瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Pierre Loti “Japoneries d'automne”(4)

・角川文庫602『秋の日本』(4)
 訳者のうち村上菊一郎については、詳しい紹介がネット上にあるのだが、一方の吉氷清については生歿年も判明しない。しかし経歴について調べる手懸かりはないでもない。
 すなわち、同じ Pierre Loti の“Pêcheur d'Islande”を吉氷氏は、昭和36年(1961)に吉江喬松(1880.9.5〜1940.3.26)と共訳で出している。但し吉江氏の歿後の初刊である。

氷島の漁夫 (1961年) (岩波文庫)

氷島の漁夫 (1961年) (岩波文庫)

 この岩波文庫氷島の漁夫』は昭和3年(1928)には吉江氏の単独訳で出ていた。そして昭和53年(1978)には、吉氷氏の単独訳で刊行されている。
氷島の漁夫 (1978年) (岩波文庫)

氷島の漁夫 (1978年) (岩波文庫)

氷島の漁夫 (岩波文庫)

氷島の漁夫 (岩波文庫)

 この間の事情については岩波文庫氷島の漁夫』を見て確認したいと思っているが、吉江氏は戦前の早稲田大学教授で、本書の共訳者の村上氏も早稲田大学で吉江氏に学び、戦後、昭和24年(1949)に早稲田大学文学部仏文科専任講師になっている。そして吉氷氏は、昭和34年(1959)刊「早稲田法学会誌」人文編、通号10号75〜104頁に「ロチの名作<氷島の漁夫>の再評価」を、昭和41年(1966)刊「人文論集」通号4号(早稲田大学法学会)65〜155頁に「ルソー「告白」管見」を発表しているから、早稲田大学法学部の語学の教師だったらしく思われるのである。
 さて、本書の由来については、249〜254頁「あとがき」に記述がある。(以下続稿)