瑣事加減

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『吉野賛十探偵小説選』(1)

・論創ミステリ叢書65『吉野賛十探偵小説選』2013年7月15日初版第1刷印刷・2013年7月30日初版第1刷発行・定価3600円・論創社・368頁・A5判上製本

吉野賛十探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

吉野賛十探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

・横井司「解題」353〜368頁
・355頁下段21行め〜356頁上段1行め「‥‥。吉野の/伯父にあたる作家の一瀬直行も‥‥」
・359頁上段18行め〜下段2行め「‥‥、やはり/浅草に住み、下町の人々を描くことに長けていた伯父・/一瀬直行の影響を見ることも可能だろう。」
 一瀬直行(1904.2.27〜1978.11.14)は、吉野賛十(本名永田東一郎、1903.1.25〜1973.10.15)の「伯父」ではなく「義兄」である。346〜352頁に附載される長女・日野多香子「父の物語 書くこと一筋の人生だった!」は、末尾(352頁下段19〜20行め)に「 (この原稿は、「児童文芸」二〇〇八年八・九月号に掲/載の「父の物語」を加筆・修正したものです)」とあるように、児童文学者たちが父親について回想した「児童文芸」誌のリレー連載を元にしている。それはともかく、346頁上段4〜6行め、

 父が母と結婚することになったのは、母の兄で、浅草/にある瑞泉寺の住職、一瀬直行も作家だったから。この/伯父は小説「隣家の人々」で中山義秀芥川賞を争った。/‥‥

とあって「伯父」と云うのは吉野氏の娘・日野多香子(1937生)から見てのことである。
・随筆篇(331〜344頁)
・332〜335頁「盲人その日その日――盲学校教師のノート
 これは別に間違いを指摘すると云うのではなく、注意して置きたいと思ってのメモである。
 4つの節に分かれている最初、332頁上段2行め〜下段13行め「可視の世界」に、上段6〜8行め

 人づてにきいたのだが、なくなった作家横光利一は、/頗る目がよく、和田倉門の濠端に立って、東京駅の時計/がよめたという。‥‥*1

とあるのは、本当だろうか。初出は横井司「解題」を参照するに、366頁下段18〜19行め「『探/偵倶楽部』一九五五年一二月号(六巻一二号)」で、横光利一(1898.3.17〜1947.12.30)の死去からまだ10年経っていなかった。(以下続稿)

*1:ルビ「わだくらもん・ほりばた」。