瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中勘助『銀の匙』の文庫本(3)

・角川文庫7496(2)
 ここで、私の見た二十九版に掛かっている、和柄カバーについて確認して置く。
 白地に下が濃く上が淡くなっている水色の柄。上部にカバー裏表紙折返しから裏表紙・背表紙・背表紙の右上まで、長方形の白紙(幅8.0cm)を載せたようになっていて、その右端、裏表紙折返しの右上(横6.7cm)には明朝体縦組みで「角川文庫※中 勘助の本」※のところには丸い葉が3つ付いた梢のマーク、1行分空けて「銀の匙」。裏表紙の右上、明朝体縦組み8行(1行24〜25字)の紹介文があるが、これは十六版・十八版にあるものを縮約したもの、と前回書いてしまったが、伯母についての記述と、漱石の賛辞で締めくくっているのは同じであるが、その前後が違う。まず、十六版・十八版のゴシック体縦組み14行(1行14字)、3段落の1段めを引いて見よう。

虚弱で瘦せて人見知りの強い臆/病な私を溺愛し生き甲斐として/育ててくれた伯母。小さな口に/薬を含ませるためにその伯母が/特別に探してきた銀の匙を私は/いまも飽かず眺めていることが/ある――。


 和柄カバーの方は、段落分けをしていない。該当箇所は次のようになっている。

書斎の本箱に昔からしまってあるひとつの小箱。その中/に、珍しい形の銀の小匙があることを私は忘れたことは/ない。その小匙は、小さな私のために伯母が特別に探し/てきてくれたものだった。病弱で人見知りで臆病な私/を愛し、育ててくれた伯母。


 十六版・十八版の2段めは、

明治時代の東京の下町を背景に、/身も心も成長していく少年の日/日をきめ細かく、リリカルに描/いた自伝的小説。

となっている。一方、和柄カバーでは先の引用に続いて「隣に引っ越してきたお螵/ちゃん。*1」と、名前だけであるが前篇のヒロインを出している。これが続く「明治時代の東京の下町を舞台に、成長していく/少年の日々を描いた自伝的小説。」に効いているように思う。
 最後の漱石の賛辞に触れたところは微妙な違いなので、十六版・十八版の3段めに、和柄のものを添えて置こう。

発表時、夏目漱石が「きれいだ、/描写が細かく、独創がある…」と/手放しで称賛した、珠玉の名作。
和柄夏目漱石が「きれいだ、/描写が細く、独創がある」と称賛した珠玉の名作。*2


 和柄カバーの裏表紙に戻って左上にバーコード2つ、その下に13桁のISBNコード/Cコードに「\400E」/「定価:本体400円(税別)」。(以下続稿)
5月19日追記】投稿当初(4)にしていたが、予定していた(2)をまだ投稿していなかったことに気付いたため、1つずらしてこれを(3)に改めた。

*1:ルビ「けい」。

*2:ルビ「こまか」。