瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中勘助『銀の匙』の文庫本(4)

・角川文庫7496(3)
 和柄カバーの続き。
 表紙の右上、白の長方形の左端に当たる部分(横3.1cm)、右上に著者名、右下に小さく「角川文庫」、その左に大きく標題「銀の匙」振仮名「さじ」と、やはり明朝体で入る。
 背表紙(0.8cm)は「な 3-1 中 勘助   銀の匙」とやはり明朝体*1。背表紙の下部、手拭い柄の上に明朝体で小さく「角川文庫」とあるが柄と紛れて読みにくい。
 裏表紙折返しの下部、1.2×5.5cmの長方形に白くして「装画 てぬぐい ソーダ水(株式会社かまわぬ)/   ©KAMAWANU CO.,LTD.All Right Reserved/装丁 大武尚貴+鈴木久美(角川書店装丁室)」とある。
 表紙折返しの上部、7.6×5.9cm白くして、十一版・十三版・十六版・十八版の同じ位置にあった四角の顔写真と同じ写真を丸く切って右上に示している。白髪に立派な白い眉の著者を斜め右前から写したもので、右耳にコードが垂れて補聴器らしいイアフォンが差してある。その左に横組みで「中 勘助/Kansuke Naka 」。その下に横組み9行(1行18字)の紹介文。
 これは縦組み十一版・十三版「中勘助(なか かんすけ)」十六版・十八版「●中 勘助(なか かんすけ)」と題して、明朝体縦組み6行(1行17字)の紹介文を増補したものである。十一版・十三版と十六版・十八版の異同は3〜4行め「「銀の/匙」。」が「『銀の/匙』。」に、4〜5行め「組しない深い洞/察力」が「くみしない深/い洞察力」の2箇所。これはもちろん「与しない」と書くべきである。
 ここでは、十六版と和柄を比較しつつ確認してみる。
 まず、和柄1行め「1885年、東京生まれ。」とあるが十六版1行め「東京生まれ。」から始まっている。ついで和柄1〜2行め「1909年、東京帝国大/学国文科卒業。」とあるが十六版1〜2行め「明治四十二年、東大国文/科卒業。」とここで初めて年号が示される。和柄2〜6行め「卒業後、家計を助けるため/に処女作にして出世作銀の匙』を書き/上げる。『銀の匙』は東大在学中に講義を/受けた夏目漱石に閲読を乞い、漱石の推/薦を受けて東京朝日新聞に連載される。/*2」となっているが十六版2〜3行め「詩を志すが、家計を助けるた/めに小説を書き始めた。出世作『銀の/匙』。」と簡略であるが「詩」にも触れている。和柄7〜9行め「自然主義の潮流にくみしない深い洞察力/と、厳しい倫理観が作品を一貫している。/65年逝去。」十六版は句読点が全角で最後が「昭和四十年逝去。」となっている*3。生年はないのに没年だけが示されていた訳である。
 初版ではここに作品の紹介文があって、下部に総合文芸誌「野性時代」の広告がある。最下部右寄りに初版・十一版・十三版「カバー 名倉靖博」とある*4が、十六版・十八版は「カバー/名倉靖博」。(以下続稿)
5月19日追記】投稿当初(5)にしていたが、予定していた(2)をまだ投稿していなかったことに気付いたため、1つずらしてこれを(4)に改めた。

*1:5月11日追記】ルビ「さじ」。

*2:ルビ「さじ・さじ」。

*3:十六版・十八版の改行位置、4〜5行めは既に示した。5〜6行めは「一/貫している。」なお十一版・十三版は「一貫し/ている。」。

*4:2014年8月18日追記】十版は「野性時代」のあった位置が空白になっている他は初版に同じ。