瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小説の背景

小谷野敦の新書(1)

私は小谷野敦(1962.12.21生)の著書はブログや Twitter の延長のような感じで大体面白く読んでいる。ミステリーファンから酷評されていた『このミステリーがひどい!』も、どうも探偵小説を手にする気になれない(2時間ドラマなど映像化されたものは見てい…

芥川龍之介「尾生の信」(11)

一昨日からの続き。 ・『荘子』雜篇盗跖第二十九(3) 「盗跖篇」には「一」孔子と盗跖の問答の他に2話「二」子張と満苟得の問答(115~123頁)、「三」无足と知和の問答(124~133頁)が収録されている。その「二」にも、似たような文脈で尾生が持ち出され…

芥川龍之介「尾生の信」(10)

昨日の続き。 ・『荘子』雜篇盗跖第二十九(2) 友人の柳下季の弟・盗跖を正道に戻そうと、柳下季の止めるのも聞かずに顔回と子貢を供に連れて盗跖の許に出向いた孔子が、しょうもないおべんちゃらを言って盗跖を怒らせ、十倍返しくらいの反論を喰らって逃…

芥川龍之介「尾生の信」(09)

・『荘子』雜篇盗跖第二十九(1) 「孔子倒れ」の語源となった(?)盗跖と孔子の問答に、尾生が登場する。『荘子』は学部生時代に金谷治訳注の岩波文庫で揃えた*1。 ・岩波文庫33-206-4『荘子 第四冊(雑篇)』1983年2月16日 第1刷発行・1993年10月15日 …

芥川龍之介「尾生の信」(08)

さて、これまで日本で「尾生(の信)」について説明のある書物、寛永六年(1629)刊『春鑑抄』、明治39年(1906)刊『支那奇談集 第二編』、大正元年(1912)刊『〈故事/俚諺〉教訓物語』を見て来た。もちろん、まだまだあるであろう。 7月9日付(06)に見…

芥川龍之介「尾生の信」(5)

さて、7月6日付(3)に見た近事畫報社の『支那奇談集 第二編』の「尾生の信」で上げ汐で溺れ死んだことになっていることが、私にはどうにも腑に落ちない。 原文は、これから色々見るつもりだけれども、いづれも馮夢龍『情史』程度の短いものである。だから…

芥川龍之介「尾生の信」(2)

・岩波文庫31-070-15(2) 昨日「違和感」があるので「手にしていない」と書いた岩波文庫だが、勤めの帰りに図書館に立ち寄ったら棚にあったので借りて来た。刊年月日・定価・頁数は昨日の記事に追加して置いた。 カバー表紙の紹介文は以下の通り。 隅田川…

池内紀『昭和の青春 播磨を想う』(3)

昨日の続き。 「昭和の青春」の諸篇を眺めていると、最後がやや尻すぼみになっているような印象が拭えない。しかしながら最後、【14】篇めが「終わりと始まり」と題しているところからして、急に打ち切りになったのではないだろう。 しかしながら、【12】「ち…

池内紀『昭和の青春 播磨を想う』(2)

それでは本書の主体を成す短篇連作「昭和の青春」の細目を、仮に【番号】を附し、題、(頁)、掲載号、主人公と主要人物、舞台となっている場所、さらに序でとして取り上げられている昭和の事物をメモして置こう。 【1】モクモク号走る(6~15頁)1997年春号…

池内紀『昭和の青春 播磨を想う』(1)

昨日取り上げた歿後刊行の1冊を見て置こう。先日、コロナとは関係なく昨年来休館していた隣の市の図書館が再開していたので久し振りに出掛けて、たまたま書棚に見掛けて借りて帰って来た。 本書の由来は192~194頁「あとがき」に説明されている。筆者の中元…

奥野健男『文学における原風景』(1)

本書の書影は既に3月15日付「奥野健男『北杜夫の文学世界』(5)」に貼付して置いた。 ・『文学における原風景』一九七二年四月 十五 日 初版印刷・一九七二年四月二十五日 初版発行・定価 九八〇円・集英社・226頁・四六判上製本 私の見た本にはカバーが掛…

佐木隆三『復讐するは我にあり』(2)

昨日の続き。 ・福樹荘の神吉梅松弁護士(2) さて、前回参照した大正15年(1926)5月1日現在『東京電話番号簿』に神吉氏の名は見当たらないようであるが、中央区立図書館地域資料室アーカイヴス「電話帳簿」を見て行くと、神吉氏の名前も拾うことが出来る…

赤いマント(323)

さて、昨日の続きで朝倉喬司『毒婦伝』に赤マント流言が取り上げられていることと、そこでの扱いが他の朝倉氏の著書と食い違っていることについて確認しようと思っていたのだけども、他のことにかまけているうちに、ちくま文庫『犯罪百話 昭和篇』と能美金之…

奥野健男『北杜夫の文学世界』(5)

昨日は「あとがき」に見える本書編集の切っ掛け、著者の奥野氏、対象である北氏、そして編集者の宮脇氏の3人の関係について見て終わってしまったが、今回は「あとがき」の後半から、具体的な内容に関する記述を見て置こう。①169頁②201頁8行め~①170頁②202頁6…

奥野健男『北杜夫の文学世界』(4)

私は資料として使おうと思った書物について、異版がある場合、一応、諸本を確認してその本の由来や改訂箇所など、版ごとの特色なりを確認して置くことにしていて、当ブログはその備忘録みたいなものである。もちろん異版と云うなら、初出まで確認して置きた…

奥野健男『北杜夫の文学世界』(2)

昨日の続きで①単行本と②文庫版の比較。 ①の見返し(遊紙)は緑色、同じ厚みのベージュ色の扉、上部にカバー表紙と同じ明朝体横組みの標題と著者名が、縮小されてやや下に入っている。最下部中央の版元名は同じ大きさ・位置。やはりカバー表紙と同じ柄が黄土…

和田芳恵の小説モデル研究(3)

当時のメモには2020年12月30日付(1)に示した『名作のできるまで』の疑問点メモと、2020年12月31日付(2)に示した『おもかげの人々』の初出情報に加えて、一覧表がある。 しかしここでは、一覧表の後にある註記を先に引いて置こう。 モデル考察本 ●『近…

和田芳恵の小説モデル研究(2)

続いて昨日触れた次の本のメモを、書影を補い若干の修訂を加えて上げて置く。当時のメモなので現在とは書き方が違っている。2008年2月24日に読み始めて、3月12日読了。 * * * * * * * * * *和田芳恵『おもかげの人々 名作のモデルを訪ねて』昭和51…

和田芳恵の小説モデル研究(1)

その後、貴重書扱いされて貸出禁止となってしまったが、以前の千代田図書館では戦前の東京市立駿河台図書館以来の本でも貸してくれた。そんな思い出もいづれ書いて見たいと思っているが、次の本は2008年2月23日に借りて3月8日に一旦返却し、改めて借り直して…

赤いマント(310)

・宮田登の赤マント(7)阿部定と赤マント③ 昨日は「奇しくも」だけで終わってしまいましたが、他の内容についても見て置きましょう。 やはり気になるのは赤マント流言を「「赤マントの女」事件」と呼んでいることです。当ブログではこれまで紹介されて来な…

赤いマント(299)

・田辺聖子の赤マント(1) 田辺聖子『私の大阪八景』に、赤マント流言が取り上げられていることは、2019年7月3日付(191)及び2019年7月4日付(192)に当該箇所を引用して、その前後に『田辺写真館が見た ”昭和” 』なども参照しつつ、モデルとなった田辺氏…

赤いマント(294)

・北杜夫の赤マント(9) また赤マント流言の話に戻れなくなってしまいました(笑)が、乗り掛かった船ですので昨日予告した件について確認して置きます。――まぁ、こんな寄り道ばかりしているから検索サイトからも見放されてしまうのでしょう。或いは「釣り…

赤いマント(286)

・北杜夫の赤マント(1) 北杜夫『楡家の人びと』に取り上げられている赤マント流言を論考に活用したのは、本田和子(ますこ。1931.1.15生)が最初ではないかと思うのだけれども、本田氏がどのように取り扱っているか、当ブログでは2013年11月20日付(30)…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(167)

・青木純二原作映画『地獄の唄』(2) 念のため、「日活」HPでも確認して見た。 ・「地獄の唄 前篇」 地獄の唄 前篇 (じごくのうた1) 都新聞懸賞連載小説を映画化したもので、新入社の根岸東一郎、辻峯子を主役とし、「大地は微笑む」の合同監督の後に…

阿知波五郎「墓」(17)

昨日の続き。 次いで6月12日付(14)に引いた3日め「七月二十一日。」条の冒頭の「渇にたえられぬまま」水を飲む場面があり、そして初めて、何でこんなことを計画したのかが、説明される。続きを抜いて置こう。425頁2~11行め、 野球のボールが書庫の壁に当…

阿知波五郎「墓」(12)

昨日の続きで、ちくま文庫『絶望図書館――立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語』344~346頁「[閉鎖書庫 番外編]/入れられなかった幻の絶望短編」の、かなり詳細に及ぶ情報募集告知について、検討して見よう。 まづ冒頭、344頁4~13行め、 …

芥川龍之介旧居跡(15)

・群像 日本の作家 11『芥川龍之介』(2) 昨日の続きで、槌田満文「文学紀行/芥川の東京・湘南を歩く」について、ゴシック体の見出しを列挙して置こう。見出しのある行の前は1行空け。 190頁上段1行め「龍之介ゆかりの地」、190頁下段3行め「田端の旧居跡…

芥川龍之介旧居跡(14)

・群像 日本の作家 11『芥川龍之介』一九九一年四月十日 初版第一刷発行・定価1748円・小学館・351頁・四六判上製本芥川龍之介 (群像 日本の作家)作者:後藤 明生出版社/メーカー: 小学館発売日: 1991/03メディア: 単行本 奥付の前(351頁の裏)の目録による…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(122)

・杉村顯『信州百物語』の評価(3) 9月15日付(118)の続き。 前回(昨日)も問題にしたが、② 著者が判明したことも、本書が復活を遂げる(?)に与って大いに力があったと思われる。 作者も成立事情も分からぬまま本書を読んだ場合、「怪奇」でないただの…

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(118)

・杉村顯『信州百物語』の評価(2) 繰り返しになるが、――結論を言うと、本書は編集に時間を掛けていない、やや安易に編纂された伝説集であった。 それが最近、やや名が知られるようになったのには、次の4つの要因が考えられる。 ① 岡本綺堂「木曾の旅人」…