・『山怪』の関連本(1)
3月18日付(5)の続き。
東雅夫 編『山怪実話大全 岳人奇談傑作選』二二三〜二三五頁「編者解説」に、昨今の出版界に於ける山岳怪談の盛行について、以下のような説明がある。二二三頁12行め〜二二四頁7行め、
さるにても、ここ数年の「山の怪談」出版ラッシュには、目を瞠らせるものがある。*1【二二三】
田中康弘『山怪』(二〇一五)の記録的大ヒットに先導された、山と溪谷社の通称〈黒い/本〉シリーズが、その台風の眼であることは申すまでもないが、ブームに先駆けて「山の怪/談」の孤塁を守り続けてきた〈山の霊異記〉シリーズ(二〇〇八〜)の安曇潤平しかり、今/夏話題を呼んだcoco・日高トモキチ・玉川数による共著『里山奇談』(二〇一七)しか/り、山というトポスには、人をして異界へと真摯に対峙せしめる何かがあり、結果的に、膨/大な数にのぼる怪談実話の温床となってきたのではないか……そんなことを考えさせられる/昨今の盛り上がりである。*2
以下、編集と収録作品について解説を加えている。――随分目配りが良いなと思っていたら、二二七頁15〜16行めに、
かつて「幽」第八号(二〇〇八年七月)で「山の怪談」を特集した際には、同書から「霊に招ばれた男*3」を復刻掲載したが、‥‥
とあって、東氏が編集長を務めていた怪談専門誌「幽」の特集に10年近く前、安曇潤平(1958.10.15生)の『山の霊異記 赤いヤッケの男』を承ける恰好で「山の怪談」を取り上げていたからであろう。
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『赤いヤッケの男』はMF文庫で読んだことがある。……『山怪』の関連本と題して安曇氏の本を取り上げるのは順序が逆なのだけれども。
さて、話を東氏「編者解説」の山岳怪談盛行についての感想に戻して、――山岳部時代の私は(3月11日付「山岳部の思ひ出(8)」にも述べたように)全くそんな気分にならなかったので、そんな考えを抱いたこともなく、今、山の怪異談を読んでもやはりそんな気持ちにはならない。だからこういう話に興じている人たちと一緒にされるのは何だか迷惑(!)なような心境なのだが、しかしそれにしても少なからぬ関連本が刊行されているのである。(以下続稿)