瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

閉じ込められた女子学生(26)

・「不思議な世界を考える会会報」(6)
 本文比較の続き。要領は昨日の通り。
【B】夏休み前
70頁5~14行め

 昔、といっても十年くらい前のことらしい。一学期の終業式が終わったあと、現像/室にひとりで入った部員の女の子がいた。写真のコンクールがあるので、作品の仕上/げをしてしまおうと思ったのだ。
 暗い中に閉じこもったまま夢中になっていて、どれだけ時間がたったのか、女の子/は気がつかなかった。やっと気に入った作品ができあがり、あ、もうこんな時間、急/いで帰らなくちゃ、と現像室を出ようとしたところ、ドアが開かなかった。
 押しても引いても動かない。というのも、女の子が現像に夢中になっている間に見/回りの人が来て、中に人がいるなんて思いもせず、外からカギをかけて帰ってしまっ/たのだ。女の子は必死でドアを叩いたり、大声をあげたりしたけれど、もう校内には/だれもいなくて、そしてそのまま学校は夏休みに入ってしまった。


 時期については出典について検討する際に述べることとします。
25頁2~11行め・121頁4行め~122頁6行め

 昔、一学期の終業式が終った後、写真部の現像室*1に女の子が一人|で入って、写真を現像してい/たそうです。現像室は、廊下*2に面してい|ます。そして、ふだんは、写真部以外の生徒が入らない/ように、錠*3が|してあります。写真部の生徒は、その錠を化学研究室から持ってき|て、現像室を開/け閉*4めしていたわけです。
 終業式が終った後、その女の子は一人でコンクールに出す作|【121】品を現像していました。そんな事/を全*5くしらない用務員*6さんは、夕方|の見回りの時、いつものようにその現像室に錠をかけてしま/いまし|た。女の子は一生懸命*7現像を続けていたので錠をかけられたこ|とを気づかずにいたそう/です。*8
 やっと気に入った作品が仕上って、|帰ろうとした時にはもう学校には誰*9一人いなくて、錠をか/けられた|まま、女の子はそこから出られなくなってしまいました。


 ③④では「終業式が終った後」が繰り返されています。現像室の位置を説明したために繰り返すことになったのですが、正直、現像室がどのよう位置にあるのか、よく分かりません。暗室には窓が必要ありませんから、化学室や化学研究室に近い、廊下側の一画を暗室にしていたのでしょう。しかし「錠を科学研究室から持ってきて」と云うのがよく分かりません。これは「錠」ではなく「鍵」ではないでしょうか。かつ、ドアに組み込まれた錠であれば、外側(廊下側)から鍵を使って施錠されたとしても、内側(室内)からはサムターンで鍵なしで解錠出来るのではないでしょうか。内側から解錠出来ないとすれば南京錠なのでしょうか。すなわち、もともと鍵の掛からない倉庫か何かに使っていた窓のない小部屋を、ドアの廊下側とドア枠に取り付けた掛金に南京錠で施錠出来るようにして、だから内側からは開けられなかったのだと。しかし、それだと施錠しなくても、掛金を掛けるだけで簡単に閉じ込められてしまいます。物騒なことこの上ない。いえ、南京錠であれば解錠して女子生徒が暗室内に持ち込んでいるはずですから、用務員が見回ったときに南京錠が掛かっていなければ、声を掛けて(ドアを開けたら大変です)確認するだろうと思うのです。暗室はそんなに広くはないでしょうから、幾ら集中していてもドアを叩いて声を掛けられたら気付きそうなものです。だとすると、やはりドアに組み込まれた錠であったのでしょうか。しかし、化学準備室で鍵を保管しているような部屋を、用務員が勝手に施錠してしまえるものでしょうか。いえ、女子部員が暗室のドアを解錠したら、そのまま鍵を室内に持ち込んだはずなので、用務員はどこから鍵を持って来て施錠したのでしょうか。――とにかく、この文章からでは部屋の構造も、どんな錠前であったのかも、よく分からないのです。そこでは暗室の位置と鍵をどうしたかについては排除して、あっさりと済ませております。ここを合理化しようとしても、もともと弱かった点を増幅するだけに終わるでしょうから。その代わりに、読物として盛り上げるべく、どれだけ女子生徒が「夢中に」なっていたか、そして出られなくなってからどれだけ「必死で」助けを求め、出ようと努力したかを強調して見せるのです。(以下続稿)

*1:④ルビ「[げんぞうしつ]」。

*2:④ルビ「[ろうか]」。

*3:④ルビ「[じよう]」。

*4:④ルビ「[し]」。

*5:④ルビ「[まつた]」。

*6:④ルビ「[ようむいん]」。

*7:④ルビ「[いつしようけんめい]」。

*8:④はここで段落分けせず詰める。

*9:④ルビ「[だれ]」。