瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『ゼロの焦点』(4)

関川夏央『昭和三十年代 演習』2013年5月28日第1刷発行・定価1500円・岩波書店・醃+194+6頁・四六判上製本

昭和三十年代 演習

昭和三十年代 演習

 関川氏の書いたものは、新聞の書評欄に連載されていた「本よみの虫干し」を読んでいたし、それより前になるが、谷口ジローと組んだ『『坊っちゃん』の時代』も誰が持って来たのかサークルBOXにあったので読んだ。当時の私は2011年1月1日付「森鴎外『雁』の年齢など」に書いたように、文豪の作品を避けていたので、目を通したと云った程度であまり印象に残っていない。それから2016年9月5日付「山田風太郎『戦中派虫けら日記』(5)」に取り上げた『戦中派天才老人・山田風太郎』を院生時代に読んでいる。――この本については、2016年9月6日付「山田風太郎『戦中派虫けら日記』(6)」に取り上げた森まゆみ『風々院風々風々居士山田風太郎に聞く』 と対比しつつ、もう少々述べて置こうと思っていたのだが、そのままになっている。
 それはともかく、昨年の5月8日、ちょうど1年前になるが、図書館の書棚に本書を見掛けて、手に取って見た。と、前付酈〜醃頁「目  次」の、酈頁の左側、8〜14行め「第二講/「謀略」の時代──松本清張的世界観」が目に入った(25〜58頁)。続いて示される細目には、

社員だから「佳作」/「始末書文学」としての『舞姫』/線路の彼方の自由|/時代の「需要」に見合った作品/「黒幕」について/「点と線」がつなぐ|広域事件/時刻表を「読む」女/無理強いするトリック/歴史から「記憶」|へ/下山国鉄総裁謀殺論/謀略史観を生成する空気/「汽車旅」のリアリテ|ィ/三島由紀夫の強硬な反対

とある(改行位置は「|」で示した)。
 私はまづ「社員だから「佳作」」が気になった。これはもちろん、松本氏の処女作「西郷札」についての記述だが、松本氏はこの懸賞応募について、複数の説明をしていて、関川氏が述べるような単純な事情ではなかったらしいのである。そこでこれについて関川氏を批判しつつ記事にしてみようと思いながら、その複数の記述を集めるのが今の私には少々厄介で、そのままになってしまったのだが、『砂の器』に関する記述も、変なのである。しかしこれも、野村芳太郎監督の映画を見ないことにはおかしいと思ったところをきちんと指摘出来ないのだが、先日『砂の器』のDVDを借りていたときにはすっかり関川氏のことは忘れていて、3月21日付「松本清張『砂の器』(1)」に、末恒駅の美女(?)について書いて、そのまま返してしまった。
 そして今回、やはり図書館で目に留まって久し振りに本書を借りて来て、またざっと目を通してみると、3月に野村芳太郎監督の映画、4月に犬童一心監督の映画を見、その間に原作も読んだ『ゼロの焦点』に関する記述も、おかしいことに気が付いた。そこで、一度頭からきちんと読んでみようと思ったのである。(以下続稿)