瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤い半纏(17)

ザテレビジョン文庫42『稲川淳二の怖い話 ベストランキング!!』(5)
 昨日の続き。19頁15行め〜20頁17行め、

 その時です。
 突然、肉をたたき切るような音とともに、婦人警官の悲鳴が寮内に響き渡ったのは!
 トイレの外にいた警官は何事が起こったのかと思って、慌ててドアをノックしたんで/すよ。
 だけど返事がない。
 ドアを開けようにも中から鍵がかかっている。
 しょうがないから、トイレのドアをたたき破ってトイレの中に入ってみると、一面、/血の海。
 婦人警官が血だらけになって死んでいるんですよ。
 その死体っていうのが無残なものでね。
 首が切り飛ばされているんです。
 そして、彼女の背中には、首を飛ばされた時に付いたんでしょうね、血がべっとり付/いているんです。
 まるで、赤いはんてんを着せられたかのように見えるんです。
 もちろん、警察側は婦人警官を殺害した犯人を捜したんですよ。
 だけど、とうとう、犯人は見つからなかったんですよ。
 だって、そうでしょう。
 現場にいた人間は、誰一人として犯人らしき人物の気配すら感じていなかったんです/から。
 この事件はとうとう迷宮入りになってしまったそうです。


 ここでは、首が切断されたことになっていますが、「赤い半纏〈完全版〉」やネットに上がっている録音では、流れ出た血が服を半纏のように染めてたと云うのは共通しますが、2016年1月15日付(01)に引いた『怖い話はなぜモテる 怪談が時代を超えて愛される理由に「婦人警官の首の後ろにくさび形の木が刺さってて、鮮血が吹き出してて、着ていた服をみるみる赤く染めて、それがまるで赤い半纏のようだった」とあるのと同様のオチになっています。なお、2016年1月21日付(07)に注意したような「赤い斑点」ではありません。
 録音では、便所の中で婦人警官が発した言葉が早口言葉のような聞き取りづらい言い方になっており、かつ、婦人警官が便所の個室の中でどんな体験をしたのかについては、手紙に「たぶんそうであろうという推測の下に、書かせていただきます」と差出人がわざわざ断って書いていたことになっていて、どうもこうしたディテールを追加することでリアルに聞かせようとしているみたいなのですが、このような細工は私などからするとむしろ興醒めです。――と、書いてみて改めてネットに上がっている録音を聞き直すと、冒頭、この話をリスナーからの手紙で知ってラジオ放送で語った時期を「20年前」或いは「25年前」と言っていて、本書と同じ頃、或いはそれ以前の収録と思われるのですが、ここまで問題にした細部はやはり「赤い半纏〈完全版〉」や『怖い話はなぜモテる 怪談が時代を超えて愛される理由と同じで、この「赤いはんてん」のみが、かなり違っているのです。すなわち「赤いはんてん」が原型で、他のものは改作との考えでここまで述べてみましたが、実はこの点についても少々不安があるのです。(以下続稿)