瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(80)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(15)
 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「」節め、4段落めの初めを抜いて置きましょう。

 そのあとその女はスギのレッチウの小屋にいって、前同様のことをいって一夜の世話を頼み入れますと、そこの小屋では、それはさぞ御難渋だろう、さあさ早くはいって火にあたれといって、いろいろと介抱をしてやり首尾よく女にお産の紐を解かせました。‥‥


 昭和31年(1956)の「山と高原」二月号第二三三号)掲載「雪の夜の伝説」の「狩山の鼠」の該当箇所、56頁3段め6〜10行めは、

‥‥。後で女は六人組の小屋/へ行って前同様の事を云って、一夜の宿を/求めると、其小屋ではさぞ雪で御難渋だろ/うと、色々介抱してやり首尾よく女に産の/紐を解かせてやった。‥‥

となっており、前々回注意した「スギのレッチウ」と云う、注釈が必要な文句を避けた他にもかなり節略されていますが、やはり前々回以来注意している天候について「さぞ雪で御難渋だろう」と殊更に書き足しているのが注意されます。
 次に、平成4年(1992)の「あしなか」第弐百弐拾四輯掲載「山の伝説」の「山の神の伝説」の、6段落め(16頁下段25行め〜17頁上段2行め)を抜いて見ます。

 その後で女は六人組の小屋へ行って前/同様のことを言って、一夜の宿を求めると、人組の小屋ではさぞ雪でご難渋だろうと、い【16頁】ろいろ介抱してやり、首尾よく女に産/の紐を解かせてやった。


 「山と高原」との異同を仮に太字にして見ました。「山と高原」では省かれていた助詞及び活用語尾・接頭語等が『東奥異聞』と同じになっていますが、『東奥異聞』を参照しないと補えないようなものではありません。(以下続稿)