瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水村美苗『続明暗』の文庫本(3)

 新潮文庫は頁付のある最後の381頁の次に

この作品は平成二年九月筑摩書房より刊行された。/文庫化にあたり、一部修正を施した。

とあって、その次、奥付の表の頁には「表記について」とあって、箇条書きに「五」項目を挙げ、さらに

 本書で仮名に改めた語は次のようなものです。
  …し度い → …したい    丸で → まるで    此 → この
  其 → その         夫れ → それ     何う → どう
  左う、左右 → そう     …儘 → …まま    流石 → さすが

と実例を示す。ここらは『明暗』の「表記について」と比較してみると面白いだろう。もちろん向いの頁の「一部修正」とはこれら表記の修正ではなくて、376〜381頁「あとがき」の冒頭に記されている、本書の由来に関連するらしい。

『続明暗』一九八八年六月から一九九〇年四月まで『季刊思潮』思潮社に連載され、一/九九〇年九月に筑摩書房から単行本として出版された。単行本は旧仮名づかいと正字とで書/かれている。この度の新潮社の文庫本は、同じく新潮社の文庫本に入っている『明暗』に準/じて旧仮名づかいを新仮名づかいに、旧字を新字体に改め、さらに以前から気になっていた/箇所に少し手を加えたものである。


 ――「筑摩書房」の「筑摩」に「ちくま」の振仮名があるが、ちくま文庫版の「新潮文庫版あとがき」には当然のことながらこの(失礼な)振仮名はない(410頁)。ちくま文庫版は二〇〇九年六月十日第一刷発行・定価840円。(以下続稿)