① 現代民話考 その十「軍 隊(上)」(日本民話の会編集「民話の手帖」第11号(第5巻/第3号)44~91頁上、一九八二年十月一日発行・定価 八八〇円・発行 日本民話の会・発売元 第一法規出版・160頁・A5判並製本)
② 現代民話考 その十一「軍 隊(下)」(日本民話の会編集「民話の手帖」第13号(第5巻/第4号)74~111頁、一九八二年十二月三十日発行・定価 八八〇円・発行 日本民話の会・発売元 第一法規出版・160頁・A5判並製本)
③ 現代民話考 その十八「軍 隊(続)」*1(日本民話の会編集「民話の手帖」第25号(第八巻第三号)、一九八五年十月一日発行・発行 日本民話の会・発売元 国土社・146頁・A5判並製本)
④ 現代民話考 Ⅱ『軍隊』1985年10月6日 第1刷発行・1987年2月20日 第5刷発行・定価 1,800円・立風書房・418頁・四六判上製本
⑤ ちくま文庫『現代民話考 2』軍隊 ほか(二〇〇三年五月七日 第一刷発行・定価1300円・筑摩書房・472頁)
今、①②④⑤が手許にある。⑤の標題は奥付によるが副題「軍隊 ほか」が奇妙である。カバー背表紙と1頁(頁付なし)扉は「現代民話考[2]」、カバー表紙は「現代民話考 [2]/軍隊・徴兵検査・新兵のころ」で、15頁(頁付なし)中扉は「現代民話考 2 軍隊」である。どうして「ほか」にしたのだか。
雑誌「民話の手帖」に現代民話考「軍隊」として掲載されたのは、6月8日付「日本の民話『紀伊の民話』(12)」に引いた『松谷みよ子の本 第7巻 小説・評論・全1冊』の【初出】にも示されていたように①②③の3回である。
③は未見で④とほぼ同時期に刊行されていることから、④にどの程度反映されているものだか不安があった。それと云うのも2020年3月27日付「飯盒池(07)*2」に引用したように、④⑤の前文「軍隊考」には「‥‥。「民話の手帖」十一号、十三号にわけて掲載。更に今回再度、聞書やアンケートを続け、この一冊をまとめさせて頂いた。‥‥」とあって、第25号つまり③には触れていなかったからである。
しかしながら、伊藤英治 編『松谷みよ子の本 別巻 松谷みよ子研究資料』159~452頁「松谷みよ子全著作目録」259~411頁「編纂出版物・雑誌・新聞」301頁下段~322頁下段5行め「再話(雑誌・新聞)」の317頁下段7行め~318頁上段6行め「「現代民話考 その十八 軍隊(続)」」の記述によって、①②と同様に④の基礎作業と位置付けられるような内容であることが分った。
そうすると今度は、――③は雑誌だから発行日よりやや先行して発売されているにしても④までの期間が余りにも慌ただしいことが気になって来た。第一、日本民話の会の会員で現代民話に興味のある人は④を買うだろうから、③をわざわざ別に、少しだけ先行させて出す必要など、いよいよなかったのではないか。実際「軍隊考」の書振りは①+②+その後の追加資料=④と云うことで、③を想定せずに④の編集を進めていたように読める。
――「松谷みよ子全著作目録」259~411頁「編纂出版物・雑誌・新聞」329頁上段7行め~388頁下段10行め「解説・評論・随筆等」を眺めると、368頁上段10~12行め、この第25号の「「編集後記」」が記載されている。「民話の手帖」で毎号(と云って私は幾冊かを見ただけだが)、最終頁の4段めの奥付の上、1~3段めに編集委員6人のうち4~5人が200~400字ずつ書いている、この「編集後記」を拾って行くことで「民話の手帖」の殆どを辿ることが出来るのだが、松谷氏の評論や随筆の寄稿が別にあった場合は、この前に示されることになる。そしてこの1つ前、7~9行めには「随筆「『特集・語りつぐ戦争』によせて」」が出ていて、この「民話の手帖」第25号が、戦後40年の節目の「《特集》語りつぐ戦争」であったことが分るのである。「松谷みよ子全著作目録」では掲載位置が分らないが、ネット検索してヒットする「昭和館デジタルアーカイブ」のこの号の「目次」に拠ると、松谷氏の文はこの《特集》の序文に当るものであったようだ。そうすると確かにこの号には、戦争に纏わる「現代民話考」をどうしても載せたいところではある*3。
①②以降に集まったものを纏めた③と、①②③を纏めた④のどちらが先だったか、細かい事情は分らないけれども、とにかくどちらも戦後40年に合せようとして同時進行になってしまったと云うことらしい。③を見ればこの辺りの事情について述べるところがあるであろうか。しかし、③は国立国会図書館か昭和館にでも行かないと閲覧出来そうにない。しかし、どうにも億劫になってしまって都内に資料漁りに行こうと云う気分にならない。再来年になればそんな気になりそうに思うのだけれども。(以下続稿)