楡家の人びと』一九七七年二月二五日発行・一九八三年八月三〇日三刷・定価一三〇〇円・新潮社・582頁・四六判上製本。 「北杜夫全集月報 6」(昭和52年2月・新潮…

北杜夫『楡家の人びと』(06)

北杜夫(1927.5.1〜2011.10.24)は『楡家の人びと』執筆の準備について、たびたび述べている。私は北氏の著作を殆ど読んでいないので、まだ他にもあるかも知れないが、最晩年のエッセイ集から拾って見ることにする。 ・北杜夫『マンボウ 最後の大バクチ』新…

赤いマント(139)

中島京子『小さいおうち』の続き、として書き始めたのだけれども、全く登場しないままになったので標題を替えた。なお、「赤いマント」の記事は敬体で書いていたのだけれども、今回は常体で書き始めたのでそのままにして置く。 * * * * * * * * * …

中島京子『小さいおうち』(37)

そう思って本書を細かく見て行くと、やはりおかしなところが散見される。 まず、やっぱり時代設定が確認しづらいらしい。その最大の原因は第一章2の「すでに米寿を越え」である。 作家本人が混乱しているケースについて、当ブログでも過去に、2013年4月7日…

中島京子『小さいおうち』(36)

・直木賞の選評(1) こんなに長く本書について書き連ねるつもりはなかったのだけれども、私には、直木賞選評に、例えば浅田次郎(1951.12.13生)が、 中島京子氏の作品はそれぞれが個性的で、通読して飽きることがない。好奇心が旺盛でかつ書くことが好き…

中島京子『小さいおうち』(35)

・Wikipediaの説明について(3) 一昨日からの続きで「登場人物」の節の、残り3人について。平井の説明と重なるところがあるためか、玩具会社の社長は取り上げられていない。 健史(たけし) タキの大甥(妹の孫、甥の次男)。力仕事などタキにはできない生…

中島京子『小さいおうち』(34)

・Wikipediaの説明について(3)――主人公とヒロインの年齢(2)―― 昨日の続きで「登場人物」の節を確認して見る。 書き換えた方が良さそうだということなら、全文添削してしまいたい誘惑に駆られるのだが、そうなるとお前がWikipediaの項目を書き直せと言…

中島京子『小さいおうち』(33)

・Wikipediaの説明について(2) 一昨日の続きで「登場人物」の節を確認して見る。 布宮 タキ(ぬのみや タキ) 元女中。女中として培った家事の知恵などをまとめた書籍を出版し、好評を得る。編集者に2作目の執筆を勧められ、自身の回想録を出版できないか…

中島京子『小さいおうち』(32)

・時子の両親の疎開 昨日の続きで、恭一が北陸地方に暮らしている理由だが、最終章7、健史が訪問したときに本人が以下のように話している。単行本309頁12〜16行め・文庫版330頁11〜14行め*1、 ‥‥。彼は/一通り、話してくれた。たまたま友人宅に泊まりがけ…

中島京子『小さいおうち』(31)

・Wikipediaの説明について(1) 私の問題にしたい箇所は、「登場人物」についてはほぼ2013年10月25日に立項された当時の、「あらすじ」については2014年3月15日に加筆された当時のままで、その後殆ど修正されていない。特に、主要登場人物を並べて紹介した…

中島京子『小さいおうち』(30)

ここで6月25日付(22)の続きに戻って、と云って書き込まれている全ての歴史的事件について確認していくつもりはないので、今度はちょうどこの頃に登場する「板倉さん」板倉正治について、見て行くことにしよう。 ・板倉正治の年齢(1) 板倉さんが初登場す…

中島京子『小さいおうち』(29)

・最終章「小さいおうち」の構成(6) 要するに、平井時子の周辺にいた、生涯独身だった松岡睦子・板倉正治・布宮タキの3人は、「みんな」時子のことが「好きになっちゃ」ったらしいのだ。まぁ、そういうこともあるのだろう。映画で平井時子を演じた松たか…