・新潮文庫443(2)
カバー裏表紙の右上にある紹介文は、八十八刷・九十八刷・百四十八刷は同文である。百五十一刷・百六十八刷・百六十九刷及び百八十七刷の裏表紙折返しにあるものとは、全く違う。
八十八刷と九十八刷にはバーコードはなく、紹介文の上と下に横線がある。下の横線の下の中央に葡萄マーク。八十八刷は左下に「0193-100605-3162」右下に「\ 180」、九十八刷は下部に1行、「ISBN4-10-100605-9 C1093 \200E 定価200円」とある。
背表紙、いづれも黒地に白抜きで、上部に標題、中央やや下に著者名が、明朝体で入っているのは共通だが百四十八刷では文字が大きくなって居居る。下部にはゴシック体で、八十八刷は「新潮文庫〔草〕 六E 180」とある。「〔草〕」は縦で明朝体、定価も縦。九十八刷は〔草〕までは同じだがその下が「 六=5= 200」となっている。「=5=」も縦。
表紙だが、井上秀二のブログ「Cultural Marketing Lab INOUE.」の2007年08月22日「『人間失格』(集英社文庫)−“カバー買い”で大ヒット」に、昭和57年(1982)6月の93刷(定価180円)の書影が掲載されているが、これが九十八刷と同じである。さらに井上氏は「当時の新潮文庫の太宰作品はこの装丁です」として『晩年』『お伽草紙』『グッド・バイ』の書影を示す。鉛筆や黒絵具を用いたモノクロの抽象画で、上部に3.1×6.9cmの黒の長方形があってそこに白抜きで標題と著者が入るが、『人間失格』の八十八刷はこの装幀である*1。
表紙折返し、半分ぐらい切除されているが何も印刷されていない。新潮文庫カバー表紙折返し右下に縦で「カバー」の担当者名を入れるのは、2011年3月19日付「森鴎外『雁』の文庫本(4)」などで、昭和53年(1978)には既に行われていたことを確認している。まだ取り上げていないが、夏目漱石の新潮文庫45『門』の四十六刷(昭和四十六年七月十日)と新潮文庫308『行人』の四十二刷(昭和四十九年二月二十日)もそうである。従って、何も印刷されていなかったのではないか、と思われるのだが、いづれ完全なもので確認する機会を得たい*2。
裏表紙折返し、「〜〜新潮文庫〜〜/太宰 治の作品」で、九十八刷は17点、八十八刷は14点『もの思う葦』までで『津軽通信』『新樹の言葉』『ろまん燈籠』はまだない。最下部左寄りに「カバー印刷 錦明印刷」とあるのは同じ。百四十八刷・百五十一刷・百六十八刷・百六十九刷は右に「デザイン 新潮社装幀室」が追加されている*3。
八十八刷は152頁の次、1頁白紙があって「新潮文庫 日本の作品」の3段組の目録が5頁、椎名麟三から新田次郎まで。それから「新潮文庫最新刊」が1頁(9点)、その裏、最後の頁にある奥付は古い形式で、2011年3月20日付「森鴎外『雁』の文庫本(5)」に記載した新潮文庫49『雁』六十一刷(昭和五十三年十月三十日)や新潮文庫239『オリンポスの果実』三十九刷(昭和五十三年五月三十日)に同じ。すなわち、上部に「工」字形に線が引かれ、その右の枠に横書きで、上部に標題(ルビあり)、下部に「定価180円」。左の枠内には「新潮」という方形の印がある。「工」の下に横書きで「新潮文庫 草6E」とある。その下は縦書きで「昭和二十七年十月三十日発行/昭和四十二年九月三十日四十二刷改版/昭和五十六年二月五日八十八刷/著者 太宰 治(ルビあり)/発行者 佐藤亮一/発行所 ……」とある。以下は今手許にある『オリンポスの果実』三十九刷に同じで、その下に横線があり、その下に横組で、1行目に印刷・製本の社名があるがこれも同じ。2行目には「© Michiko Tsushima 1952 Printed in Japan」とある。(以下続稿)
*1:【2013年1月23日追記】その後見た百十六刷と百三十二刷が九十八刷と同じ表紙である。ここまでのところでの異同は、裏表紙、百十六刷は九十八刷と同じ形式で、Cコードの次「 P220E 定価220円」定価の下「(本体214円)」とある。百三十二刷は左上にバーコード2つ、2つめの下4桁「3209」、その下中央の横線のすぐ上に「定価320円(本体311円)」、横線の下にISBNコード/Cコードに「P320E」。背表紙、下部白く抜いて[た 2 5]すぐ下に白抜きゴシック体で「新潮文庫」最下部に百十六刷「220」百三十二刷「320」ともに太い下線。
*2:【2013年1月23日追記】百十六刷と百三十二刷は一致しており新潮カセットブック「太宰治のカセット」の広告で「●佐渡/トカトントン」「●ヴィヨンの妻」「●走れメロス/駈込み訴え」、右下に「カバー 山下清澄」とある。
*3:【2013年1月23日追記】百十六刷は2012年10月18日付「太宰治『晩年』の文庫本(2)」で見た新潮文庫11『晩年』七十五刷に同じ。百三十二刷は2012年7月3日付「太宰治の文庫本(01)」で見た新潮文庫2819『津軽通信』十四刷に同じ。