瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

文庫本書誌学(1)

 文庫本の改版について、ここまであれこれ書いてきたけれども、私がこんなことをしようと思ったのは、論文の類でも引用の元を「新潮文庫185−186頁」などと注に示すだけの書き方をする人がいる。しかし、最近特にしょっちゅう改版をしているから、頁だけ示されても駄目なのである。それに、新潮文庫や角川文庫などを見るに、昭和40年代の改版は、どうもはっきりしないのである。新潮文庫は、例えば「39刷改版」と表示しつつも、その後、解説を差し替えたり、本文の方も違ってまっているらしいのだ。角川文庫は改版の時期を明示していなかったし、本文についても同じ「改版」の、刷が違うだけのはずの本で、やはり*1違っている例があるのである(近く報告するつもりである)。岩波文庫も、戦前戦後の頃はちょくちょく手を入れていたようだ。最近、そのことに気付いて、これまでのこのブログの書き方は迂闊だったと反省しているところである。
 こうなると、文庫本は、その人が使った本が刷られて刊行された年月日と、その増刷の版数とをとにかく記載して、引用するべきだ、ということになる。
 厳密には、改版・増刷のそれぞれの本を集めて、1つ1つ比較して違いがあるのか、ないのか、確認しなければ、安心して、引用にも使えない。これはもう「文庫本書誌学」とでも名付けて、帯・カバーや本文・解説・年譜などの改廃その他について、1つ1つ確認して置くような作業があっても良いのかも知れない、そんな気がしてきた。それこそ、古本屋に依頼して『人間失格』や『斜陽』の諸本を全国に呼びかけて集めて、そしてその異同を細かく確認していったら、それはもう1つの学術的な成果になるのではないか。
 ふとそんなことを思い付いたけれども、私はまぁそこまではしないで置く。もし気が向いた人がいたら試して下さい。図書館をあちこち廻って、同じタイトルの本を複数見たからそんなことを思ったので、やはり私は今後も図書館通いの方を続けるだろうと思うからである。

*1:7月20日追記】一部削除。7月20日付参照。