瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

日本の民話『紀伊の民話』(23)

・「おじさんの話」(3)
 前回、①偕成社『少年少女/現代創作民話全集』版(1971)、②講談社松谷みよ子全集』第十二巻(1972)、③『偕成社の創作』版(1986)、④講談社松谷みよ子の本』第4巻(1995)について眺めました。さらに初出の⓪日本教職員組合日教組教育新聞」版(1967~1970)を比較し、松谷氏の長兄・松谷春男(1920~2009)が挿絵を担当している⓪と①で、描直し・描替え或いは流用などがあるのかも検証したいところですが、今、国立国会図書館まで出掛けて各回の複写を取る余裕もありませんので、今後の課題もしくはどなたかにお願いしたいと思っております。
 いえ、松谷氏の再話については、昨年3月、フリーアナウンサーの来栖史江(1966.9.10生)が学位論文「松谷みよ子 昔話の再話と民話系創作文学の研究 ―昭和30年~昭和45年―」を提出していることを知りました。来栖氏はこの論文で博士号を取得して2017年4月に入学した梅花女子大学大学院大学院文学研究科児童文学専攻を修了、今年度から田辺聖子の母校である大阪樟蔭女子大学児童教育学部児童教育学科の准教授に就任しております。院生時代に「梅花児童文学」に、松谷氏の「三枚のお札」と「山んばの錦」の再話に関する論文を発表しており、これを核にして初期の松谷氏の再話・民話系創作文学について概観したものと思われますが国立国会図書館デジタルコレクションの「国立国会図書館限定公開」ですので、閲覧出来ておりません。自分の博士論文を公刊・公開するつもりのない私*1が言うのもナンですが、公刊されて検討の機会が与えられるのを待ちたいと思っております。
 さて、本作は⓪30篇①19篇②③26篇④29篇と変遷しておりますが、成立の事情などは、前々回の最後に触れた伊藤英治 編『松谷みよ子の本 別巻 松谷みよ子研究資料7~157頁「松谷みよ子の本」編集メモ」40頁下段8行め~47頁下段7行め「第4巻 童話・詩・全1冊」43頁上段15行め~44頁上段13行め「3 『鯨小学校おじさんの話』」に纏めてあるのですが、43頁上段16行め~下段10行め《収録作品》に29題を列挙、初出の連載では30題であったことに触れ、続く下段11行め~44頁上段13行めが《出版の変遷》、これは色々問題がありますので長くなりますが下段12行めから後を抜いて置きましょう。

日教組教育新聞」の連載から、第一単行本として『木/やりをうたうきつね―おじさんの話』(一九七一年、偕成/社)が出版されます。「こうもりがさのてんぐさん」「お/せん」「ウメボシだぬき」「ネス湖の竜は……」「黄金の沼」/「おしるこの煮えるまで」「仙人の話」「雪おなご」「かわ/いそうなきつね」の九作品は未収録です。次いで講談社/版『松谷みよ子全集第十二巻 おじさんの話―鯨小学校 /ほか』(一九七二年)の出版の折、「こうもりがさのてん/ぐさん」「ウメボシたぬき」「ネス湖の竜は……」「仙人の/話」「雪おなご」「かわいそうなきつね」の六作品を補遺。/【43】この講談社版全集から、偕成社は一九八六年に書名も変/更して、新版『鯨小学校―おじさんの話』を出版。『松谷/みよ子の本第4巻』は偕成社版新版を底本とし、偕成社/版にこれまで収録されていなかった「おせん」「黄金の沼」/「おしるこの煮えるまで」の三作品を加えて、発表当時の/『鯨小学校―おじさんの話』の全体を再現し、定稿としま/した。「チキンカムカム」(一九六七年十二月五日号)は、/「今のむかし 日本は二十四時間」と改題改稿して「びわ/の実学校」第二十七号(一九六八年三月十五日)に再発/表されているので未収録としました。この短編は後に講/談社版『松谷みよ子全集第十巻』(一九七二年、講談社)/に収録。『松谷みよ子の本第4巻』の第Ⅰ部短編の「日本/は二十四時間」がそれです。


 ①に収録されていないのが9篇とするのは④「初出と底本」と同じ。しかし実際には「年神さまとびんぼう神さま」も収録されていないので10篇が正しい。
 この辺りを159~452頁「松谷みよ子全著作目録」162~258頁「単行本」162頁上段~188頁下段6行め「創作」で確認すると、①165頁上段21行め~下段8行め『木やりをうたうきつねおじさんの話』には「収録作品」として19題、②166頁下段5~15行め『松谷みよ子全集12 おじさんの話鯨小学校 ほか』は26題、すなわち「六作品を補遺」ではなく、ここでもう1篇「年神さまと貧乏神さま」も加えてあるので合計7篇です。③174頁下段6~17行め『鯨小学校おじさんの話』も26題、④179頁下段18行め~181頁上段4行め『松谷みよ子の本第4巻 童話・詩・全1冊』に29題、――ここの記載は正しい。しかし「編集メモ」と④「初出と底本」とどちらが正しいのかは、①②③を揃えないと「年神さまとびんぼう神さま」がどの時点で収録されたのかが決定出来ません。実物を見ないと本当に「松谷みよ子全著作目録」が正くて、「編集メモ」と④「初出と底本」が誤りであるとは、断言出来ませんから。
 なお「松谷みよ子全著作目録」259~411頁「編纂出版物・雑誌・新聞」266頁上段14行め~291頁下段5行め「創作(雑誌・新聞)」を見ると、278頁下段9~10行め、

「おじさんの話 チキンカムカム」=「日教組教育新聞」一九/ 六七年十二月五日 松谷春男え 日本教職員組合

の4つ後に、下段18~19行め、

「今のむかし 日本は二十四時間」=「びわ実学校」第二十/ 七号 一九六八年三月十五日 小曾根巴え びわのみ文庫

とあります。松谷氏は同じ話を、同じ題、或いは違う題で繰り返し書いたり、使い回したりする癖がありますので、出来れば松谷みよ子の本』別巻には作品名・地名・人名の索引を入れて、検出し易くして欲しかったのですが、巻末に39頁(左開き・横組み)の「松谷みよ子の本/収録作品総索引」があるばかりで、何となく当りを付けて眺めて行くしかありません。
 そんな訳で隅々まで見た訳ではありませんが、「松谷みよ子全著作目録」259~411頁「編纂出版物・雑誌・新聞」329頁上段7行め~388頁下段10行め「解説・評論・随筆等」を眺めて行きますと、339頁下段18~19行めに、

随筆「チキンカムカム」=「英語研究」一九七二年三月号(第/ 六十巻第十二号)三月一日 研究社


 350頁上段2~3行めに、

随筆 私の風土記「民話(6)チキンカムカム」=「読売新聞」/ 一九七九年一月十一日(夕刊)

が見え、「日本は二十四時間」は次の本にも収録されております。
・日本の民話 12『現代の民話』瀬川拓男・松谷みよ子(昭和四十九年一月二十五日 初版発行・角川書店・270頁・17.2×15.4cm 上製本

 229~236頁「日本は二十四時間」、末尾(236頁15~16行め)に下寄せで「 東京都 /松谷みよ子」とあります。ざっと見たところ『松谷みよ子の本』第4巻344~351頁「日本は二十四時間」と同じなのですが、それもそのはずで、267~270頁、大島広志「参考資料」の最後(270頁上段17~20行め)に、

 なお、本文中「不思議なきのこ」は、講談社/版松谷みよ子著『日本の伝説・3』より、「日/本は二十四時間」は、同『松谷みよ子全集・4』/からそれぞれ転載いたしました。

とあって、確かに全く同じもののはずなのです。しかしこの角川書店版『日本の民話』への『松谷みよ子全集』からの転載は、『松谷みよ子の本』第4巻及び別巻を見ても(かつ『松谷みよ子全集』は第四巻ではなく第十巻なので、第四巻を借りても載っていないので)分かりません。いえ、そもそも探せません。もちろん『日本の民話』の松谷氏担当の話は「松谷みよ子全著作目録」に載せてありますけれども、何度も出て来るのに索引がないのでそれを見付けて行くのが厄介で、かつ、どういう来歴なのかは一々現物に当たらないと分からないのです。まぁ、同じだろう(また使い回しているのだろう)と見当は付きますが。

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 後半は余談ですが『松谷みよ子の本』別巻等を眺めているうちに「チキンカムカム」についても幾つか目に付きましたので、序でにメモしておいた次第。――まだ見落しがあろうかとは思いますが。(以下続稿)

*1:そのままではとても出せませんので、当ブログに言い訳じみた註釈付きで連載するつもりではあるのですが。