瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2017-01-01から1年間の記事一覧

宇井無愁の上方落語研究(1)

私は長らく音声再生機器を持っていなかったので、落語はまづ文字から入った。父の書棚に揃いではなかったが講談社文庫『古典落語』があって、中学卒業の頃、それで一通り古典落語の演目についての知識を得た。高校入学後、父のラジカセをもらったが、せいぜ…

講師室の思ひ出(3)

一昨日からの続き。 * * * * * * * * * * しかし、どんなに此処こそが私のいるべき場所のような感じがしたとして、もう居場所がないのが本当だ。戻りようもない。――万一戻れたとしても、もう昔のようには出来ないのだ。 そう考えると、これ以上書…

講師室の思ひ出(2)

昨日の続き。 * * * * * * * * * * 土曜日に講師室にいるうち、訪ねて来る生徒が多いことに気付いた。 私立高は転勤がないから、たまに転職する人や、早期退職する人もいるけれども、専任教諭は定年までそのまま勤務する。定年後も希望すれば数年…

講師室の思ひ出(1)

馘首された翌年度の文化祭に、女子高を訪ねた。 出入り禁止になった訳ではないのだから、来ようと思えばいつでも入れたのである。 しかし、恐らく管理職に忌まれて馘首になった私が、何でもないときに学校を訪ねるのは、私はもう部外者だから今更何もされは…

Guy de Maupassant の文庫本(6)

・岩波文庫32-550-1『脂肪の塊』水野亮 訳 12月3日付(2)に触れた、実家の父の書棚にあった岩波文庫を借り出すことが出来たので、先日来借りて置いた図書館蔵書と並べてメモして置こう。 ①1938年4月5日 第1刷発行脂肪の塊 (1957年) (岩波文庫)作者: モー…

松本清張『黒い手帖』(5)

『松本清張全集34』の「エッセイより」に採録されている本書所収のエッセイについての確認の続き。 ・25番め「推理小説の発想」392〜428頁 本書では「小説と素材」及び「創作ノート ㈠」「創作ノート ㈡」の3節であるが『全集』には「創作ノート ㈡」がなく…

松本清張『黒い手帖』(4)

本書の内容の一部は5月30日付「松本清張『半生の記』(5)」に見た、『松本清張全集34』の「エッセイより」に収録されている。まづ当時貼付出来なかった、書影を示して置こう。松本清張全集 (34) 半生の記,ハノイで見たこと,エッセイより作者: 松本清張出版…

松本清張『鬼畜』(12)

12月23日付「松本清張『黒い手帖』(3)」に目録を示した中公文庫『黒い手帖』には、「鬼畜」のもとになった話をメモした「創作ノート ㈠」が収録されている。以下、初版の改行位置を「/」改版のそれを「|」で示す。各項2行め以下は1字下げだが詰めた。初…

松本清張『黒い手帖』(3)

・中公文庫 初版(七版)と改版の本体の比較で、12月21日付(2)の続きから。 7頁から本文。頁付は小口側上部に算用数字で入り、奇数頁には2字分空けて章題が入る。 まづ最初に2行取りで章題「推理小説の魅力」が明朝体で大きく入る。初版は2字下げ、改版は…

Guy de Maupassant の文庫本(5)

・青柳瑞穂 訳『モーパッサン短編集』(4) ・新潮文庫1946 (一) 12月18日付(4)の続きで①四十刷、②四十一刷改版・四十二刷、③四十三刷改版の本体について。 頁付がある最終頁の裏、②には中央下寄りに明朝体で小さく3行の断り書きがある。 本作品中には…

松本清張『黒い手帖』(2)

・中公文庫(2) 昨日の続きで初版(七版)と改版の比較。 カバー表紙折返し、初版(七版)は右上にエジプト・サッカラのジョセル王の階段ピラミッドを背景にした白黒写真、その下、右寄りに縦組みで「著者紹介」1行分空けて「松 本 清 張*1」、その下に明…

松本清張『黒い手帖』(1)

・単行本 黒い手帖―随筆 (1961年)作者: 松本清張出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1961/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る・中公文庫(中央公論社)黒い手帖 (中公文庫 A 9-9)作者: 松本清張出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1974/06…

干寶『搜神記』(1)

12月14日付「手で書かずに変換する(4)」等に述べたように、私は小学6年生の頃、昔話研究(?)に夢中になっていたのだが、中学に入ってからは同級生や部活の後輩から怪異談を聞き書きしたり、中学から高校に掛けて講談社文庫『古典落語』全6冊を読んで、…

Guy de Maupassant の文庫本(4)

・青柳瑞穂 訳『モーパッサン短編集』(3) ・新潮文庫1946 (一) 昨日の続きで①四十刷、②四十一刷改版・四十二刷、③四十三刷改版の本体を比較して見よう。 1頁(頁付なし)扉、文字は同じで角の丸い匡郭は①(10.1×6.2cm)②③(10.5×6.5cm)。 3〜4頁(頁付…

Guy de Maupassant の文庫本(3)

・青柳瑞穂 訳『モーパッサン短編集』(2) 12月2日付(1)の続き。 当初、全3冊をそれぞれ1冊か2冊見て始めたのだが、その後、各地の図書館で借り集めて見ると、改版の様相が複雑怪奇であることが分かってきた。まづ(一)について、①四十刷、②四十一刷改…

久米田康治『さよなら絶望先生』(3)

12月1日付(2)の続き。 装幀については「久米田康治ワールド Wikiサイト」の「さよなら絶望先生」の「さよなら絶望先生単行本」条の「単行本リスト」各巻の項に、かなり詳しく記述されている。 そこでここでは、このWikiサイトがフォローしていない(と云…

手で書かずに変換する(5)

生徒たちが漢字は見れば分かる程度に思っているのは、親たちがその程度に思っているからであろう。 私の卒論のゼミで、教授が来るのを待つ間に女子学生たちが話すのを聞いていると、――法律や経済に興味がある訳でもない。ここなら日本語だから読めば分かるで…

手で書かずに変換する(4)

昨日の続き。 この男子高の前年、非常勤講師として自身の卒業後十数年ぶりで高校と云う場所に戻った私は、まるで浦島太郎みたいなもので、色々と自分の過ごした高校時代との違いに驚かされた。2学期に高3を担当したのでまづ気付かされて、これは不味いのでは…

手で書かずに変換する(3)

一昨日からの続き。 私は父の仕事の都合で3年か4年に1度、転居して来た。そして幼少の頃から人に合わせるのが苦手だった。むしろ人を自分に合わせたのである。小学3年生から5年生までを過ごした新興住宅地の小学校は、そんな私にとっては理想的な環境だった…

手で書かずに変換する(2)

昨日の続き。 1年生の古典も出来なくて(と云うか、身の丈に合っていない考査問題に1年間付き合わされて)困ったが、授業のことなど、今となっては殆ど覚えていない。生徒のことは何人か覚えているが、個人的なことになるのでここに書くには適さない。講師室…

手で書かずに変換する(1)

10月27日付「3人のヤマンバ(1)」に述べた共学高の次に勤務した男子高では、2年生は誰も持ちたがらず宙に浮いていた現代文1クラスだけ担当させられ、生徒に「俺はレンタルビデオ屋のバイトで楽してるのに、先生がこんなに苦労してるのに月の稼ぎが同じだな…

小林多喜二『蟹工船』の文庫本(3)

・新潮文庫547『蟹工船・党生活者』(3) 昨日の続きで、②五十九刷のカバーについて、③のカバーと比較しつつメモして置こう。③は仮に九十九刷と比較して見る。 カバー背表紙は白地で、上部に明朝体で標題、中央やや下に著者名が入るのは同じ。活字の大きさ…

小林多喜二『蟹工船』の文庫本(2)

・新潮文庫547『蟹工船・党生活者』(2) ②五十九刷のカバー表紙は白い波濤の暗い荒海に漂う船の舳先で、鉢巻をした人物が5人働いている様を描いた油彩画風の絵で、遠く水平線に大きな汽船が描かれ、その向こうの空は紅く暗い。文字は明朝体横組みで上部に…

小林多喜二『蟹工船』の文庫本(1)

・新潮文庫547『蟹工船・党生活者』(1) ①昭和二十八年六月二十八日発行蟹工船・党生活者 改版 新潮文庫作者: 小林多喜二出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1968/05/30メディア: 文庫この商品を含むブログを見る蟹工船・党生活者 (1953年) (新潮文庫〈第547…

小堀杏奴『晩年の父』(1)

・岩波文庫31-098-1(1) 昨日の幸田文(1904.9.1〜1990.10.31)と同じく有名な作家の娘の回想。晩年の父 (岩波文庫)作者: 小堀杏奴出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1981/09/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見る①1…

幸田文『みそっかす』(1)

・岩波文庫31-104-1(1) ①1983年9月16日第1刷発行©(220頁)みそっかす (岩波文庫 緑 104-1)作者: 幸田文出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1983/09/16メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (19件) を見る・1994年5月16日第9刷発行 定価447…

水島新司『ドカベン』(59)

・東郷学園の野球部員 好い加減、このことで突っ込みを入れるのは食傷気味なのだけれども、他の人は恐らくやらない(やった人がいるかも知れないけれども)と思う瑣事なので、敢えて取り上げて置こう。――実は先月、もう1度映画を見直そうと思っていたのだが…

一発屋を繞りて(1)

先月末に移動のため、夕方、2箇月振りに近郊の私鉄の上りに乗った。私は普段の通勤電車では座らない*1のだけれども、疲れていたのと始発駅の近くで殆ど客が乗っていなかったこともあって、座ることにした。と、私の向いのシートにやはり同じ駅から乗り込んで…

Guy de Maupassant の文庫本(2)

・新潮文庫172『脂肪の塊・テリエ館』(1) 昨日の続きで、代表作「脂肪の塊」の文庫本について。 出来れば私の読んだ岩波文庫『脂肪の塊』から始めたかったのだが、高校時代、同じ父の書棚から抜き出して読んだ岩波文庫『カルメン』と違って、読んで感心し…

Guy de Maupassant の文庫本(1)

・青柳瑞穂 訳『モーパッサン短編集』(1) モーパッサン(1850.8.5〜1893.7.6)の小説は、高校時代に父の書棚にあった岩波文庫『脂肪の塊』を読んだくらいだったが、最近アンソロジーに収録されている短篇を読んで、もう少し読んで見ようと云う気になった…