・岩波文庫31-005-7『山椒大夫・高瀬舟 他四篇』(2)
②では続いて斎藤茂吉「解説」145〜155頁があるが③では157〜168頁である。末尾に(昭和十三年六月十日)とある。③にはこの前の147〜156頁「注」があるが、②にはこのような語注はない。②の最後、157〜160頁に「注解」があるが、これについては160頁の最後に以下のようにある。
〔本書は昭和十三年発行の岩波文庫版を底本とし、岩波版鴎外全集を参照しつつ、/現代表記に改めたものである。なお「魚玄機」「寒山拾得」の漢詩文に付した読み/下し及び注解は清水茂氏によるものである。〕
この注解は「魚玄機」と「寒山拾得」の漢詩の解釈なのだが、後者は鴎外の小説には漢詩文は引かれていないので、斎藤氏の「解説」に引かれたものに対する注解である。③にはこれに該当するものがない。
③でも漢詩文の書き下しは②と同じく〔 〕に入れて本文中に挿入されているが、その担当者は示されていない。すなわち、169〜174頁に「森鴎外略年譜」の次の、頁付のない頁にある〔編集付記〕、末尾に(岩波文庫編集部)とあるものだが、これに「一、底本には、『鴎外歴史文学集』第三・四巻(一九九九年一一月・二〇〇一年六月、岩波書店刊)/を用いた。/……」とあって、それ以上の情報は示されていない。
この書き下し文を比較して見るに、斎藤氏「解説」の「寒山拾得」の方は②③一致しているが、鴎外の小説「魚玄機」に付された書き下し文は異なっている。書き下しの示し方も、漢詩文の一部を文中の「 」内に引用したものにはその後の〔 〕内に書き下しを示すのは同じだが、漢詩を省略せずに②2字下げ③3字下げにして示した場合には、③では漢詩を句ごとに改行して、上段に白文、下段に書き下し文を示すが、②は改行せずに句ごとに句点(。)で切って全部を示し、その次に改行した上で〔 〕に書き下し文を、句読点(。、)で句切りつつ示すという風に違っている。