新潮文庫は頁付のある最後の381頁の次に
この作品は平成二年九月筑摩書房より刊行された。/文庫化にあたり、一部修正を施した。
とあって、その次、奥付の表の頁には「表記について」とあって、箇条書きに「五」項目を挙げ、さらに
本書で仮名に改めた語は次のようなものです。
…し度い → …したい 丸で → まるで 此 → この
其 → その 夫れ → それ 何う → どう
左う、左右 → そう …儘 → …まま 流石 → さすが
と実例を示す。ここらは『明暗』の「表記について」と比較してみると面白いだろう。もちろん向いの頁の「一部修正」とはこれら表記の修正ではなくて、376〜381頁「あとがき」の冒頭に記されている、本書の由来に関連するらしい。
『続明暗』一九八八年六月から一九九〇年四月まで『季刊思潮』(思潮社)に連載され、一/九九〇年九月に筑摩書房から単行本として出版された。単行本は旧仮名づかいと正字とで書/かれている。この度の新潮社の文庫本は、同じく新潮社の文庫本に入っている『明暗』に準/じて旧仮名づかいを新仮名づかいに、旧字を新字体に改め、さらに以前から気になっていた/箇所に少し手を加えたものである。
――「筑摩書房」の「筑摩」に「ちくま」の振仮名があるが、ちくま文庫版の「新潮文庫版あとがき」には当然のことながらこの(失礼な)振仮名はない(410頁)。ちくま文庫版は二〇〇九年六月十日第一刷発行・定価840円。(以下続稿)