昨日の続き。
・石井敦 編著『簡約日本図書館先賢事典(未定稿)』(3)
もちろん、石井氏は不完全であることを謙退しつつも、4頁23~25行め「‥‥,/今回のチャンスに,少しでも多くの研究者に役立てば,/と,全くの未定稿のままだけれど,お贈りすることに/した。」とて意義あるものとの自信を覗かせてもいる。
とにかく、前回ざっと眺めた「まえがき」の記述から、「簡約」を冠しているのは本当に簡約に造っているからで、そして未定稿と断った上で敢えて刊行した理由についても、ほぼ諒解出来たように思っていたのだが、「あとがき」を見ると何とも意外なことが書いてある。147頁17~20行め、
記述はまず自筆の履歴書を中心にした。そのほか,/各種人名録,名鑑,職員録,諸雑誌の追悼・死亡記事/などである。今回は典拠を明記しなかったが,完稿/(後述)では是非実現させたい。【147】
と「完稿」が持ち出される。続く148~149頁23行めには「凡例」10頁2~16行め「1. 収録範囲」選定基準の補足説明*1があって、1行分空けて149頁24行め~150頁5行め、
なお,本書の意図を十分に生かしてくれると思われ/【149】る『日本図書館関係人名辞典』(仮称)は,東洋大学/社会学部図書館学研究室で岩渕泰郎教授を中心に編纂/がすすめられている。ここでは収録範囲も優に1,000/名を越し,業績,活動内容,関係資料,典拠なども詳/しく記載される予定である。
ついでながら、最後(6~9行め)には「日本図書館協会事務局の内池有里さん」への謝辞がある。
それはともかく、これが「完稿」で、だから本書が「未定稿」と云うことにもなっているようだ。しかし、こういう計画が進んでいるのであれば、わざわざ未定稿を刊行する必要はなかったのではないか、と、合理主義者の私としては意外の感に打たれるのである。
奇妙と云えば150頁と見開きになっている右側、奥付の発行日が「初版発行」となっていることである。こういう再版を予定しない配り本の場合、単に「発行」とだけするものだと思うのだが、実は増刷を見込んでいたのだろうか。それとも147頁14~16行め「‥‥,したがって,お気付き/の点,多々あると思うので,是非ご教示いただければ,/と思う。」と見越していたように、図書館史研究会の会員からの指摘が多々舞い込んで、遠からず修正版を出すことになると思っていたのだろうか。
岩渕泰郎(1931~2004)は東洋大学社会学部(応用社会学科図書館学専攻)教授であった。すなわち石井氏の同僚である。しかし石井氏よりも先に死去している。そのためかどうか、結局『日本図書館関係人名辞典』は刊行されなかった*2。
一応、それに当たる事典が先年刊行されているが「編纂がすすめられてい」たはずの『日本図書館関係人名事典』を引き継いだものではないようだ。
・日本図書館文化史研究会 編『図書館人物事典』2017年9月25日第1刷発行・定価12,000円・日外アソシエーツ・(10)+440頁・A5判並製本
本書は,石井敦編著『簡約日本図書館先賢事典:未定稿』(石井敦,/1995,以下『先賢事典』)を参考に,これを大幅に増補改訂して利用の/便をはかるとともに,参考文献を明示し,今後の調査・研究に資するこ/とを目的に作成された。
とあって、自ら『簡約日本図書館先賢事典(未定稿)』の増補改訂版と位置付けている。そうすると『未定稿』と同時期に「編纂がすすめられてい」たはずの「完稿」――『日本図書館関係人名事典』の編纂資料は、引き継いでいないことになりそうである。資料も、関係者も、一体何処に行ってしまったのだろう、どうにも、気になるのである。
・「図書館界」Vol.70 No.1(通巻400号)2018年5月・日本図書館研究会・360頁
331頁《エコー》欄、奥泉和久「『図書館人物事典』の編集を終えて」により大体の編纂経緯は分かる。しかしこれを見ても『日本図書館関係人名事典』については、やはり何ともしていない。
・『図書館人物事典』編集委員会「『図書館人物事典』正誤表/『図書館人物事典』追加」
版元HPにあり。赤堀氏項には関係しないが参考までに。
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以前使っていた都内の区立図書館では『図書館人物事典』を借りられるのだが、都下には貸してくれる図書館がなく、そもそも私の住んでいる市の図書館には所蔵がない。そこで先日、隣の市の図書館に出掛けた際、怱卒の間にメモしたので『図書館人物事典』についてはこれ以上、記載内容について述べる準備が出来ていない。いや「赤堀又次郎」項は筆写してあるが、別に記事にすることとしたい。(以下続稿)