瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

日本の民話『紀伊の民話』(12)

 さて、こうして松谷氏が同じ主題について書いた文章には種々変遷があることが分かって来ると、立風書房(及びちくま文庫)版『現代民話考』の基になった雑誌「民話の手帖」に連載された「現代民話考」を、どうしても見たくなるところです。しかしながら、5月14日付(06)に述べたように「雑誌「民話の手帖」の情報はネット上に乏しく」検索しただけでは「俄に「天狗」が何号に載ったかを突き止めることが出来ませんでした」。が、その直後に借りた松谷みよ子の本 第7巻 小説・評論・全1冊を見るに、5月22日付(07)に見たようにこの本の「第Ⅱ部:評論」の後半に「現代民話考」として、単行本の「テーマ考察の「前文」と「あとがき」のみ」が再録されているのですが、743~749頁「初出と底本」748頁3行め~749頁16行め「現代民話考」に、知りたかった【初出】について纏めてあったのです。
 序でに、既に当ブログに掲出済みのものも少なくありませんが各巻の書影も示して置きましょう。
第1巻『河童・天狗・神かくし』
・「河童」
 =「季刊 民話の手帖」第九号 日本民話の会編 一九八二年四月一日 第一法規
・「天狗」「神かくし」
 =「民話の手帖」第四号 民話の研究会編 一九七九年十月十日 蒼海出版、
 「季刊 民話の手帖」第十九号 日本民話の会編 一九八四年四月一日 第一法規
 「季刊 民話の手帖」第二十三号 日本民話の会編 一九八五年四月一日 国土社

※『現代民話考 Ⅰ』(通巻第1巻)一九八五年八月十六日 立風書房
第2巻『軍隊』
 =「季刊 民話の手帖」第十一号 日本民話の会編 一九八二年十月一日 第一法規
 「季刊 民話の手帖」第十三号 日本民話の会編 一九八二年十二月三十日 第一法規
 「季刊 民話の手帖」第二十五号 日本民話の会編 一九八五年十月一日 国土社※『現代民話考 Ⅱ』(通巻第2巻)一九八五年十月六日 立風書房
第3巻『偽汽車・船・自動車の笑いと怪談』
・「偽汽車」=「民話の手帖」第二号 民話の研究会編 一九七八年十月一日 蒼海出版、
・「船」=「季刊 民話の手帖」第二十四号 日本民話の会編 一九八五年七月一日 国土社、
・「自動車の笑いと怪談」
 =「季刊 民話の手帖」第二十一号 日本民話の会編 一九八四年十月一日 第一法規※『現代民話考 Ⅲ』(通巻第3巻)一九八五年十一月二十五日 立風書房
第4巻『夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』
・「夢の知らせ」
 =「民話の手帖」第七号 日本民話の会編 一九八一年四月十日 蒼海出版、
・「火の玉」
 =「民話の手帖」第三号 民話の研究会編 一九七九年四月十日 蒼海出版、
・「ぬけ出した魂」
 =「季刊 民話の手帖」第十八号 日本民話の会編 一九八三年十二月三十日 第一法規
 「季刊 民話の手帖」第十九号 日本民話の会編 一九八四年四月一日 第一法規※『現代民話考 Ⅳ』(通巻第4巻)一九八六年一月二十日 立風書房
第5巻『あの世へ行った話・死の話・生まれかわり』
・「あの世へ行った話」
 =「民話の手帖」第七号 日本民話の会編 一九八一年四月十日 蒼海出版、
・「生まれかわり」
 =「季刊 民話の手帖」第十九号 日本民話の会編 一九八四年四月一日 第一法規※『現代民話考 Ⅴ』(通巻第5巻)一九八六年二月十五日 立風書房
第6巻『銃後』
 =「季刊 民話の手帖」第二十八号 日本民話の会編 一九八六年七月一日 国土社、
  「季刊 民話の手帖」第二十九号 日本民話の会編 一九八六年十月一日 国土社※『現代民話考 第二期Ⅰ』(通巻第6巻)一九八七年四月六日 立風書房
第7巻『学校』
 =「民話の手帖」第五号 民話の研究会編 一九八〇年四月十日 蒼海出版、
・「子どもたちの銃後」
 =「季刊 民話の手帖」第三十一号 日本民話の会編 一九八七年四月一日 国土社※『現代民話考 第二期Ⅱ』(通巻第7巻)一九八七年六月九日 立風書房
第8巻『ラジオ・テレビ局の笑いと怪談』
・「笑いと怪談」
 =「民話の手帖」第八号 日本民話の会編 一九八一年十月十日 蒼海出版※『現代民話考 第二期Ⅲ』(通巻第8巻)一九八七年十月九日 立風書房
 最後(749頁14~16行め)に次の註記があります。

*「あとがき」は全て各巻(底本)が初出。雑誌「民話の手帖」の初出稿は単行本出版にあたり、大幅に加筆・改稿されており、「考察」メモ又は/ 「原型」稿ともいうべきものです。『現代民話考』は出版当時、「第一期」、「第二期」と区分して出版されましたが、一九八九年秋の版より通/ 巻で全8巻となっています。


 そうするとやはり「民話の手帖」掲載稿と単行本『現代民話考』掲載稿ではかなりの違いがあるらしく、私としては「民話の手帖」も一応見て置かないといけない、と思わされたことでした。
 いえ、実際に見て、単行本のみに拠るのは危うい、と思わされたことでした*1
 そのことは次回に述べることとしましょう。――ところで『現代民話考』はその後4巻続刊されて全12巻となっております。続刊分については伊藤英治 編『松谷みよ子の本 別巻 松谷みよ子研究資料よりも前に出ていますので、これを見れば同様のリストを作成することが出来ましょうか。しかし返却期限が来て返してしまったところなので手許にありません。今度出掛けた折に借りて、確かめることとしましょう。(以下続稿)

*1:一例を挙げて置こう。――「「あとがき」は全て各巻(底本)が初出」とするが、これは正確ではない。何となれば、第8巻『ラジオ・テレビ局の笑いと怪談』の「雑誌「民話の手帖」の初出稿」は、むしろ「あとがき」の方の「「原型」稿」となっているからである。かつ、雑誌にはほぼ正確に書いていた出演番組について、単行本では誤った記憶もしくは資料の誤読に拠る間違いを書くなどしており、詳細は別に報告するつもりだが、『現代民話考』の利用に当たっては(読み飛ばす分には構わないでしょうが)初出や関連稿も参照すべきことを改めて注意して置きたい。もちろん、松谷みよ子松谷みよ子年譜」もそのまま使うのは危険である。【6月18日追記】『ラジオ・テレビ局の笑いと怪談』の「あとがき」については6月18日付「現代民話考 第二期 Ⅲ『ラジオ・テレビ局の笑いと怪談』(01)」に検討した。