瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

今野圓輔『怪談』(4)

 昨日の続き。
 今回は現代教養文庫版にない「あとがき」が中公文庫版にあることと、現代教養文庫版の巻末、209〜216頁「参考文献」が、中公文庫版の小池壮彦「解説」の3節め、227〜236頁「三・旧版掲載の参考文献について」に改編されていることについて見て置く。
 すなわち、中公文庫版227頁2〜5行めに、

 本書旧版では、昭和五十年時の増刷を機にあとがきが省かれ、代わりに参考文献のリス/トが増補された。以下にそれを掲げるにあたり、文献の発行データは平成十七年現在のポ/ピュラーな情報に差し替えた(※は古書で入手可)。紹介文は旧版に記された今野圓輔の/コメントからの抜粋である。また解説執筆者の判断で適宜[追記]を加えた。

とあって、参考文献の書目は減らしていないが、記載内容が変わっている。
 「あとがき」を省いたことについては、現代教養文庫版「参 考 文 献」の前置き文(209頁2〜5行め)にも、

 本書の本文は初版発行当時のままだが、当時の「あとがき」ははぶき、また、こんどの増刷を/機に、参考文献だけは最新のものにさしかえた。柳田・折口両先生の論文以外は、いずれも拙著/初刷発行後の刊行によるもの。各学会誌などの個々の学術論文は避け、入手しやすいことを前提/に市販の単行本や特集号雑誌など一般読者向けを主とした。Sは発行年号の昭和、Pはページを/示す(昭和50年4月記)

とある。中公文庫版の小池氏の「解説」では「あとがき」を省いた「代わりに参考文献のリストが増補された」ように読めるが、現代教養文庫版によれば、初刷以来「参考文献」があって、昭和50年(1975)の増刷時に「最新のもの」――柳田國男折口信夫「両先生の論文以外は‥‥初刷発行後の刊行によるもの」に「さしかえた」らしく読める。そうすると、小池氏が「参考文献のリストが増補された」と云うのは、実は「リスト」の一部に「最新のもの」が「増補された」と取るべきか、と思われて来る。――もうこうなったら、昭和50年よりも前の版を見るしかなさそうである。
 それはともかく、今野氏がここに「入手しやすいことを前提に」して選択していることを考慮に入れるならば、中公文庫版が同じ観点から情報を更新したのは、著者の意を確かに汲んだもの、と云えそうである。(以下続稿)