それでは手始めに、6月16日付(2)に引用した、書籍版181頁9行めから182頁1行めに相当する部分を『大本営参謀の情報戦記』から探して見よう。即ち「Ⅳ 山下方面軍の情報参謀に」の「1 台湾沖航空線の“大戦果”」の2頁め、単行本136〜137頁文庫版160〜161頁がそれと、見当が付く。
航空指揮所が工面してくれたボロ偵察機で、鹿屋の海軍飛行場に着いたのが午後一時過ぎ。飛行場脇の大型ピストの前は十数人の下士官や兵士が慌しく行き来して、大きな【以上文庫版160頁】黒板の前に坐った司令官らしい将官を中心に、数人の幕僚たちに戦果を報告していた。
「○○機、空母アリゾナ型撃沈!」
「よーし、ご苦労だった!」
戦果が直ちに黒板に書かれる。
「○○機、エンタープライズ轟沈!」【以上単行本136頁】
「やった! よし、ご苦労!」
また黒板に書き込まれる。
その間に入電がある。別の将校が紙片を読む。
「やった、やった、戦艦二撃沈、重巡一轟沈」
黒板の戦果が次々と膨らんでいく。
確かにここで良いと思うのだけれども、何だか違うように思えるのである。「加筆」と言えば加筆だし、数字その他が違うのは「訂正」と言えば訂正なのだが、――「加筆訂正」でこれほど変わるものだろうか、という気もしてくるのである。(以下続稿)