瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

新海誠『君の名は。』(2)

 昨日の続き。
 私がおかしいと思うようなことくらいは、恐らく他にもおかしいと思った人もいるだろうから、今更書くに及ばないだろうとは思うのだけれども。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 ヒロインの通っていた高校の脇までが何も残らない程破壊され、高校の校舎が無傷で残っているのを見て、主人公は高校に避難させるプランを思い付く、のだったと思うのだ(もう記憶が曖昧だ)が、直径数kmの窪地(湖)を作るほどの隕石が間近に落ちて、その脇の建物が無傷でいられるはずがない。吹き飛ばされずに済んで原型を止め得たとしても、空気振動の衝撃波と続く爆風で窓ガラスは全て割れ、中にいた人たちは、場所によっては広島の被爆者の、窓側の皮膚に硝子片が無数に突き刺さったのと同じようなことになっただろうし、上手く爆風の直撃を免れても、かなりの衝撃を受けることとなったはずである。校庭に避難していた人が助かったような描写がなされていたが、全員吹き飛ばされて、頭部や四肢がバラバラに飛び散ったことだろう。一応、周囲が爆風に襲われる描写はあったが、あの爆風でも人体が耐え得るとは思えないのである*1。従って、直撃されなければ助かる、みたいな浅墓な発想は、あまり頭の良くない主人公及びヒロインのものとして正しい、と思う。けれどもその結果として、ヒロインが助かった、と云うことには、当然ならないと思うのである。いや、当初の、主人公が歴史を書き換える前の「500人死亡」と云うのも、町の大きさから推して直撃された神社やその周辺にいた人間に限定されそうに見えるのだけれども、実際には糸守町民はヒロインの父(糸守町長)が避難を妨害しようがしまいが、相当強固な構造物や山の陰にいた少数の人間を除いてほぼ全滅*2、さらに周囲にも被害が及んで死者数は少なくとももう1桁多い、――そのくらいにはなったろうと思うのである。
 だから、あるべき結末としては、避難を呼び掛けたものの結局殆ど助からず、5年後に山の陰にいて爆風の直撃を免れて助かった糸守町民が*3、隕石落下のかなり前に謎の爆発と停電があったこと、そして防災放送で神社から高校への避難を呼び掛けていたことを、隕石災害当時の謎として証言し、その記事を読んだ、或いは映像を見た主人公が、自分がこの殆ど役に立たなかった避難呼掛けに関わっていたような気がして涙が止まらなくなり、それを切っ掛けに深く自分と繋がっていた(ような気が、何故かする)糸守の高校の女子生徒の姿を鮮明に思い浮かべて、心の中で呼び掛ける。――「君の名は。」と。……みたいな。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 それ以上に、私などが何とかして欲しいと思うのは、題名である。『君の名は。』と菊田一夫のラジオドラマ『君の名は』と、紛らわしい。
 他にもヴィレッジ・シンガーズ及び島谷ひとみの「亜麻色の髪の乙女*4」と Claude Debussy の Préludes 1livre VIII “La fille aux cheveux de lin(亜麻色の髪の乙女)”、漫画『銀の匙』と中勘助の『銀の匙』、2014年4月19日付「芥川龍之介「人を殺したかしら?」(1)」に触れた「真木洋子」と「真木よう子」、2017年5月19日付「高梨みどり『Order-made』(2)」に触れた女優の「上原美佐」も実は3人いて、他にも Wikipedia曖昧さ回避のためのページが作成されている語句は大量に存在するのだけれども、出来れば避けて欲しかったと思うのである。

*1:だから伏せるのだが、そのような体勢を取って爆風に備えるような描写はなされていなかった。

*2:中途半端な避難で死骸が残った分だけ、むしろ凄惨な状況になったであろう。

*3:或いは、高校に避難した中で奇跡的に生存した町民が、5年経ってようやく喋れるくらいに回復して。

*4:長野県北佐久郡御代田町に現れたヴィレッジ・シンガーズの、本物より歌が上手かった偽者の「亜麻色の髪の乙女」をもう1度聞きたい。