瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松葉杖・セーラー服・お面・鬘(18)

ギンティ小林新耳袋大逆転』(4)
 単行本「第二十七話」文庫版「第二十三話」の「サリーちゃんとの出会い」の最後を抜いて見ましょう。単行本88頁2〜5行め・文庫版76頁3〜6行め、

 目撃者の誰もが口を揃えるようにこう言った。
「見た瞬間、思わず目を逸*1らしてしまった」
 片脚で松葉杖をつき、金髪のカツラを被り、漫画のキャラクターの顔のような現実感|のないマスク/を被っている。そんな姿から、女はいつしか三本足のサリーちゃんと呼ば|れるようになった。


 そして単行本「第二十八話」文庫版「第二十四話」が「週刊誌」です。
 冒頭を引いて見ましょう。単行本89頁2〜7行め・文庫版76頁9〜15行め、

 サリーちゃんの噂は僕の中学校だけでなく、小学生たちの間にも広まっていた。小学|生たちは当時/テレビで放映されていた『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』から連想し|たのか、サリーちゃんを/「*2鉄仮面」と呼んでいた。
 自宅にいた僕は、親父が買ってきた『週刊朝日』を読んでいた。
週刊朝日』には街の噂話を紹介するコーナーがある。その欄に「トイレの中で梳*3るひ|みつのアッコ/ちゃんは女子高生? それとも*4」と題した記事があった。これはもし|や……。


 続いて単行本89頁8行め〜90頁1行め・文庫版76頁16行め〜77頁9行めに、2月17日付(09)に引いた「週刊朝日」10月23日号(昭和62年10月23日発行・朝日新聞社・182頁)の記事の要約があるのですが、「街の噂話を紹介するコーナー」としていて「デキゴトロジー」という名称を出していません。見出しも「くしけずる」を漢字表記にするなど、手を加えています。しかしながら「デキゴトロジー」という欄は、2月16日付(08)でこの号の「デキゴトロジー」について確認したように「街の噂話」の「紹介」ではありません。細かいことのようですが敢えてここに注意して置くのは、2月18日付(10)にも触れた「デキゴトロジー」の記事についての小林氏の感想にも関連して来るからです。
 この感想については後日検討することにして、ここで注意して置きたいのは「不思議ナックルズ」の記事では、小林氏は取材の過程で、初めて「週刊朝日」を見せられたように読めることです。実際、小林氏は「僕の中学校だけでなく」と、中学生時代のこととしているのですが、2月23日付(15)に考証したように、小林氏は昭和62年(1987)3月に中学校を卒業しているはずです。日本の義務教育(小学校・中学校)では余程のことがない限り原級留置になりません。私は小林氏の著述を読み込んでいる訳でもなく、その経歴も詳しくは知らないのですが、私の読んだ限りではそういった事情を抱えているようには読めませんでした。
 小学生が「鉄仮面」と呼んでいたことは、単行本『新耳袋大逆転』に先行する「不思議ナックルズ」の記事にも、2月19日付(11)に引いたように「当時テレビで放映されていた『スケバン刑事 少女鉄仮面伝説』から連想したのか」と、ほぼ同じ表現で見えていました。
 さて、ここは『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』が「放映されていた」のもこの怪人物が出没していた「当時」のことと、読めるのですが、その放映期間も昭和60年(1985)11月7日から昭和61年(1986)10月23日までで、昭和62年(1987)秋ではないのです。当時放映されていたのは『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』でした(昭和61年10月30日から昭和62年10月29日まで全43回)。尤も、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』も再放送があったのかも知れませんし、1年後であっても熱心に見ていた小学生たちが南野陽子を思い出して「鉄仮面」と呼んだという可能性も、十分考えられます。
 とにかく、怪人物出没のちょうどその頃に「週刊朝日」の記事を読んだのであれば、それは昭和62年(1987)秋、小林氏の中学3年生のときではなく高校1年生のときのことになるはずなのです。(以下続稿)

*1:文庫版ルビ「そ」。

*2:文庫版は全角。

*3:ルビ「くしけず」、

*4:文庫版「……」。