小説の背景
さて、ある人物の経歴、特に生年(月日)に関わる前半生を考証するためには、その家族の検討も不可欠となります。 竹中氏の場合、その父親が竹中英太郎(1906.12.18~1988.4.8)と云う、昭和初期の探偵小説の「幻の挿絵画家」として知られる(?)人物なので…
昨日の続き。 ・年代順の整理 この連載は連想で繋いでいて、黒井氏の経歴を順を追って辿っていない。 そこで、2022年9月3日付「黒井千次『たまらん坂』(3)」に見た、講談社文芸文庫版『たまらん坂』241~250頁、篠崎美生子編「年譜」も参照しながら、年代…
・黒井千次『漂う/古い土地 新しい場所』印刷 二〇一三年八月一五日・発行 二〇一三年八月三〇日・定価1600円・毎日新聞社・175頁・四六判上製本漂う 古い土地 新しい場所作者:黒井 千次毎日新聞社Amazon 本書の由来は170~175頁「あとがき」に説明されてい…
昨日までで記念号と市販版を比較しつつ内容と企画・編集の経緯についてざっと確認を済ませた。今回は内容について1編を取り上げ、気になった瑣事を論って置くこととしたい。 500~573頁、人名編「武蔵野文化人名録」には、まづ500頁に坂詰秀一、すなわち武蔵…
③講談社文芸文庫(二〇〇八年七月一〇日第一刷発行・定価1300円・講談社・254頁)たまらん坂 武蔵野短篇集 (講談社文芸文庫)作者:黒井 千次講談社Amazon カバー表紙、副題は右上に小さく示す。カバー背表紙では標題の下に小さく添える。 カバー裏表紙、右側…
・西澤裕子『風の盆』昭和五十六年三月五日 第一刷発行・定価 一、三〇〇円・日本放送出版協会・274頁・四六判上製本 私は風の盆については殆ど知識がなかったので、高橋治『風の盆恋歌』に先行する文学作品と云うことで、1月14日付「成瀬昌示 編『風の盆おわ…
・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(11)「車夫の行方」 本作には執筆時期推定の手懸かりが全くない(と思う)。 84頁上段14行めに2行取りで「松尾芭蕉の手紙」と同じ「※」を打って、前後に分けてある。 物語は慶応四年(1868)五月十日、…
・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(10)「松尾芭蕉の手紙」② 昨日の続き。 50頁上段1~13行めは前置きで、以下、章分けは番号ではなく2行取りで中央にやや大きく「※」を打っている。以下、仮に【番号】を振りながらその位置を示し、それぞ…
・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(9)「松尾芭蕉の手紙」① 12月12日付(181)に引用した、杉村氏の次女・杉村翠の談話「父・顕道を語る」には、敗戦直後に刊行した小説本について「けれども、やはり筆で生活する夢はあったようです。」と…
・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(8)「伊達政宗の手紙」 さて、借り出した当日、駅や帰りの車中で土方正志「解説」や「底本一覧」を見ても各作品の執筆時期が説明されていなかったことから、その興味でまづ表題作を読み始めた。そして…
・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(5)樺太から仙台へ 昨日の続きで土方正志「◎解説◎杉村顕道の足跡」の気になったところをメモして置く。 ・476頁下段7行め「見い出され」は「見出され」。 ・484頁上段16行め「三遊亭可楽」は「三笑亭可…
・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(4)未収録作品について 12月9日付(178)から本書を取り上げているので(4)とした。 この他に、土方正志「解説 杉村顕道の足跡」の気になったところとしては、昨日の引用の続き、480頁下段9行め~482…
・杉村顕道の家系(7) 叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』488頁下段~492頁「付「金田一京助 杉村顕道未刊行和訳唐詩選序文」について」は、12月9日付(178)に引いたように「カメイ記念展示館」での杉村惇回顧展に際して設けられた「顕道コ…
・杉村顕道の家系(6) 昨日の続き。 私の杉村氏の著書『信州の口碑と傳説』及び『信州百物語』、そして「蓮華温泉の怪話」の検討結果は、一昨年の8月から10月に掛けて、Twitter に53回(!)にわたって「杉村顕道「蓮華温泉の怪話」の素性」と題して連投し…
・遠田勝『〈転生〉する物語』(37)「五」1節め③ 一昨日の続きで101頁7~9行め、『日本伝説傑作選』へのコメントを見て置こう。 6の「白馬の雪女」(『日本伝説傑作選』)は、松谷みよ子と同じく、村沢武夫の「雪女郎の正体」/を原拠とする、職業作家の手に…
・遠田勝『〈転生〉する物語』(35)「五」1節め① 「第一部 旅するモチーフ」=「小泉八雲と日本の民話――「雪女」を中心に」の最後の章は、100頁4行め~129頁「五 遠野への道」と題されている。その最後は1行分空けて129頁8行め、 こうして「雪女」は、遠野…
さて、本書9章め「傳説雪女」については、「あとがき」三二九頁3行めに「 同 「傳説雪女」 昭和 八・ 二・ 八(水) 後六・二五―六・五五」とあって、昭和8年(1933)2月8日水曜日の18時25分から55分に日本放送協会東京放送局(JOAK)の第一放送「趣味講座「傳説…
一昨日からの続き。 ・橘正典『雪女の悲しみ』(3) 昨日は、目録・データベース類の誤りと、本書執筆の背景を見ただけで終わってしまった。 さて、表題作となっている「雪女の悲しみ/ ――ラフカディオ・ハーン『怪談』考――」だけれども、昨日示した『富山…
白馬岳から随分離れ、丸山氏の文章からも遠ざかっているが、仕方がない(?)ので昨日の続き*1。 ・丸山隆司「【研究ノート】民話・伝説のポストコロニアリスム」(5) ところが平成6年(1994)の「和人のアイヌ文化理解について――事例その1 青木純二『アイ…
昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(25)「一」8節め④ 遠田氏は、この丸山氏の文章には気付いていないようだ。ここで同じ箇所――「はしがき」6段落めを抜いての、遠田氏のコメントを、事の序でに見て置こう。37頁2~13行め、「一 白馬岳の雪女伝説」…
8月27日付(31)に青木純二のアイヌ伝説捏造(疑惑)について、遠田勝『〈転生〉する物語――小泉八雲「怪談」の世界』検討の序でに、近年の Twitter の諸氏の指摘を中心におさらいして見た。 しかしながら、久し振りに振り返ったものだからうっかりして、一昨…
記事のタイトルは「白馬岳の雪女(37)」或いは「上田満男『わたしの北海道』(4)」でも良かったのだが、私の青木純二調査のそもそものきっかけは「木曾の旅人」の改作者としての興味からだったのでこの題にして置こう。 ・上田満男『わたしの北海道』更科…
昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(11)「一」8節め① 続く34頁12行め~38頁9行め、8節め「「雪女」と偽アイヌ伝説」にて、遠田氏は青木氏が既に『アイヌの傳説と其情話』にて2話も、ハーンの「雪女」の翻案を行っていた、と指摘する。 青木氏のアイ…
昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(09)「一」6節め 30頁13行め~32頁10行め、6節め「バレット文庫の「雪女」草稿」の前半を抜いて置こう。30頁14行め~31頁8行め、 白馬岳の「雪女」伝説が、ハーンの「雪女」に由来するもうひとつ有力な証拠をあ…
昨日の続き。 ・和田登『民話の森・童話の王国 信州ゆかりの作家と作品』(2) 白馬岳の「雪女」には第2部に登場する松谷みよ子が大きく関わっているのだけれども、本書では、第1部にのみ取り上げられている。 すなわち「第1部 民話編」の「3 妖怪伝説…
・遠田勝『〈転生〉する物語』(01)はじめに① それでは、差当り「十六人谷」についての確認が終わったところで、今度こそ7月31日付(04)の続きで、8月1日付(05)に保留にした遠田勝『〈転生〉する物語――小泉八雲「怪談」の世界』の内容を検討して行こう。…
・辺見じゅん「十六人谷」(6)自筆草稿 今日から遠田勝及び牧野陽子の著書に取り掛かるつもりだったが、辺見じゅん「十六人谷」に関して若干、メモ程度の追加をして置きたい。 ・「高志の国文学館 年報」平成25年度(平成26年11月25日発行・高志の国文学館…
7月22日付(03)の続き。 私は、所謂「蓮華温泉の怪話」は青木純二が岡本綺堂「木曾の旅人」に想を得て捏造したものと考えているが、そのついでに、所謂検算みたいな按配で、類例である白馬岳の雪女についても検討して見ようと思ったのである*1。そこで「蓮…
私は小谷野敦(1962.12.21生)の著書はブログや Twitter の延長のような感じで大体面白く読んでいる。ミステリーファンから酷評されていた『このミステリーがひどい!』も、どうも探偵小説を手にする気になれない(2時間ドラマなど映像化されたものは見てい…
一昨日からの続き。 ・『荘子』雜篇盗跖第二十九(3) 「盗跖篇」には「一」孔子と盗跖の問答の他に2話「二」子張と満苟得の問答(115~123頁)、「三」无足と知和の問答(124~133頁)が収録されている。その「二」にも、似たような文脈で尾生が持ち出され…