瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「波の中から」(1)

 画博堂の怪談会*1の写真が掲載されてしばらく後の「讀賣新聞大正3年(1914)7月26日(日曜日)第13379号、(三)面「よみうり婦人附録」に、次の怪談が掲載されている。当時の紙面は9段組であったが、その8〜9段め*2。改行箇所は 』 で示した。

●波の中から
       叔父を慕ひ水死の
       美人姿を現はす
夏の夜の涼み話は蚊やりの煙のなび』く糸の末には大概心中噺か怪談に落』ちて行く、茲にも傳へ聞いた奇怪な』物語を描いて見やう、それは明治三』十六年の事であつた、其頃東京の或』る所に濱次と云ふ女があつた。年は』二十一歳細面の色もくつきりとした』


 ルビを示して置く。

なみ・なか
をぢ・した・すゐし・びじん・すがた・あら
なつ・よ・すゞ・ばなし・か・けぶり』いと・すゑ・たいがいしんぢうばなし・くわいだん・お』ゆ・こ・つた・き・きくわい』ものがたり・ゑが・み・めいぢ』ねん・こと・そのころとうきやう・あ』ところ・はまじ・い・をんな・とし』さいほそおもて・いろ』


 題を「波の中から」として置いたが、副題みたいになっているところも含めて「●波の中から叔父を慕ひ水死の美人姿を現はす」としないと完結しない。この面の他の記事は「●新凉味八景/緑の蔭と水の上」「●海の風山の風/凉しいお里自慢」「□凉を追ふて/貴婦人の避暑」「●マンドリンの音/家庭的な新楽器」「●流行の投扇興/其仕方と點取」「●凉しい女五人/素足―湯上り―夏帶―氷室―薄いレース」そしてこの記事なのだが、他の記事は本文の前に「●見出し/副題」があって、見出しの活字はいずれも大きく(「凉を追ふて」のみ小さい活字。他の記事は「の」や「して」の平仮名が漢字・片仮名より小さいのみで、漢字は同じ大きさ)、副題が本文と同じか一回り大きい活字で組まれている。――要するに見出しには7字くらいしか入らないので、この記事の場合、長過ぎる題の初めの「波の中から」を見出しにして、続きを副題のように処理した、ということのようである。だからやはり「波の中から」だけを題にするのは適当ではないのだが、しかし長過ぎるのでやっぱり活字のポイントが大きくなっている「波の中から」を、ここでも見出しとして置く。(以下続稿)

*1:2月16日付1月12日付

*2:1〜2段めは2段抜きで観光地の写真を掲載。