前回引いた『日出処の天子』連載をめぐっての出版社側の懸念ですが、これについては作者側の回想もあります。
・日出処の天子<完全版>第7巻(2012年4月23日初版第1刷発行・定価1500円・メディアファクトリー・339頁)
日出処の天子 〈完全版〉/第7巻 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
- 作者: 山岸凉子
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2012/04/23
- メディア: コミック
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この最終巻の最後、322〜330頁(頁付なし)に載る「『日出処の天子』<完全版>全7巻完結記念/山岸凉子ロングインタビュー」から抜いて置きましょう。
ちなみにこのインタビューは、奥付の上部の(初出誌)に
「山岸凉子ロングインタビュー」
『ダ・ヴィンチ』2012年1月号掲載のインタビュー記事に、大幅に加筆・再構成したものです。
とあり、330頁末尾(下段21行め)に「インタビュー実施日:2011年11月、山岸凉子氏自宅にて」とあります。
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/12/06
- メディア: 雑誌
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322頁の上中段2段ぬきの題(2行)に続いてゴシック体のリード文(4行)があって、7行めに小さく「取材・文/瀧 晴巳」とあります。6つの節に分かれていますが、3つめの節(327〜328頁上段13行め)に、以下のような発言が、327頁上段18〜20行め「 白泉社の少女漫画誌『LaLa』で『日/出処の天子』が連載されたのは80年4月/号〜84年6月号。」の1段落を前置きにして、なされています。中段1〜13行め、
「編集部には最初すごく反対されまし/た。聖徳太子といえば、当時の一万円/札のあの髭面しか頭に浮かばないから、/いったい何を描くつもりなのかと。し/かも初回の厩戸の登場の仕方があのよ/うな形ですから、もう大不評。あの頃/はBLなんて誰も認めてないし、これ/は男同士の恋愛の話になりそうだと編/集部中が警戒して、かろうじて初回の/ラストに巻物が浮き上がるシーンがあ/ったので、もしや超能力の話になるの/か?ということで我慢してもらえたよ/うでしたね」*1
小長井氏の回想では「あの髭面」を漫画にして「ウケ」るのか、という疑念だけでなく、かつての「貴い存在」を漫画にすることに反撥があるのでは、との懸念が大きかったようです。それはともかく、この回想では編集部中が反対していたようで、小長井氏の回想にある、小森正義編集長の強い推奨には触れるところがありません。推奨はしたもののやはり「警戒」はしていた、ということでしょうか。――小森編集長の「推奨が強く」とは、どこまで作者の意図を理解してのものだったのでしょうか。(以下続稿)
*1:ルビ「しょうとくたいし・うまやど」。