瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子『日出処の天子』(12)

 前回引いた『日出処の天子』連載をめぐっての出版社側の懸念ですが、これについては作者側の回想もあります。
日出処の天子<完全版>第7巻(2012年4月23日初版第1刷発行・定価1500円・メディアファクトリー・339頁)

 カバー背表紙最上部と奥付最上部に「MFコミックスダ・ヴィンチダ・ヴィンチシリーズ」とあって、本の形態は2月2日付「山岸凉子『アラベスク』(03)」に示した『アラベスク』完全版に同じです。
 この最終巻の最後、322〜330頁(頁付なし)に載る「日出処の天子』<完全版>全7巻完結記念山岸凉子ロングインタビュー」から抜いて置きましょう。
 ちなみにこのインタビューは、奥付の上部の(初出誌)に

            「山岸凉子ロングインタビュー」
『ダ・ヴィンチ』2012年1月号掲載のインタビュー記事に、大幅に加筆・再構成したものです。

とあり、330頁末尾(下段21行め)に「インタビュー実施日:2011年11月、山岸凉子氏自宅にて」とあります。

ダ・ヴィンチ 2012年 01月号 [雑誌]

ダ・ヴィンチ 2012年 01月号 [雑誌]

 初出誌は未見。
 322頁の上中段2段ぬきの題(2行)に続いてゴシック体のリード文(4行)があって、7行めに小さく「取材・文/瀧 晴巳」とあります。6つの節に分かれていますが、3つめの節(327〜328頁上段13行め)に、以下のような発言が、327頁上段18〜20行め「 白泉社の少女漫画誌『LaLa』で『日/出処の天子』が連載されたのは80年4月/号〜84年6月号。」の1段落を前置きにして、なされています。中段1〜13行め、

 「編集部には最初すごく反対されまし/た。聖徳太子といえば、当時の一万円/札のあの髭面しか頭に浮かばないから、/いったい何を描くつもりなのかと。し/かも初回の厩戸の登場の仕方があのよ/うな形ですから、もう大不評。あの頃/はBLなんて誰も認めてないし、これ/は男同士の恋愛の話になりそうだと編/集部中が警戒して、かろうじて初回の/ラストに巻物が浮き上がるシーンがあ/ったので、もしや超能力の話になるの/か?ということで我慢してもらえたよ/うでしたね」*1


 小長井氏の回想では「あの髭面」を漫画にして「ウケ」るのか、という疑念だけでなく、かつての「貴い存在」を漫画にすることに反撥があるのでは、との懸念が大きかったようです。それはともかく、この回想では編集部中が反対していたようで、小長井氏の回想にある、小森正義編集長の強い推奨には触れるところがありません。推奨はしたもののやはり「警戒」はしていた、ということでしょうか。――小森編集長の「推奨が強く」とは、どこまで作者の意図を理解してのものだったのでしょうか。(以下続稿)

*1:ルビ「しょうとくたいし・うまやど」。