瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

今井正監督『ここに泉あり』(08)

・日本シナリオ文学全集・9『水木洋子集』(5)
 昨日の続きで、各シーンごとに登場人物を拾って行けば良いのだが、手間が掛かって今日中に済みそうにないので、6月18日付(04)に取り上げた、ピアニストとして本人役で出演した室井摩耶子の出演シーンについて、確認して置こう。
 映画で室井氏の名前が取り沙汰されるのは、まづポスターである。――既に張り紙がある電柱らしきものにポスターを貼る黒髪豊かな男性の後頭部、左に明朝体のレタリングで白く縦に「一年後」の文字が出る。ポスターにはやや縦長のゴシックのレタリングで次のようにある。

財団法人結成記念 後援教育委員会
    市民フイルハーモニー
    東 京 管 弦 楽 団
     合同演奏会
 
 指 揮 山田耕筰
 ピアノ 室井摩耶子
          曲目
  1.「前奏曲交響詩 第三番………………リスト
  2.ピアノ協奏曲 第一番………チャイコフスキー
  3.交 響 曲 第 四 十 番………モーツアルト
 
 7.12 PM6.00 市民会舘


 1行めと最後の行が左右に若干余裕を残して幅一杯に文字を入れる。4行めが一番大きく、1行め(「後援」は1字めが上寄せ、2字めが下寄せ)と曲目の文字は小さい。「第」は略字「㐧」。最後の行の開催日時(数字とピリオド)は縁取りした白。
 続いて、場所を変えて3度写されることで市内各所にこのポスターが張り出されていることを表現している。
 4階建ての会場の入口門柱にも立て看板が立て掛けてある。文字は読みづらいが、縦書きで「〈市民フイルハーモニー/東 京 管 弦 楽 団〉合同演奏会」とあり、右に恐らく「財団法人結成記念」云々、左に開催日時等が書かれているものと思われる。
 脚本ではこの場面、198頁上段4〜12行め、

 
54  (F・I)講堂の前通り
   七月の真昼。
   講堂前にポスターと立看板。
    財団法人結成記念 縣教育委員会後援
     市民フィルハーモニー
     東京管弦楽団 合同演奏会
      指 揮 山田 耕筰
      ピアノ X   子
 

とあって、脚本の段階ではピアニスト役は未定で「X子」――岸惠子演ずる速水かの子の敵役(ライバル)と云うことで、女性とだけ決まっていたのである。(以下続稿)