瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

今野圓輔編著『日本怪談集―幽霊篇―』(1)

 現代教養文庫の「●今野圓輔シリーズ」が中公文庫から復刊されているのは悦ばしい限りであるが、『日本怪談集幽霊篇』『日本怪談集妖怪篇』を上下2分冊にしたり、その挿絵をカットしたり差し替えたりしているのが、かなしい。現代教養文庫版の図版は初版の段階で既に新聞掲載写真並の粗さであったのだが、それも含めて雰囲気を出していた訳で、中公文庫版は別のものを見ているような気がしてならない。


 現代教養文庫版の書影であるが、Amazonのページにはあるのだが、ここでは表示出来ないらしい。これは初期のもの。私などに馴染みのあるのは、「カバー・デザイン/平昌司」の、人魂が飛んでいる表紙で、これは『怪談』『現代の迷信』など、今野氏の現代教養文庫から出ていた他の著書にも共通している。本書が青(水色)、『日本怪談集―妖怪篇―』が黄色、『怪談』が赤(桃色)、『現代の迷信』が緑(黄緑色)である。
 私は図書館通いを始めた頃、『日本怪談集―妖怪篇―』をよく借りていた。実話として語られる幽霊よりも昔話として語られる妖怪の方が、当時の私には親しみやすかった。といって、今も別に幽霊に親しんでいる訳ではないのだが、どうも最近の妖怪の取り上げられ方に違和感を覚えているので、……一言でいうと、水木しげる描く妖怪画が苦手なのである。これは昔からで、今でも変わらない。だから、調布や境港には住めない(行ったこともないが)。街角にアレが並んでいるのはちょっと……。恐怖を覚えるのではなくて、もっと違った嫌悪感なのである。別に水木しげるが嫌いな訳ではないが、合わないのだ。
 それで、『日本怪談集―幽霊篇―』である。『妖怪篇』は買って持っているが、『幽霊篇』の方は当時は怖さもあって、買わなかったのだと思う。けれども、いつしか平気になった。今の私はホラー映画とか、怖い話とか、たまに見聞きしても怖いと思わない。ホラー映画はまず見ないのだが、チャンネルを変えているうちにたまたま行き着いて、そのままにしておくことはあるが、あまり面白みを感じない。稲川淳二の怪談のCDも(やはり図書館にあるのを借りて)3枚ほど聞いたが、大して怖いと思わなかった。怖い話は聞いたり読んだりして数は知っていて、人に話して恐がられることもあるが、自分ではちっとも怖いと思っていない。だからといって、見えるという人を近藤雅樹『霊感少女論』のような視点から見ようとも思わない。考え方や感覚が違えば感じ方がズレてくるのは当然で、私の物の見方を人に強制は出来ないのと同じように、他の見え方をしている人がいるということで、別にそれを強制でもされない限り、構わないのである。
 だから、たまに物凄く潔癖な人がいて、こういう話題が出るとすぐに拒否反応を示したりする人がいるが、私は聞くのは好きである。拒絶する人がいけないとも思わないが、興味を示しただけでも「ないないない」と嫌悪感を露わにされるのはちょっと厄介だと思う。いや、たぶんそっちの方が正論なのだから、そんな人を説得しようなどとは思わずに、怪しげな話は怪しげな薄暗い場所で息を潜めて怪しげにやっていればいいのだろう。
 余談だらけになったが、つい数年前、かつてはどこの図書館にもあるものだと思っていた『幽霊篇』が書棚に見当たらなくなってきたように思って、古本屋で200円で出ていた現代教養文庫社会思想社)版を購入した。昭和44年8月30日初版第1刷発行・昭和46年9月30日初版第10刷発行・¥240。
 カバーはAmazonに書影が出ているが、幽霊の絵に「今野圓輔編著/日本怪談集〈幽霊篇〉」左下に横書き白抜きで「現代教養文庫 666」。折返し(ソデ)には紹介文(後述)とともに「カバー写真 伝丸山応挙「幽霊」(全生庵)」とある。背表紙はヤケているが桃色で「日本怪談集〈幽霊篇〉  今野圓輔編著  教養文庫 六六六」最下部に横書きで「\240」。裏表紙も桃色で中央にダビデ像の「社会思想社」のマーク、下部、横書きで左寄りに「¥240」右下隅に「0129-10666-3033」とある。折返しには横書きで「現代教養文庫〔趣味・生活〕」として「タバコ/コーヒー入門/洋酒入門/茶道入門/茶道名言集/囲碁名言集/将棋名言集/宝石の魅力/日本笑話集/日本怪談集」の10種が並び、最下段に「カバー印刷 方 英 社 46. 9」とある。
 本体の表紙は淡い緑色で、緑色で印刷されている。上部、やや横長の方形の子持ち枠の内部に「日本怪談集―幽霊篇―今野圓輔編著666現代教養文庫」、最下部に「社会思想社」と、いずれも横書きで入っている。背表紙は「日本怪談集   今野圓輔編著 666」、裏表紙はほぼ全面に枠があり、その中央にダビデ像のマークがある。
 これが、第40刷(1969年8月30日初版第1刷発行・1984年6月15日初版第40刷発行・定価480円)になると、カバーは表紙から背表紙にかけて下部が水色、上部は黒のグラデーションになっている。鳥山石燕画図百鬼夜行』前篇陽「黒塚」を反転させて使っている。右上に白抜きもしくは灰色で「今野圓輔 編著/日本怪談集/幽霊篇」その左に青い人魂が飛び、左上に小さく「現代教養文庫」と白抜きで入る。背表紙は白抜きもしくは灰色で「今野圓輔 編著/日本怪談集/幽霊篇」黒で「教養文庫 666 D 511 \480」。裏表紙は上部右寄りに「ISBN4−390−10666−X C0139 ¥480E/社会思想社 定価480円」とあって、後は余白である。
 表紙の折返しには次の文がある。

「幽霊は実在するか」という疑問にたいして、現代の*1科学では幽霊の存在を認めてはいない。しかし、平安時代*2から現在まで、数えきれないほどの日本人が*3幽霊を目撃し、その怪音を耳にしている。*4本書は、*5幽霊を見た*6という体験談を中心に、古典文学、民話、随筆*7の中から典型的な話を集め、なぜ日本人がかくも永く幽霊を信じ続けてきたかを解明*8


 別に左下部に「カバー・デザイン/平昌司」と縦書き1行で入る。
 カバー裏表紙の折返しは「●今野圓輔シリーズ」として、「怪談(民俗学の立場から)」と「現代の迷信」が挙がり、それぞれ1行ずつ簡単な説明がある。

*1:旧カバー「自然」

*2:旧カバー「の昔」

*3:旧カバー読点なし

*4:旧カバーはここで段落変わる。

*5:旧カバー「実際に」

*6:原文傍点

*7:旧カバー「、民俗資料」

*8:旧カバー「しようとしたものである」